一般の部 決勝です5
雰囲気の変わったベルセルに対して、俺は特に動こうとはしていなかった。
さっそく、切れ目の入っていたフードが噛み切られた。今のは牽制ということだろうか。それによって俺のゴーグル姿が露になったがまだゴーグルがあるから問題ないといえば問題ない。
「そこまでして素顔を隠したいか……」
ベルセルが俺の後方からあきれたように言うがこれに関してはバラーガと天上院がいるのだから仕方ないだろう。俺が悪いわけじゃない。
「『不動明王』『ガードエンチャント』『鬼化』」
俺は腕をクロスさせて防御の姿勢をとる。それに合わせるようにして俺の体が一瞬淡く光って防御力が上昇する。さらに、体が多少大きくなり、側頭部に角が生えてきた。
「お前さん鬼人族だったのか!? ならあの攻撃力も納得できるか」
俺の角を見て前方に移動していたベルセルが驚きの声を上げる。さっきからちょくちょく移動しているのは速さを誇示するためなんだろうな……。というか鬼人族という種族がいるらしいということが分かった。たしかに職業に鬼人というのはあるがその名前の種族がいるとは少し驚いた。いや、獣人がいるのだから鬼人もいるよな普通。
「だが、筋力が上がっただけじゃ俺のスピードにはついてこれないだろう!」
ベルセルが4足で勢いよく駆け出す。そして、ザッザッという音が聞こえるたびに俺の体に牙や爪が当たる感触があり、ローブが切り裂かれていく。1枚は予備があるからいいけどまた新しい予備を買いなおさないといけないな……。
何度も何度も攻撃を受けるが、俺は動こうとしなかった。
「どうした? さっきまであれだけ攻撃してきてたのにいきなりだんまりか? ならとっておきでさっさととどめをさしてやるよ!」
ベルセルが己の体から魔力を放出させた。そして先ほどまでとは比べ物にならない速度でシャドウの首筋に噛みつこうとその口を大きく開い
「ぬるい」
ドォオオオオン
たがその口を閉じることはできなかった。その牙は届くことなくシャドウによって地面にたたきつけられ、その体は光の粒子へと変わった。
『え? き、決まったぁあああああああああ!!! 勝者はシャドウ選手だぁあ! 最後はなんと、奥の手である特攻体勢をとったベルセル選手を真っ向から叩き潰しました!』
「「「「「わぁああああ!!」」」」」
『いったい、いったい誰が予想できたでしょうか!? 前回大会優勝者であり、領主様の推薦者であり、今大会優勝候補筆頭、ベルセル・ファング選手がまさかの2回戦敗退です!』
今の戦い、最後でベルセルは選択を誤った。シャドウ、いや、メイが相手でさえなければその選択は正しかっただろう。
己の決めたルールを破って、スキルによる『カウンター』を使って、それで倒しきれない相手に本来の自分のスタイルである攻撃型に戻すというのは間違った選択ではない。ただ、相手がメイであることと、その攻撃体勢が4足の獣の体勢だということがだめだったのだ。
カウンター狙いの防御特化型の敵はメイは戦ったことがなかった。だからこそいろいろと実験しながら戦い、ダメージを受けていた。
しかし、4足の獣というと、メイはベルセルをはるかに上回る実力の者との戦闘経験があった。スピードも、パワーもベルセルよりも上。しかも、今のメイではなく、もっと弱い時にだ。それだけではなくメイは昨晩、従魔たちとの訓練をしていた。その中には当然4足の獣である、白虎とプラチナタイガーも含まれていた。その2体と比べたらベルセルのほうが力は上だが、それでもまだ戦いやすくはなっていた。
さらに言うならば、ベルセルの攻撃力にも隙があった。従魔たち6体の同時攻撃をさばいていたメイからしたらベルセルの攻撃はなんともなかった。カウンターでの攻撃はメイの攻撃の威力が高いからこそ大ダメージになりえたが、もとのベルセルの攻撃力ではエンチャントと『不動明王』の重ね掛けを超えることはできなかった。
俺は広場から出てもともと来た通路に向かった。観客の盛り上がりとアナウンスの人の煽りがすごくて耳が痛くなってきたのだ。そりゃあ優勝候補筆頭を倒したらこうなるだろうってのは予想は少しはしてたけどそれを普通に上回っていた。音響兵器かと思ったもの。
通路に入ったら、アイテムボックスから新しいローブを取り出した。今着てるのはもはやぼろ布と呼んだ方がいいかな?
「シャドウ選手、2回戦突破おめでとうございます」
通路に1回戦の時も来た係員がやってきた。また次の試合の時間の確認かな?
「試合時間が多少ずれておりまして、1時30分より次に行いますアイ選手とルー選手の試合の勝者との試合となります。お間違えの無いようにお願いします」
「わかりました」
「では失礼します」
係員は小走りで通路を駆けていった。
すると、今度はベルセルが通路の奥から歩いてきた。
「よう。いやーまいったぜ。攻撃仕掛けたはずなのに気づいたら別室にいるんだもんな」
「そうか」
「お前さんが最後あのスピードについてこれるとは驚いた」
「もっと速いやつと戦ったことがあるからな」
「それならついてこれるか。あーあ、これでまた推薦取り直しになっちまったな……」
「あんたならできるだろ。またがんばれ」
「お前さんが出る限りは無理そうだがな。お前さんカウンターも見切ってたろ?」
ベルセルの口から出た言葉で俺はつい反応してしまった。ばれてたか……。
「まあな。魔法と物理攻撃を同時にはカウンターで返せないんだろ?」
「ニシシ。1試合で気づかれたのははじめてだ。正確には物理カウンターと魔力カウンターを使い分けてんだよ」
「それ言っちゃっていいのか?」
「もうばれてんだから問題ない。他の奴には言わないでくれよ」
「言わねえよ。他に気づいたこともな。そういえばあんたに一つ聞きたいことがあったんだ」
「ん? 答えられることなら答えてやるぞ」
「あんたの言う『上』ってなんなんだ?」
「『上』か? 簡単だよ。ギルドの上位ランクのやつらもそうだし、高ランクの魔物だってそうだ。他にも高難易度のダンジョンもだし、魔族や魔王、勇者だって今の俺じゃかないそうもない」
いや今の勇者なら余裕で勝てると思うんだがな。だってあれだぞ?
「俺からもいいか?」
「なんだ?」
「なぜそこまでして素顔を隠そうとするんだ?」
「……」
「別に貴族連中とのトラブルを避けたいだけなら名前を変えて、あとはクライン様に頼んどけばいいだけだ。それなのに試合中だろうとフードをとらず、さらにその下に顔を隠すようなゴーグルときた。何か理由があるようにしか思えねえ。誰にも言いふらす気はない。教えてくれないか?」
「……別に……ただここにいるやつの中に以前殺されかけたやつがいるってだけだよ」
「は?」
「そいつにばれたくないから顔を隠してるだけだ。これでいいか?」
「……お、おぅ。なんかすまんかったな」
「言わないでくれよ?」
「言えるわけねえよ!! ……次の試合頑張れよ。応援してるからな」
「ありがとう」
「じゃ、がんばれよー」
ベルセルはそう言って背を向けて手を振りながら去っていった。
二回戦第4試合はルーVSアイ。試合はまたしてもあっという間に終わった。アイがルーを氷漬けにして終わりだ。アイとの試合魔法のみで戦おうかな……。
そして戦いは準決勝へと進んだ。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
冒険者 Lv69/99
武闘家 Lv47/60
薬剤師 Lv35/60
鬼人 Lv18/20
聖???の勇者Lv10/??
狙撃主 Lv32/70
獣人 Lv8/20
狂人 Lv1/50
魔術師 Lv1/60
ローグ Lv1/70
重戦士 Lv1/70
剣闘士 Lv1/60
神官 Lv1/50 』
ぎりぎりになりました
これまでの話のスキルをまとめるのに思いのほか時間がかかってます……
けっこうレベルがかぶってたりもしてるんですよね……
まとめてみるとスキルがかなり多いと感じます
これからも増えますよ!
ではまた次回