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集めました

 所変わって王国内のとある広場。

 そこでは数十人のローブ姿の男たちと一人の少女がいた。

 そして時は遡る。





「ねえ騎士さん、この国にいる魔法使いを全員集めてくれない? 魔法を習いたいの。ダンジョン(・・・・・)を攻略するために」


 私が鳴とまた会うために必要な強さを手に入れるために扉の前で待機していた騎士に告げる。この国は王都と言われるくらいでも、ここは騎士が国を守るって感じらしい。なら魔法使いは下手すると数人くらいしかいないかもしれない。もしいなかったらすぐにでもここを出て他の場所でなんとかして魔法を覚えるだけだ。最悪モンスターが使うのを見て覚えてもいい。それはそれで強力そうだし。


「真那様、それはどういった――」


「早くしてくれない? 私の『力』は魔法の力。なら1つでも多く魔法を覚える必要があるの。なら騎士よりも魔法使いの方がいい。だから騎士は魔法使いの人を呼んでくれたらあとは関わらないでいいわ。あっちの男の所にでもいってあげて。たぶんだけどあいつは剣術が高い。なら騎士と訓練するのが一番でしょ?」


 騎士の言葉を遮って止まらずに告げる。


「そんなことできません。私たちにはあなたをお守りする任務があります」


「鳴を守れなかったじゃない。すぐとなりにいた団長さんですら。それなのに私を守るなんて言わないで。私は前を向くことにはしたけどあなたたちを信じることはもうないわ。トップがすぐとなりの人を助けられない人たちなんかにいったいだれが助けられるって言うの?」


 騎士は言葉を失う。そして少しして顔が真っ赤になって怒りはじめる。


「貴様……女のくせして我々を愚弄する気か!」


「事実しか言ってないわ。それに今の発言で余計に信頼できなくなったわ。この国の騎士は女のことを見下してるのね。あー怖い怖い。あなたのせいで私は騎士を信用できなくなった。他の騎士にそう言っとくから」


 今の今まで赤かった顔は私の言葉で一気に真っ青になる。それからなにも言わずにどこかに出掛けていった。このまま魔法使いをあつめてくれないかな……。


 それから一時間くらい部屋でのんびりしていると部屋の扉がトントンとノックされる。どうぞーと言うと失礼しますと声がして騎士団長が入ってきた。


「先程は部下が失礼しました」


「いいよ。ただ騎士が信用できなくなっただけだから」


「ははは……厳しい御言葉。魔法使いの件ですが現在招集をかけています。しばらくお待ちください」


「あら、ありがとう。かといって評価が変わるわけではないけど」


「ただし条件として騎士を数名つけさせてもらいます。でなければこれは認められません」


「それはいったいなぜ?」


「我々としてはあなたがた勇者を失うわけにはいかないのです。魔法使いの中に妙なことを考える輩がいないとも限りません。それを防ぐために」


「勇者を失いたくないならなぜ鳴の救出のための部隊を派遣しないの? 生きてるかもしれないのに」


「まさか。あの谷に落ちて生きていたものはいないのです。ですのでそこに騎士を派遣するわけには……」


「なら私のところにも派遣しなくていいよ。もう一人の男に全員派遣しちゃってよ」


「ですから」


「さっきの人にも言ったけど、騎士団長であるあなたでさえすぐとなりにいた鳴を守れないような集団は信用できないの。それにさっきの人の件もあることだし女だと思って見下してる人に守られたいとは思わない。むしろ何をされるかわからないから怖いわ。騎士団の人たちって見るからに力が強そうな人多いし、襲われたらたまらないもの」


「勇者様を襲うような輩は我々の中にはおりません」


「さっきいたじゃない。ほっといたら殴り掛かってきそうな剣幕だったわよ」


「……」


「で、どこに集めてくれるの?」


「……最初の広場に」


「わかった、ありがとう。じゃあいくから」


 私は団長さんを置いて歩きだす。廊下を抜けて階段をおりていった。




 残された騎士団長バラーガは誰にも聞こえないような声で呟いた。


「小娘め……貴様なぞ国のためにその身を捧げていればいいのだ……。もう一人を使う(利用する)ための生け贄としてな」


 それからすぐに宿をでていった。







「結構いる……これは嬉しい誤算かも」


 私は広場に来ていた。そこには30人ほどのローブ姿の男たち。私が想定していたのは数人が来ているだけという状態だったので多いことはラッキーといえた。


「えー、みなさんはじめまして。高坂真那といいます。皆さんをここに呼んだのは魔法を見せてもらいたかったからなんです」


 私が自己紹介とともに集めた理由を告げるとざわつきはじめた。突然だからそりゃ困惑するよね……。

 そんな中、一人の魔法使いが手をあげて意見した。


「私はロイトという。魔法を見せてもらいたいとはどういうことなのだ? お嬢ちゃんが勇者であることは聞いているが突然魔法を見せてといわれても困るのだが」


 ロイトと名乗った男性の言葉を皮切りに「そうだそうだ」とか「なんでそんなことを」とか批判の声がする。

 そうだよね。突然勇者とかいって現れた小娘に魔法を見せてくれなんて言われたら困るもんね。そして私はポツリポツリと本心を話しはじめた。


「……私には幼馴染みがいました」


 騒がしかった魔法使いたちが静まっていく。


「その彼の名前は刈谷鳴。この世界に呼ばれた3人のうちの1人です。

私はいつも彼と一緒にいました。それこそ家族同然に。いえ、むしろ家族以上に。

でも、そんな彼は数時間前に谷底へと落ちていきました。騎士の人が先行して確認してOKだといった橋を団長さんと一緒に渡って、半ばくらいで穴が開いて落ちていきました」


 私の目からは涙がこぼれる。

 その姿になのか、それとも別のことになのかは分からないが数人の魔法使いたちがざわつく。


「私は、ただ、みていることしかできなかった。目の前で、鳴が落ちていくのを、ただ見ていただけだった……。

泣いて、叫んで、騎士の人に押さえられながら、ただ鳴に手を伸ばした。それでもその手は届かなかった……。

私は悔しい! 目の前の鳴を救えなかったことが! その時に行動に移せなかったことが悔しい! せっかく『力』をもらっていても、鳴を救えなかった!」


 涙を拭って荒げた声を戻す。


「でも、私は諦めない。鳴はきっと生きている。鳴が、私を置いていくなんてありえないから。だから、私はダンジョンを攻略する。なんとなくだけど、その先に鳴がいる気がするから。でも、そのためには魔法を覚えないと意味がない。

自己満足だってことはわかってる。ただのわがままだってこともわかってる。そのためにあなたたちを利用しようとしていることも理解してる。それがどれだけ自分勝手かもわかってる。それでも!」


 膝をついてぐっと歯をくいしばる。


「それでも私には力がいるの!

お願いします。あなたたちの、これまでの知識を、技術を、経験を、私にください! どんな魔法でも構いません! たとえ誰かが使えないと笑っても、私は絶対に笑わない。だから……私に……私に、鳴を救わせてください……」


 頭を下げる。地面につくんじゃないかと思うくらいに。目を開ければ目の前の地面は涙で湿っている。その上に新たな水滴が落ちる。




 広場はただ静かに時が過ぎる。

どうもコクトーです


気づけばPV3000オーバー……

ありがとうございます!!!


次も真那のお話


ではまた次回

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