従魔の部 決勝です6
プラチナタイガーが地面に倒れた。
まだリタイアするほどではなかったようで、その場で荒く息をしている。
「みぃちゃん! なにをしてますの! 立ち上がりなさい! まだ勝負は終わっておりませんわ!」
ヴァルミネが叫ぶが、プラチナタイガーはその状態のままだった。
「かう、かうかぁうかうかう?」
「ガァウ…」
倒れたプラチナタイガーと会話をしている様子のヒメ。ダメージのせいで苦しそうではあるが、首輪が付いていた時ほどではなさそうだ。
「かぁうかうかう!」
「ガ、ガウ、グゥガウ」
「かうかう。かうかうかぁう、かぁああうかうかう!」
「グ…」
ヒメがプラチナタイガーの額にぽんと前足を置いた。プラチナタイガーは、それを涙を流しながら受け入れていた。
ヒメは、それを見て何度かうなずくと、とことこと首輪の残骸のほうに歩き出し、それを咥えて、空に放り投げた。さらに、それの周囲を覆い尽くすかのように半透明な牙がそれを包む。
次の瞬間、首輪は完全に砕け散った。
それと同時に、プラチナタイガーの体から光が次々と飛び出し、フィールド上でモンスターの形へと変わっていった。その光景は先ほど見たものと同じような光景だったが、大きく違う点があり、その眼には輝きが戻っており、隷属状態が解除されていることを物語っていた。
「グ……グガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
プラチナタイガーが残りの力をすべて絞り出すかのようにすさまじい雄たけびを上げると、フィールドに出てきていたモンスターは全員が光の粒子となり、本来いるべき場所へと帰っていく。
その光景はどこか幻想的な雰囲気があった。
光が完全に消え去ると、プラチナタイガーは光の粒子へと変わった。
しかし、それは白虎の中へと流れていった。
『白虎が眷属を召喚可能になりました。
白虎の眷属は5体となります』
ヒメがどうやら眷属として屈させたようだ。あのプラチナタイガーにはこれでよかったのだと思いたい。
『決まったぁあああああ! 決勝に進んだのは、シャドウ選手だぁああ!!』
「「「「「「わぁあああああああ!!!」」」」」」
コロシアムが歓声に包まれた。ヒメも俺の下に戻ってきていつもの場所でぐでーっとしている。
『では、これより40分後、15時より、従魔の部決勝トーナメント、決勝戦を行います! しばらくお待ちください』
アナウンスがかかり、俺は一旦通路に下がっていった。
「お疲れ様ヒメ。けがはないか?」
「かう!」
通路に下がった俺は、頭の上からヒメをおろし、アイテムボックスから串を取り出しながら怪我がないか確認した。串が残り少なくなってきたな。あと10本しかない。今からだと混んでいたら間に合わなくなるかもしれないから後になるが、また買いに行かないといけない。
「予定通りといえば予定通りだが、ほんとに屈させるとはな。さすがヒメだ」
「かぁうぅう」
頭をなでてやると目を細めて気持ちよさそうな声を出した。
「そういえば、プラチナタイガー傷だらけだったけど、回復させた方がいいのか? いるならマナに頼むんだけど」
「かうかう」
首を横に振るヒメ。どうやらいらないらしい。
後でノノさんに尋ねて知ったことだが、従魔となったモンスターはどうなっているのかわからないが、召喚していない間は体力や魔力、怪我や傷が回復しているらしい。従魔は、運がいいと、死んでしまったとしても1日から数日で再召喚できるようになるらしい。死んだ時点で完全に消えてしまうモンスターも多いそうだからあまり期待はしないほうがいいとのこと。契約者本人の魔力を使っているとも、どこかから魔力を持ってきているとも言われているらしいが、本当のところはわかっていないらしい。
それからしばらくヒメと戯れていると、ノノさんがやってきた。
「ノノさんもこっちだったんですか?」
「まあこっちの通路のほうが近かったからね。わざわざ遠いほうに行く理由がある?」
「ないですね」
「なら問題ないじゃない。それと、なんで敬語なの?」
「別に」
さっきのノノさんが頭に浮かんでしまって怖いからだなんて言えない。あれは年齢について触れた時のヒツギと同じ雰囲気があった。
「さっきのプラチナタイガー、屈させたのよね?」
「ええ。悪いですけど俺がもらいました」
「私が叩きのめすつもりだったんだけど先にやられちゃったらしょうがないか。で、あの子大丈夫なの? 見た感じその子が痛めつけてた様子だったけど」
「どうにもあの隷属の首輪の効果で、あのプラチナタイガー自身も、ほかの隷属モンスターみたいに意思を奪われてたわけじゃなさそうだったけど隷属状態にあったみたいです。ダメージ無視して動き続けてましたよ。首輪壊した瞬間に崩れ落ちましたから」
「首輪の効果で無理矢理隷属してただけで彼女の従魔じゃなかったってことね。まあしっかりと休ませてあげなさいよ」
「当然。まぁこれ終わってもすぐ次の予定があるんですけどね」
「私も今の拠点に戻るよ。攻略に出遅れるからね」
「どこかのダンジョンに挑んでるんですか?」
「バルガスの、迷路っていうトラップ満載のダンジョンよ。その代わりモンスターは少ないけど。これでも最前線とまではいかなくても、それなりに先に進んでる方なの。大会があったから一旦こっちに来たけど、その間にどれくらい差をつけられるか…」
「応援してますよ」
「まずはこの試合に勝ってからだけどね」
「負けませんよ」
ローブのなかでニヤリと笑いながら言うと、ノノさんも獰猛な笑みを浮かべて先に広場に向かった。
『先にやって来たのは、ネネ選手のランドドラゴン、ジルビダ選手のキングスライムを打ち破り、その戦いの最中進化を果たしたソニックワイバーンの使い手、ノノ選手だぁ!!』
「「「「「わぁああああ!!!」」」」」
『そしてそしてぇ! 続いてやってきたのが、マーチ選手のプラチナコング、ヴァルミネ選手のプラチナタイガーを、予選はオーガエンペラー、プラチナコングはゴールデンオーガコングロード、そしてプラチナタイガーはそれらをしたがえるヒメが、といったようにすべて戦いでそれぞれ違ったモンスターが戦うという荒業をやってのけた、シャドウ選手だぁ!!!』
「「「「「わぁああああ!!!」」」」」
アナウンスで歓声が上がるコロシアムの中、俺たちは話すことは話し終えた後だったので、お互い何も言わずにヒメとソニックワイバーンをコロシアムに残して結界の外に出て試合開始を待つ。
コロシアムが、俺とノノさん、ヒメとソニックワイバーンのだす緊張感に飲まれて自然と静かになっていく。
そして、コロシアム全体が静寂に包まれたころ、15時の鐘が鳴った。
『さぁてさてさて、お待たせいたしましたぁ! 15時の鐘が鳴ったところで、従魔の部決勝トーナメント、決勝戦を開催いたします! まずは、ここまで勝ち上がってきたこの両者に拍手をお願います』
さきほどまでの静寂がまるで嘘のように大歓声に包まれる。
『本来ならばここで領主様から一言激励をしてもらうところなんですが、先日ちょっとした騒ぎがあったようで、その対応のため領主様はただいま席を外しております。ただ、伝言を預かっているので、ここでその紹介をしたいと思います』
アナウンスの人の言葉に、「早く試合を始めろー」だとか、「早く見たいー」だとか、「領主様ザマァ」だとかあちこちから野次が飛び交う中、アナウンスの人は淡々と読み上げる。
『えーっと、「できることならば直接この目で試合をみたいし、直接会場で一言激励をしたいところだが、それはあきらめる。騒ぎを起こした奴らには適切な処罰をしておく。決して俺が試合を見れなくなったことへの恨みで罰を重くしたりはしない。絶対にしない。それはともかく、2人ともよく勝ち上がってきた。今回の大会は、初出場が多く、それだけでなく全体的にレベルが高い。その中で勝ち上がってきた2人は立派な強者である。決勝でも、それに恥じぬ試合になることを期待している。ただ、一言言っておくなら、これまで負けてきたやつらが弱者であると勘違いだけはしてほしくない。たまたま今回はこの2人が勝っただけだ。次回もまた参加することがあれば同じ結果になるかどうかはわからない。己の持てる力の限りを振り絞って戦うことのできる奴は皆強者である。今回勝ち上がったこの2人の試合を見て、明日の糧にしてほしい。最後に、素晴らしい戦いを期待している!」だそうです』
最初のほうこそ笑いが起こったり、「ほんとにかー?」といった野次が飛んでいたが、次第に全員が静かに聞き入っていた。これが本人の言葉であればさらに迫力は増していただろう。なんかもったいない思いが湧き上がってきた。
『領主様からの伝言も終わりましたので、試合を始めたいと思います! 準備はいいですか? それでは、従魔の部、決勝トーナメント決勝戦、ノノ選手 VS シャドウ選手、試合…開始!!!』
試合が始まった。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
冒険者 Lv69/99
武闘家 Lv47/60
薬剤師 Lv35/60
鬼人 Lv18/20
????の勇者Lv10/??
狙撃主 Lv32/70
獣人 Lv8/20
狂人 Lv1/50
魔術師 Lv1/60
ローグ Lv1/70
重戦士 Lv1/70
剣闘士 Lv1/60 』
準決勝の決着と決勝開始寸前といったところです
体調も戻ってきてるので次は遅れないといいな…
ではまた次回
 




