従魔の部 決勝後です3
「クライン殿、まずはこの度の非礼をお許し願いたい」
バラーガが頭を下げて願い出た。
「無理だな。現行犯で、さらに俺の目の前で行われたんだぞ? しかも一般人に被害まででてる。それに、こいつはただの一般人じゃない。獣魔の部優勝者であり、一般の部の決勝進出者だ。もし明日の大会に出られないなんてことになっていたらお前らここを利用する貴族すべてから干されるぞ? 最低でも全員強制奴隷化でバラバラに強制労働だな」
「彼は無事です」
「それは結果論だし、無事ってわけでもない。たまたま自動回復のスキルもちだったから大事にならずにすんだだけだ。それにたとえこいつが許したとして他のものはこいつは関係ない。領主の館で暴れるってことの意味くらいお前ならわかってるだろ? 許すことはできん」
「………『王命』の行使を申請します」
「王命…だと?」
「はい。王より我々はその使用権を頂いております。その『王命』で、ここの部屋に我々が来てから今に至るまでの犯罪を取り消していただきたい。もちろんそこの男には賠償を払います」
「お前、『王命』のことを理解していってるんだよな? 行使は三回までと知っていて言ってるよな? もちろん契約魔法で縛っていることも」
「もちろんです。我々は王より直々に聞かされましたから。その重要性は全員理解しているはず。王からも、なにか問題が起きて、領主の力を借りなければならないときに使えと言われています。回数はたしか元Sランクのあなたを国に属させることへの見返りだったかと」
今なにかすごいこと言ってた気がする。
「その通りだ。これまで一度も使われたことのないものだ。お前でもその契約が発動するという根拠は?」
「契約が発動するかどうかはあなたならわかるのでは?」
「まあな。しかし、そもそもお前がこいつをしっかりと止めてればこんなことにならなかったんだからな」
「そのことは私に非があります。しかし、ヴァルミネがいきなり転移したとサラが感知して、我々も戸惑っていました。古里殿は仲間を思う気持ちが人一倍強い。止めたとしても止まらなかったでしょう」
「言い訳にしか聞こえねえよ。………王命は『天上院古里がここに転移してきてから今に至るまでの犯罪を取り消す』ってことでいいな? ただシャドウには必ず賠償を払え。いまここでだ」
「はい」
「そうだな……金貨15枚と…シャドウなにか入り用のものは?」
金と物で解決ってのはあんまり好ましくないが、クラインさんに恥をかかせるわけにもいかないだろう。
「切られてしまったローブの代わりがあれば…」
「そうだな。バラーガ、一枚くらいはあるだろ?」
「はい。迷宮で手に入れたローブタイプの魔道具があるはず…古里殿、あれを」
「なんでそいつに僕たちが苦労して見つけ出した魔道具を」
「古里殿!!」
「…わかったよ。これだよね?」
天上院が渋々といった感じに腰につけた袋からローブを取り出す。魔道具のようだ。
「これはつけていると魔力の自然回復を多少ではあるが早めてくれるものだ」
バラーガがローブと金貨を机の上においた。つか金貨多いな。15枚もあればあの串がいくつ買えることか…。
「言っとくが金貨15枚ってのは迷惑料と口止め料も含まれてる。そのことは頭に入れといてくれ」
「わかってます」
腕を多少切られただけで15枚ももらえるわけがない。こいつらが有名で、この状況がかなりやばい状況にあることがこの金額にしたのだ。
「契約成立だ。『我、デルフィナ所属、アライエ領主、クライン・アライエの名において王命を受け入れる。』……………たしかに契約が発動してるな。これで終了だ。まだこっちの用は済んでないんだ。お前らさっさと帰れ」
クラインさんが『王命』を受諾したことを告げると、クラインさんの体が軽く光り、すぐに収縮した。
「…ヴァルミネをそこの牢から出してもらえないだろうか? そうしてもらわなければ帰るに帰れないのだが」
「だめだ。彼女は奴隷として今度のオークションに出されることが決まっている。だから出すわけにはいかねえよ」
「何を言ってるんだよ領主様!? 彼女はそこの男にさらわれて」
「そもそもそれが間違いだってことだ。シャドウは被害者だ。ヴァルミネがシャドウの従魔に屈した自身の獣魔を魔法をつかって奪おうとして契約魔法が発動した。その時の状況も確認したし、契約魔法の発動に違法性はないと確認が取れた。すでに決定していることだ」
「さっきの『王命』で取り消されて」
「まずその口の利き方に気を付けろ。おいバラーガ、次回までにこいつをしつけとけ。『王命』によって取り消したのはお前らがここに来てからさっきまでの犯罪だ。そいつが罪を犯したのはお前らがここに来る前だ。確認をしたのもお前らが来る前。『王命』にそいつは関係ない」
「話が違う!」
「何も違わねえよ。俺はお前に確認したはずだぞ? 『天上院古里がここに転移してきてから今に至るまでの犯罪を取り消す』ってことでいいのか、と。それに対してお前もそれを肯定したんだ。『王命』は取り消しも変更も効かない。お前らにはどうしようもねえよ」
「ならば」
「『もう1度王命をつかえば』って言う気か天上院古里。そいつは認めない。そいつはここのルールで裁く。この件にはそこのシャドウも関わっている。さっきのもそうだが、さっきのとこれとでは意味が違う。今ヴァルミネの売買で金を受けとる権利はこいつがもってるんだ。関わるって言うよりこいつが中心だ。お前ら普通の冒険者でしかないシャドウに『王命』が効くと思ってるのか?」
『王命』とは、このデルフィナという国の貴族や領主などに対して王が発動できる命令だ。それを使うにも当然条件はあるし、そうやすやすと使えるものではない。ここの領主のように回数を限定していることもあれば、町のルールを著しく破る『王命』は受け入れないとしていることもある。
『王命』はあくまでも貴族、領主、兵士などの国に仕える立場の者にのみ発動することができる。どこかの町の専属冒険者だったり、貴族のお抱え冒険者ならばまだしも、ただの冒険者には意味をなさないのだ。
「そこの男が認めれば」
「認めると思うか? ついさっきの『王命』に関するものはさっきの賠償で認めてもらった。だが、ヴァルミネには魔法で攻撃されそうになって、さらにお前には腕を斬られたうえに魔法をぶつけられてるんだ。それなのに、お前らの言うことを素直に聞くと思ってんのか?」
「ここで認めておけば彼に私の所属する教会や、皆さまの実家から支援を約束できるかもしれません。それは彼にとってヴァルミネさんを売る以上の利益になるのでは?」
「お前の立場がどれくらいかは知らんが教会がお前のためにそんなことをすると思うか? それに他のやつらの実家なんかその話をすれば支援どころか口封じに動くに決まってんだろうが」
「……」
「言い返せないか? ならさっさと出てけ。そこにいられると邪魔だ」
クラインさんはバラーガたちに背を向けて、倒れた椅子や机を直し始める。一部完全に壊れてしまって使えそうにないものもあるが、そういうものははしに寄せている。あとで処分するのだろう。
「シャドウ、僕と勝負しろ!」
突如として黙っていた天上院が大きな声で言ってきた。
「勝負だと?」
「お前も決勝に進んでいるんだ。トーナメントで僕とお前が戦って僕が勝ったらヴァルミネを解放してもらう!」
天上院は俺を指差してそう宣言した。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
冒険者 Lv69/99
武闘家 Lv47/60
薬剤師 Lv35/60
鬼人 Lv18/20
聖???の勇者Lv10/??
狙撃主 Lv32/70
獣人 Lv8/20
狂人 Lv1/50
魔術師 Lv1/60
ローグ Lv1/70
重戦士 Lv1/70
剣闘士 Lv1/60
神官 Lv1/50 』
貴族を書こうと思うとなぜかワンパターンになる…
ガンバラねーば
次回は古里君の視点からお送りします
ではまた次回