勇者の今と深夜の出来事です。
連続投稿7日目!
最終日です!
明日からは通常に戻ります。
僕らはオークションの行われるキーンの町に向かっていた。
僕の大切な仲間であるキャラビーがこの町で売られてしまうのだ。それを僕たちがオークションのルールに従って落札する。それが僕たちの狙いだ。
キャラビーとはじめて会ったのは他の仲間同様に王都で王様から紹介されたときだ。
猫獣人の女の子で、バラーガの奴隷でもあった。しかし、奴隷として扱う気はなかった。だって仲間だし!
オークション当日になるまで僕たちは近くにある迷宮で少しでも金を稼ぐためにモンスターを狩った。『大きな樹海』は既に攻略されている迷宮だ。だから攻略して大金を得るということは難しい。しかも、厳しい罠のあるこのジャングルでは、無闇に階層をあがって行っても稼げるとは限らない。そのため、3日間で銀貨5枚くらいしか稼げなかった。
そしてオークションになり、僕たちはキャラビーの落札に失敗した。
最初からガンガン金額を上げていき、それで相手をひかせるという作戦だった。しかも、僕たちはある程度は金を持っている。しかもその日の奴隷の価格はどれも金貨1桁で済んでいた。これはおそらく大丈夫だろうと思っていた。しかし、実際には貴族と冒険者がそれに競ってきた。しかも二人とも僕たちよりも断然お金の用意があった。
結局、落札したのは冒険者の男だった。というかあのシャドウという男だった。
「お客様、出られるときには札の返却をお願いしいます」
会場を出たシャドウを追うために僕もすぐに会場の外へ出ようとした。しかし、入り口で止められてしまい、後を追うことはかなわなかった。
「くそっ!」
その日の夜、僕は宿の部屋でバラーガと話していた。
「落ち着け古里殿。こうなってしまってはもう仕方ない」
「そうはいっても! キャラビーは今ごろあの男に」
「……貴族のほうが落札してくれていればな……。あの方ならば私は面識があるし、うまく交渉ができたかもしれなかった……。念のために王都から新しい斥候役を送ってほしいという願いを出しておいたが、そいつを使うことになるとは思わなかった」
僕はバラーガを見た。そんな願いをだしているなんて知らなかったからだ。
たしかに斥候役は大事だ。キャラビーも伝えるのが遅かったというだけで罠自体はしっかりと見つけていた。かかった後の対処はしっかりとしていたし、そのおかげで助かったこともあった。3日間探検していたジャングルでは、かなり危ない罠にもいくつか引っかかってしまった。バラーガが経験をもとに罠の解除などをしていたけど、失敗することもあり、力ずくで外すということも何度もあった。僕自身、一度落とし穴の罠で本当に死にかけた。かろうじて端をつかむことのできた右手をバラーガが引いてくれなければ僕は大量の槍に突っ込んでいただろう。それだけに罠を解除できる者が仲間にいることはとてもありがたい。今から新しい人が仲間に入って大丈夫かな……。
僕は新しい仲間への不安と、キャラビーを失ったことに関する後悔を感じながらも、楽しみでもあった。
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『アルファ、位置につきました』
『ベータもつきました』
『ガンマOK』
我々の部隊が上からいただいているイヤリング型の通信機から部下の連絡が聞こえてくる。我が名はデルタ。それ以外の名は捨てた。
我々は上からの指示を受けてそれをただ実行するだけの部隊だ。疑問も、情けも、ためらいも、自分の意志さえもいらない。ただ指令をこなせばよいのだ。
今我々が受けている指令は、国の手を離れた『ファントム』の奪還、もしくは暗殺。ファントムの娘を買ったのが冒険者であったために下った指令だ。あの男もバカなことをしたな。貴族と争ってまで落札したのが、ファントムの娘であったために死ぬことになるのだから。
『では10分後、作戦に移る。各自情報と役割を確認しておけ』
時刻は深夜2時10分前。作戦の決行は2時だ。
すでに冒険者の男と、その仲間の情報も入ってきている。
ランクC+の3人パーティ、パーティ自体の名はまだないらしく、噂にもなっていない。メンバーはメイ、ヒツギ、マナの3人。メイとヒツギはイリアスの町でマナのランクがC+になった時に同時にC+になっている。ガラハム・ジェイクのギルドマスター権限が使われたという記録も残っている。そしてランクが上がってすぐ、あのアントホームを攻略し、ダンジョンコアを持ち帰った。
依頼はあまり受けておらず、実力とランクがあっていないとされる。
だが、我々には関係がなかった。鍛えられたこの技でただ対象を殺せばいい。あの男たちもさすがにAランクとまではいかないだろう。
10分後、行動に移すべく我々は動き出した。
「そこで止まっとけ。手を出すつもりならここで潰す」
次の瞬間、目的の宿の屋根に男が座っていた。その手には何も持っていないが、情報では拳で戦うと聞いている。用心に越したことはないか。
「お前がメイだな。おとなしくファントムの娘を渡す気はあるか?」
「あると思うか?」
「……ないだろうな。お前は私がここで殺しておこう」
「お前じゃ殺せねえよ。ついでに言えば隠れてる3人にもな」
「……なんのことだ?」
「とぼけたところで無駄だよ。もうわかってる」
「……仕方がない。アルファとベータはファントムの娘のところへ。ガンマは俺とこいつを殺すぞ」
『『『了解』』』
イヤリングから返答が聞こえる。と同時に奴の死角からガンマが短剣を投げつけてこちらに走ってきた。少し離れたところで合流しているアルファとベータも見えている。
「ゼルセ、そっちの2人をやれ。コルク、そこの路地だ。ガンマを逃すな」
メイがこちらに向かって走ってきた。短剣はさっきまで奴のいたところを通り過ぎる。
次の瞬間、俺は飛んできたアルファたち3人が激突して、腹にやつの拳をくらっていた。
「がはっ!」
まともにくらってしまったことで口から息が漏れる。
「そっちのはもうやっちゃったからな。だからあんたが伝えといてくれ」
アルファたちを見る。全員が腕や足が変なほうを向いているが、生きてはいるようだ。
「あいつはもう俺のものだ。渡す気はないってな」
私が薄れていく意識の中、最後に見たものは、巨大な剣をつかむ鬼と、金色の毛並を持つゴリラの姿だった。
どうもコクトーです
勇者視点は最初だけになりました。
だって思いつかなかったんだもん……
連続投稿は今日で終わりです。
毎日やってる人とかほんと尊敬します。個人的に読んでるやつだとロッドさんとか馬場翁さんとかなんで1日に何話も連続で投稿できるんだろう……
これからはまた3日おきかな。
ではまた次回