オークション後の夜です
ぎりぎりだけど連続投稿5日目!
俺たちは宿の俺の部屋にはいると、キャラビーをベッドに座らせ、俺自身は椅子に座り、二人はキャラビーの左右を埋めるように座った。
「マナ、結界頼むわ」
「わかった。『マテリアルシールド』、『サイレンス』」
マナが結界を使ってこの部屋全体を防音室に変えた。俺の使う結界とはまた違った結界で、若干壁の色が木の茶色から変わる。それを確認すると、俺はキャラビーを見据えた。
キャラビーはベッドに座って、ただまっすぐにこちらを見ている。
「キャラビー、今からいくつか質問するから、答えたくないことは答えなくてかまわん。ただ、嘘だけはつくな」
「……はい」
キャラビーはコクリとうなずいた。
「じゃあ最初に、二人は初めて見たかもしれんが俺には会ってるよな?」
キャラビーが売られることになった原因とも呼べる存在だからな。まああの場で俺にできることはなかったけど。
「……はい。わかります」
「なら話が早いな。俺たちはお前がもともと天上院のパーティにいたことを知っている」
「……」
変わらないように見えるが、天上院の名前が出たとき一瞬体が反応していた。無意識なんだろうな。
「そこで、だ。お前はあそこに戻りたいか?」
「……わ、私は……」
キャラビーはうつむいてしまった。これはまだ早かったか? だが、これを聞いておかないとこの後どこまで話すか変わってくる。戻るっていうなら俺たちの素性は話さない。正直もうばれてる可能性も十分にあるけど、わざわざ自分からばらしにいく必要はない。しかし、いつまでも変装をし続けるというのもつらい。いずれはばれるしな。
「……私は、……帰りたくありません……」
「……それは本当か?」
「……もうあそこは嫌、です。それに」
「それに?」
「……私の居場所はもうありません」
キャラビーの顔にははっきりと悲しみの感情が浮かんでいた。
「……私は、弱いし、ノロマ、だし、ほんとは、あの貴族に買われて、死ぬ、予定でした」
キャラビーは顔を上げた。その顔には悲しみと困惑が浮かんでいた。
「……なんで、私は、生きているのですか?」
生気を感じられなかった理由がわかったような気がする。おそらくあの貴族と天上院たち、いや、たぶんバラーガがつながっているのだろう。それでそのことを聞かされたのかもしれない。あの貴族がどんな人かは知らないが、もしかしたら奴隷をいたぶるのが趣味で、そういう人物だと知らされたりしたのかもしれない。
俺はそっとキャラビーを抱きしめていた。
「お前は生きていいんだよ。お前を買ったのは天上院でもないし、あの貴族でもない。俺なんだ。勝手に死のうとすることは許さん。これからお前は、いろんなものを食べて、いろんなものを見て、いろんな経験をするんだ。なんで生きているか? そんなもの俺が生きてほしいと思ったからだ」
抱きしめる力が強くなる。
「たしかに、もともとお前を買った理由は個人的なものだった。少なくとも、お前が死にそうだからとかそういうのでも、あいつらのもとでの扱いに同情したわけでもない。でも、少しの時間だけどお前を見て、お前を知って、生きてほしいと思った。それに偽りはない」
そこまで言うと、俺はキャラビーを離し、手をその肩におく。
「キャラビー、キャラビー・ファントム。今から、お前にかけられた2つの呪いを解く」
「「え?」」
「1つはお前の血の呪い。ヒツギからファントムの呪いのことは聞いてる。その呪いを解いてやる。お前にかけられてる呪い、それを全て解くと同時に、お前に新たな呪いをかける。死ぬまで消えない呪いだ。いかなる解呪の魔法だろうと解けない呪いだ。それでもいいか?」
キャラビーは少し間を開けてコクリとうなずいた。
「なら目を閉じて体を楽にしてくれ」
「……お願い、します」
キャラビーが目を閉じた。俺はそっと額と額を合わせる。
「お前はもう大丈夫だからな。呪い吸収」
瞳の『力』を発揮する。キャラビーの体から俺の瞳に向けて『呪い』が流れてくる。
『魔王ジェラウスの呪いを吸収します。特定の存在の高度な呪いになります。複数のスキルが消滅しますがよろしいですか? また、今後対象のスキルの習得は不可能になります』
選択肢があるとか初めてだな。それに高度な呪いか。900年以上にわたってその血に働きかけ続ける呪いなのだから当然と言えるだろう。
俺はすぐさま『Yes』の選択肢を選ぶ。ここで『No』なんて考えは俺にはないよ。
『魔王ジェラウスの呪いを吸収しました。
パラメータ:全上昇(極大)を習得しました。
全減少(大)を習得しました。
スキル:闇親和性LvMAXを習得しました。
闇魔法LvMAXを習得しました。
闇吸収LvMAXを習得しました。
闇強吸収Lv8を習得しました。
暗黒耐性LvMAXを習得しました。
暗黒抵抗LvMAXを習得しました。
暗黒吸収Lv7を習得しました。
闇精霊使役LvMAXを習得しました。
魔眼耐性LvMAXを習得しました。
魔眼無効LvMAXを習得しました。
死滅の魔眼を習得しました。
死滅の魔眼は削除されました。
呪いの魔眼を習得しました。
呪いの魔眼は削除されました。
呪い耐性LvMAXを習得しました。
呪い無効LvMAXを習得しました。
呪い無効は削除されました。
魔剣親和性LvMAXを習得しました。
スキル:ダークランスが闇魔法に吸収されました。
黒槍の雨が闇魔法に吸収されました。
黒雷が闇魔法に吸収されました。
スキル:光耐性が消滅しました。
ライトが消滅しました。
ホーリーストリームが消滅しました。
隠しスキル:光親和性が消滅しました。
隠しスキル:光精霊使役が消滅しました。
スキル:光負荷増大LvMAXを習得しました。
光負荷増大(極大)LvMAXを習得しました。
聖負荷増大LvMAXを習得しました。
聖負荷増大(極大)LvMAXを習得しました。
職業:魔人になりました。
精霊使いになりました』
「――――!!!!」
久しぶりに来るこの感覚だ。いや、これまでで一番ひどい。頭が割れそうになる。再生が効いている気配がない。
『スキル:再生Lv4を習得しました。
再生Lv5を習得しました。
再生Lv6を習得しました。
再生Lv7を習得しました。
自動回復Lv2を習得しました。
自動回復Lv3を習得しました。
自動回復Lv4を習得しました。
自動回復Lv5を習得しました。
自動回復Lv6を習得しました。
自動回復Lv7を習得しました。
自動回復Lv8を習得しました。
自動回復Lv9を習得しました。
自動回復LvMAXを習得しました』
回復系統のスキルのレベルががんがん上がっていく。でも痛みはまったくひかない。
しかし、ここで倒れたり声を上げるわけにはいかない。まだ俺にはやることが残ってるだろうが!
「……キャラビー、目を開けていい。もう、1つの呪いを、解くぞ」
「……」
キャラビーは不安そうな顔で俺のほうを見る。そんな泣きそうな顔をするな。
俺は痛みをこらえながらも必死に笑顔をつくってキャラビーを見つめる。うまくつくれてるかわからんけど。
「お前のもう1つの呪い、天上院たちとのしがらみはこれでなくなった。お前はもうあいつらに束縛されることはない。お前はあいつらから、腐ってる王都のやつから解放されたんだ。お前は自由だ」
そこまで言って、今度はキャラビーを胸に抱きかかえる。
「そして今、新たな呪いをお前にかけた。俺からお前に贈る『呪い』だ。お前を誰にも渡したりはしない。お前は、俺のものだ」
力なくされるがままだったキャラビーが腕を俺の体にまわしてきた。そしてだんだん力が強くなる。
「……ヒック……ヒック」
小刻みに震えながら、嗚咽が聞こえてくる。大丈夫だ。泣いてもいいんだ。
俺は抱いていた右手をキャラビーの頭に添える。
「お前は今から、俺のキャラビー・ファントムだ。胸を張って生きろ」
その日、キャラビーははじめて泣いた。苦しみからじゃなく、痛みからじゃなく、悲しみからじゃなく、心からの嬉しさから。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
冒険者 Lv69/99
武闘家 Lv47/60
薬剤師 Lv35/60
鬼人 Lv18/20
聖???の勇者Lv10/??
狙撃主 Lv32/70
獣人 Lv8/20
狂人 Lv1/50
魔術師 Lv1/60
ローグ Lv1/70
重戦士 Lv1/70
剣闘士 Lv1/60
神官 Lv1/50
魔人 Lv1/20
精霊使いLv1/40 』
キャラビーのお話でした
スキル関連がたくさんありすぎて見にくいかもしれません
予定では残り2日で、キャラビー視点と天上院視点をお送りします。
ではまた次回