従魔の部 決勝後です1
従魔の部の決勝トーナメント準決勝終了後、ヴァルミネ・カクは放心状態にあった。
その原因は2つ。
1つは彼女自身が準決勝で敗退してしまったということ。こんなところで自分が負けるはずがないと、油断していたのは否定しないが、実際に負けるとなると話は別だ。通路に下がってすでに10分以上経っているが、まるで現状を理解したくはなかった。
しかし、それ以上に彼女を放心状態にしている最大の原因は、彼女の従魔である、プラチナタイガーのみぃちゃんが相手の、ホワイトタイガーの変異種の子供らしいモンスターに屈して、彼女の下を去ってしまったことだった。
隷属の首輪という非常に高価なアイテムを家の伝手を使って手に入れ、その効果の一部を使ってプラチナタイガーを隷属させた。隷属の首輪は本来、その首輪をつけたものの意思、思考、行動のすべてを支配する魔道具で、古代のダンジョンの遺産ともいえるもので、そんなに数があるわけではない。大半は国が管理していて、残りも国のお抱えの奴隷商人がいくつか持っているくらいだ。
彼女が手に入れたそれは、その改良版といえるもので、この世に1つしかなく、その改良をなした男はもうこの世にいない。資料もなく、再現不可能なものだった。
本来の隷属効果は薄くなり、意思、思考がまったく支配することができなく、さらにモンスターにしか効果がないが、そのモンスターが倒したモンスターを一定確率で完全に隷属状態にするという効果を持っていた。しかも、その数に限りはなく、首輪自体が壊されない限り、首輪のついているモンスターは死ぬことすらできなかった。負ける理由が見つからない。
そんなことばかり考えていると、彼女はある結論に達した。
あの男が何かしたのではないか?
実際には一切そんなことはないのだが、彼女の頭の中ではそれがもう確定してしまっていた。いったい何をしたのかとか、どうやってしたのかとか、そんなことはどうでもよく、あの男になにかをされたというその一点が重要だった。
「こんなことをしている場合ではありませんわ」
彼女は急いでコロシアムの通路を駆け出した。彼女は放心状態でも、シャドウが去っていった通路は覚えていた。決勝が終われば間違いなくシャドウはそこを通る。そう考えた彼女は、行動に移した。
「ようやく来ましたわね。この私を待たせるなんてありえませんわ」
ヴァルミネという女が、俺が宿に帰るために一番近い出口に向かう通路にいた。俺を待っていたらしい。プラチナタイガーの件という想像はできたが、嫌な予感しかしない。
「さっさとしなさい。私はあなたみたいに暇じゃないんですの」
いきなり手のひらをこちらに向けてさっさとしろというヴァルミネ。意味が分からないんだが…。
「なにを言ってるんだ?」
「いいから、さっさとしなさいと言っているでしょう?」
「だから、なにをさっさとしろと言ってるんだ?」
「はぁ!? あなたが、卑怯な手を使って、私から盗んだみぃちゃんを、さっさと返しなさいと言っているに決まっているでしょう!? 今なら金貨10枚払えばなかったことにしてあげますわ」
「何を言ってるかわからん」
「私を怒らせたいんですの?」
「プラチナタイガーを返してほしいなら金貨130枚払え。そうすれば返してやる」
「なにをバカなことを言ってますの? なんで私があなたなんかに金を払う必要がありますの? 私の手を煩わせた迷惑料としてあなたが払うならわかりますが」
「お前がポールたち13人から盗ろうとした金額を俺に払えって言ってんの。そうすればプラチナタイガーを返してやる」
だんだんと苛立ってきた。ただ単にヒメが頑張っただけで、むしろ卑怯な手を使っていたのはあいつのほうだというのに、こちらが卑怯な手を使ったと決めつけていることにも腹が立つし、自分の意思でヒメに屈することを選んだプラチナタイガーを盗んだとか言ってるし、しまいには金を払えだと? ふざけるのもいい加減にしろよ?
「……私を怒らせたいんですの?」
ヴァルミネは手のひらに炎を浮かべてこちらに向かって言った。怒ってるのはこっちのほうだぞ。
「いいのか? 暴力で相手から屈したモンスターを取り返そうとすればその場で奴隷確定だぞ?」
「おーっほっほっほ。あなたバカじゃありませんの? あの契約魔法の効果を忘れましたの? あの契約が発動するのはこの町を出るまでの間限定ですのよ?」
「まだここは町の中だぞ。つかほぼ町のど真ん中だし」
「そんな風に思っているからあなたはバカなんですのよ。一度町から出てしまえば契約魔法は発動しない。言っておきますが、私は既に街を出ていますわ。準決勝が終わってからそれなりに時間が経ってますから、簡単に出て、戻ってこれますわ」
「言いたいことはわかった。だが、俺はお前にプラチナタイガーを返す気はない。あんなくそみたいな魔道具で無理やり言うことを聞かされ続ける苦しみにあいつを戻してたまるか」
「…今更後悔しても遅いですわよ!『炎がその身を焼き尽くさん』フレ――」
今にも撃ってくる、と思った瞬間、ヴァルミネはその場から消えた。
「………やっぱり受ける側が外に出て初めて契約魔法が切れるのか」
一人で納得していた俺が、どうしたものかと立ち尽くしていると、向こうのほうから鎧をまとった警備兵らしき人が走ってきた。重くないのかな?
「シャドウ選手ですね? 契約魔法の発動を感知しました。これからお時間よろしいですか?」
「伝言だけ頼めないですか? 仲間がたぶん宿にいるんで」
「どこの宿でしょうか? 他の者に行かせます」
「『キツツキの止り木』という宿屋だ。ヒツギという仲間がいるはずだから、戻るのが少し遅くなるとだけお願いできるか?」
「かしこまりました。では、私の後についてきてください。地下から領主様の館に向かいます」
「了解した」
俺は警備兵について隠し扉の向こうにあった通路を進んだ。途中で来た他の警備兵の人に伝言を伝えていたから問題はないだろう。
曲がり角や分岐点だらけの地下道を10分ほど進むと、行き止まりがあり、そこには転移陣が1つあった。
「この魔法陣で領主様の館に移動します。領主様の館では武器の使用は完全に禁止されています。アイテムボックスや魔法袋などに入れている場合は、そのまま入れたままでお願いします」
「わかった」
俺は警備兵に続いて転移した。
「来たか。一般の部のトーナメントを決める時に会ったが改めて言っておく。俺がここ、アライエの町の領主をしているクライン・アライエだ。お前さんはシャドウで間違いないな?」
「はい」
「早速だが本題に入ろうか。わかっているだろうが、従魔の部の開始前にかけていた契約魔法が発動され、ヴァルミネ・カクがこちらに送られてきた。何があったか本人の前で確認をする。嘘をつくことは許さん。だが、言いづらいこともあるだろうが、話をする隣の部屋は完全防音にしているし、俺とお前とヴァルミネ・カク以外は人払いをする。そしてヴァルミネ・カク自身は魔法使用禁止、対象弱体化、物理耐性のコーティングのされた特殊な牢屋に入っている。安心してくれていい」
「わかりました」
俺はクラインさんの後に続いて隣の部屋に入った。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
冒険者 Lv69/99
武闘家 Lv47/60
薬剤師 Lv35/60
鬼人 Lv18/20
????の勇者Lv10/??
狙撃主 Lv32/70
獣人 Lv8/20
狂人 Lv1/50
魔術師 Lv1/60
ローグ Lv1/70
重戦士 Lv1/70
剣闘士 Lv1/60 』
ヴァルミネさんとのやりとりでした
はじめは第三者視点です
ではまた次回