一般の部 決勝です8
『ダブル』を使った天上院が地面を蹴ってこちらに向かってきた。先ほどよりも圧倒的に速い……が
「まだまだ見える」
天上院のすぐ横にワープして両手の棍棒をフルスイングして殴りつけた。殴られる瞬間に気づいたらしく横をむこうとしていた天上院だが、その前に棍棒が直撃した。俺の手に骨が折れた感触がしっかりと伝わってくる。天上院は吹き飛んで少し離れた地面に倒れこんだ。右腕が変なほうを向いているから折れたのは右腕なのだろう。しかし、折れても剣を離さなかったのはいいことだと思う。本来なら手放してたら奪われる恐れがあるからな。
『ヒール』は、傷や打ち身などを治療するのにはいいが、骨折や切断などにはかなり時間がかかる。さらに、天上院が使える回復魔法はおそらくさきほども使っていた『ヒール2』が限界。それではたとえ指先の骨折でも、治すのには1分は余裕でかかる。
おそらくだが、このまま回復せずに反対の腕を使って戦うか、遠距離から魔法で牽制して時間を稼ぎながら回復するかのどちらかだろう。防御も何もせずに回復してる敵なんか的でしかない。まさかあの状態でなにもしないまま回復するわけがない…………と思っていたら天上院は回復魔法をつかい始めた。さすがに倒れたままではなく膝をついてしゃがんだ状態で、だが。
「ばかなのか? それとも死にたいのか?」
つい呟いてしまったがしょうがないだろう。だって普通なら格好の的だし、回復してるのを俺がただ見てるわけがないのに。
「アイスロック、ファイア、エアロ、アースボール」
もしかしたら、あれは罠でベルセルまではいかなくとも、カウンターを使ってくるかもしれないと考え、そんなに威力の高くない魔法で攻撃する。ただ足元をアイスロックで固めてからだが。
天上院は慌てて左手に剣を持ち直し、それを盾にして攻撃を防ごうとしていた。しかし、同時に来る3つの魔法に対処できずにエアロにはじかれた。カウンターはなさそうだ。
「『炎の弾丸よ、我が敵を撃ち落とせ』ファイアバレット!」
先ほどとは比べ物にならない量の弾幕でファイアバレットを連射した。もはや砲弾が連続で飛んでるみたいになっている。
天上院は立ち上がってそれをかわそうと走り出した。右腕はまだ治っていなかったが魔法は止まっている。あれ素でやってたのか。どんだけこれまでの敵が甘かったんだよ。それとも俺の考え方がおかしいのか? いやそんなことはない……はずだ。
必死に走る天上院を追うようにファイアバレットの向きを変える。天上院が円を描くようにして走っていたため、すぐにファイアバレットが天上院にあたった。ちょっと先を狙って撃ったらいいだけの話だ。
「くそ、なんで攻撃が!? 今の僕は普段の倍の速度が出せるのに!」
必死にファイアバレットの弾幕を剣を盾にして耐える天上院が叫ぶ。
やはり『ダブル』という魔法は俺の考えた通りの魔法だったようだ。
すべてを2倍にする魔法。
それが『ダブル』だろう。使用者のパワー、スピード、防御、魔力、あとたぶん体力も倍にする。さらに言えば、それは本人の装備している武器にも適用される。あの聖剣の影響っていうのも否定しきれないけど、剣にも効果があるというのは、フェイグラードが剣を弾くのに使っていた籠手が示していた。ダブルを使ってすぐに切り裂かれたのだから間違いない。
そしてもう一つわかったのは、あの分身に実体はないということだ。最初に見た時は結構距離があったからわからなかったが、近くでよくみたらところどころ体の部位がなかったのだ。魔力の量の問題なのか、あの魔法の効果の問題なのかは天上院しかわからないけど。
そんなことを考えていると、聖剣が強く光って『ホーリーストーム』が放たれた。それは、あっさりとファイアバレットを打ち消していく。かなりの数のファイアバレットだったから、それを消すために相当な量の魔力をつぎ込んだらしく、天上院は肩で息をしていた。そろそろ決めるか。
俺は魔力を手に持つ棍棒に集める。剣つかわなかったな……。ただの邪魔になってしまった。
「そろそろおわらせるぞ」
そう宣言して天上院に向けて走り出す。ワープは……使わなくていいかな。
「勝つのは僕だ! 聖剣ハルよ! 僕に力を!」
天上院の声にこたえるように聖剣が光り、再び分身が現れると同時に消えた。『ダブル』の二重か。
「うぉおおおおお!!!」
天上院もこちらに向けて走り出した。先ほどより相当速くなった。それでも全速力のベルセルよりちょっと速いくらいだ。
「『千切り宝刀』!!」
「『一閃』」
俺が横に薙いだ棍棒と天上院の上段から振り下ろされる剣がぶつかり合った。
パキィン
天上院の剣が折れた。
そして棍棒は吸い込まれるように天上院の体にクリーンヒットした。
直撃した衝撃で棍棒は砕けてしまったが、まあいい。
天上院は気絶したようで光の粒子となってリタイアした。
『決まったぁぁぁぁあああああああ!!! 今大会の優勝者は……シャドウ選手だぁああああ!!』
「「「「「「「「うぉおおおおおお!!!」」」」」」」」
コロシアム中が歓声に包まれる。これまで以上の盛り上がりだ。俺は武器をアイテムボックスにしまうと、手を上げて観客席を見渡す。
こうして改めて見てみると、一般の客と貴族っぽい客が混在しているのがわかる。その両者が一緒になって盛り上がっている光景はなんか不思議だ。
マナとヒツギの姿も確認できた。こっちに手を振っている。俺も振りかえした。そのすぐ近くではノノさんとネネさんの姿も見える。俺が広場に出た後で合流したのかな?
しばらく観客席に向けて手を振っていると、係員が走ってきた。
「シャドウ選手、優勝おめでとうございます」
「ありがとう」
「つきましては、天上院古里選手が意識を取り戻し次第一般の部、ならびに従魔の部の表彰式、そして今大会の閉会式を行います。係の者が呼びに行くまでどうぞ別室にてお待ちください。その際に、必要なものがありましたら遠慮なくおっしゃってください。物によっては用意させていただきます」
物によってはってことは用意できるもののほうが少ないのかな?
「外の屋台の串肉10本って言ったら用意してもらえるか?」
「それくらいなら構いませんよ。少しお待ちください」
串肉はよかったらしい。いやーアイテムボックスの中にまだまだあるけどもらえるならもらっておこう。
俺は係員に促されて別室に移動した。
それから、20分くらい串を食べたりヒメをもふったりしていると、係員がやってきた。どうやら天上院が目を覚ましたらしい。特に異常はなかったそうなので早速表彰式に移るそうだ。準備はこの時間にすでに終わらせてあるらしく、後は選手を待つだけと言っていた。格好はこのままでいいそうなのでこのままいくことにした。まあ貴族が着るようなスーツとかでこいとか言われても困ったけどね。そんなもの普通持ってるわけないもの。
俺は広場に戻っていった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
冒険者 Lv69/99
武闘家 Lv47/60
薬剤師 Lv35/60
鬼人 Lv18/20
聖???の勇者Lv10/??
狙撃主 Lv32/70
獣人 Lv8/20
狂人 Lv1/50
魔術師 Lv1/60
ローグ Lv1/70
重戦士 Lv1/70
剣闘士 Lv1/60
神官 Lv1/50 』
いつもより少し早目の更新!!
長かった武闘大会もいよいよ次回で閉会です!
予定ですが!!
予定は未定、あくまで予定
ですので!
ではまた次回