従魔の部 決勝後です2
「あなた! いったいなにをしましたの!? 私にこんなことをして許されると思っていますの!? はやくここから出しなさい!」
「うるせーよ。お前さんは黙ってな。『サイレンス』」
クラインさんが一言唱えると、ヴァルミネが口は動いているものの、声は聞こえなくなっていた。呪文の詠唱してなかったよな今。
クラインさんは、近くにあった椅子にどっしりと座ると、俺の方を向いていった。
「じゃあ確認に入るぞ。まず、何があったのかシャドウ、お前から頼む」
「わかりました」
俺はヴァルミネとのやり取りを話し始めた。
「ふむなるほどな。で、ヴァルミネ・カクよ、今のやり取りの中に過ちはないな?」
「私は全く悪くありませんわ! そこの男が卑怯なことをするから」
「いや、なにもしてねえよ。なんでそうなるんだよ」
「お黙りなさい! あなたが卑怯な真似をしてないというなら、私のみぃちゃんが敗北した理由がありませんわ!」
「純粋に力が及んでなかっただけだろ?」
「だから黙りなさいと言っているでしょう!?」
「黙るのはお前さんのほうだ。今のやり取りと話を聞いてる限り、お前さんに情状酌量の余地はねえ。すぐに次のオークションに出す手続きをする」
「カク家を敵に回すことになるんですのよ!?」
「一貴族にびくびくしててここの領主が務まるかよ。こっちはあいにく国王にも条件つけてんだ。お前の実家がどれだけごねようと、ここのルールには従ってもらう」
クラインさんが、椅子から立ち上がろうとしたとき、急に雰囲気が変わった。何もない方向をギラリとにらんでいる。俺も俺で何となくだが、嫌な予感がしていた。
「ヴァルミネさん、大丈夫ですか?」
「ヴァルミネ、無事か!?」
「古里様!?」
いきなり魔法陣が現れ、そこから天上院古里と修道服のシスターが現れた。その後に続くようにバラーガと、エルフと、それから他の4人に比べて少しぼろい感じの猫獣人の女の子がやってきた。
「こんなところに閉じ込められているなんて、今すぐそこから出してあげるから」
「おい待て貴様ら。どうやってここを特定した?」
「ヴァルミネレベルの魔法使いを閉じ込めておける牢屋だ。きっと魔法は通用しないはず…。なら、僕の剣で」
「話を聞け!」
「うぉおお!」
クラインさんが怒鳴るが、まったく話を聞かない天上院は、腰にさしていた剣で牢屋の鉄格子に切りかかった。
ガギィイイン
剣は鉄格子にはじかれ、傷一つつかなかった。物理耐性のおかげだろうか。まさか弾かれるとは思っていなかったのか驚いたような顔をしている。
「お前ら、ここがどこだかわかっているのか?」
「あなたは領主様!? そうか、わかったぞ! そこの男がヴァルミネをこんなところに閉じ込めてそれを知った領主様がヴァルミネを助けに」
「違う」
「よくもヴァルミネを!」
「なんで俺になるんだよ…」
「剣を収めろ!」
なんでこうも話を聞こうとしないんだか。天上院が剣を振りかぶって切りかかってくる。クラインさんがやめろと怒鳴るのも完全に聞こえてないみたいだ。
下手に反撃するわけにもいかないため、腕でガードする。もちろんスキルを使って防御力を上げてはいるが。
剣はローブを一部と腕の表面を斬った。血が少し出るがこれで正当防衛だよな? 一応こいつの立場はあれだから何かむちゃくちゃな言い分を言われてこちらだけが悪いみたいなことになりかねない。だが、攻撃を受けて、血まで流している状態だ。これで反撃しても問題はない…はずだ。
天上院が今度は胴を薙ぎにくる。それを『鬼の一撃』で剣を折って防いだ。そのままやつの顔面を殴り飛ばす。やつはまともにそれを受けて鉄格子に直撃した。
「古里殿!」
「古里!」
「古里様になにをするのですか?」
残りのメンバーが一斉に俺に武器を向けてきた。そもそもここで武器の使用は禁じられてるんだがな。こいつらは知らないだろうが。
俺はそっとクラインさんのほうに顔を向ける。クラインさんは、こめかみに青筋を浮かべたまま、俺の視線に気づいてそっと頭を下げた。
「く、『光の奔流よ、我が敵を討つため荒れ狂え』ホーリーストリーム!!」
天上院がいきなり魔法を放つ。この威力はやばくねえか!?
俺はクラインさんのほうに影響がでないように前に出てそれを喰らった。
『スキル:ホーリーストリームLv1を習得しました。
光耐性Lv5を習得しました』
『対象:異世界人
個人名:天上院古里
属性:聖
以上全ての条件を達成しました。
職業:????の勇者の能力を一部解放します。
一文字目の封印を解放します。
職業:『????の勇者』が『聖???の勇者』に変更しました。
スキル:『聖獣強化(1)』を習得しました。
スキル:『鑑定』が『上位鑑定』に変更しました。
隠しスキル:『アイテムボックス拡張(最大)』 『全属性適性』 『星獣使役』 『パラメータ上昇強化』が閲覧可能になりました』
なんかいろいろと起こった。とりあえず把握するのはまたあとにしておこう。今はこっちが優先だ。
魔法を完全に喰らうと、天上院がこちらを悔しそうな顔で見ていた。
「そんな、いくら手加減していたといっても十分強力な魔法だったのに…。これ以上の威力となると周りへの被害が…」
天上院がちらっとバラーガたちのほうを見た。
「サラ、領主様とみんなを連れてここから離れてくれ! 一発大きいのを撃つ!」
天上院が折れた剣を投げ捨て、両手に魔力を込めはじめる。バラーガたちはサラと呼ばれたシスターのもとへと集まる。ヴァルミネは、牢屋の隅に移動してそこにあった机に身を隠している。あんなもの盾になるのかわからないが、魔法は牢屋の鉄格子に防がれるから大丈夫じゃないかな?
「領主様も早く!」
「…………」
「そこにいたら巻き込まれてしまいます!こちらに避難を!」
「…………」
「なにをしてるんですか領主様!」
クラインさんはまったく動こうとしない。いや、あれは…
「あんまり調子に乗ってるんじゃねえぞこのガキが」
次の瞬間、天上院は首を掴まれて宙に浮いていた。
「ガ、ハッ」
それを見たバラーガが剣に手をかけてクラインさんを睨んだ。
「クライン・アライエ殿、どういうおつもりで?」
「あぁ?」
「あなたは犯罪者の味方をなさるのですか? それは国への反逆だ」
「黙れこの犯罪者どもが!!」
バラーガの一言により一層怒気を強めたクラインさんが怒鳴り付ける。
「…我々が犯罪者だと?」
「領主の館への不正侵入、及び館内での武器の使用、並びに魔法の使用、館内の物資の破壊、一般人への暴行、犯罪者の逃亡の計画どれもこれも立派な犯罪だろうが!」
クラインさんの怒声にたじろぐバラーガたち。向こうからしたら一般人への暴行と犯罪者の逃亡の計画以外は完全に合致しているから困っているのだろう。
クラインさんは天上院をバラーガに投げつけると俺の方を向いた。
「大丈夫か? すまんな、ほんとなら剣を使う前に止めるべきだった。治療のできるやつを呼ぶから少し座っていてくれ」
その声はまるで別人のように穏やかで、さっきまでの怒声が嘘のようだ。
「大丈夫です。自動回復もありますし、包帯も持ってますので」
俺はアイテムボックスから包帯を出して切られた場所に巻く。まぁすでに再生で傷跡は残っていないけどね。
『職業:神官になりました』
自分で手当てすることが条件だったのかな…?
「そうか。あとで痛みが残ってたり、動かしにくいとかそういうのがあれば言えよ」
「そのときはお願いします」
「領主様! その男は「バラーガ! そいつにもうしゃべらすな」ヴァルミネを」
「古里殿、ここはどうか静かに」
「でも!」
「古里殿!」
「…わかった」
「クライン殿、まずはこの度の非礼をお許し願いたい」
バラーガがクラインさんに頭を下げて願い出た。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
冒険者 Lv69/99
武闘家 Lv47/60
薬剤師 Lv35/60
鬼人 Lv18/20
聖???の勇者Lv10/??
狙撃主 Lv32/70
獣人 Lv8/20
狂人 Lv1/50
魔術師 Lv1/60
ローグ Lv1/70
重戦士 Lv1/70
剣闘士 Lv1/60
神官 Lv1/50 』
まだまだ続く決勝後のお話
たぶんあと1話か2話かな?
ではまた次回