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何か

「そっかそっか……」

 愉快そうに呟き。 

 のそりと悪人は起き上がる。 

 さすがにここまでボロボロになった彼が笑っていられる原因が分からない由堂は眉をひそめた。

(そっかそっかぁ……アッハハハハハハ……!! 感謝してっから雪白を守ってんのか。助けたいとは思っててもそれは善人がやるみてぇなことじゃねぇ。『恩返し』のつもりで『感謝』してっから俺はこうして立ってんのか……)

 いつもの彼ならばここで『悪』になりきるはずだ。

 何をしてでも、雪白千蘭という少女を客観的に見て守り通すはずだ。善人気取りの馬鹿がやるような『助ける』だなんて見下す考え方はしないはずだ。

 もちろん彼はそんな間違いを起こさなかった。

『本物の悪』という考え方は変わりはしない。

 だがしかし。



 あんなにまで自分を愛してくれた雪白千蘭を―――『ヒーロー』のように守りたいと『一瞬』だけ思ってしまった。



 自分も彼女に答えたい。

 いつものように『悪』として戦うのではなく、『自虐』して戦うのではなく、雪白千蘭が願っていた『悪にならないで欲しい』という言葉に彼は心を揺り動かされた。

 彼女は自分に『愛』をくれた。

 ならば。



 自分も雪白千蘭に報いるために彼女が望んでいた『善』として雪白千蘭を守り抜いてみたい。



 それは小さな小さな『善』だった。

『本物の悪』という思考は一切変わらない。だがそれでも『善』になりたいと抱いたのは確かなこと。

 ―――それが引き金となった。



『善』を抱こうとしたことが間違いだった。



「―――!?」

 体を襲ってくる『何か』に夜来初三は硬直した。まるで心臓そのものを『何か』に握られているような感覚にギョッとする。背中を這い上がってくるような『何か』は次第に心までをも侵食していくようだ。

 その瞬間。

 鼻で笑うような『何か』が夜来の頭で反響した。

 同時に。

 夜来初三の意識が深い深い奥底に沈む。







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