表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

521/539

もう一匹の最強

「ほうほう。さすがアルスさん、王様なだけあってご奉仕プレイをセレクトするとは。しかも男もいける口ときた。食わず嫌いのないところに共感を抱きましたよ」

 再び激突が始まる。誰もがそう思う緊張感の中、場違いな下ネタが飛んできた。アルスと名無、ギリシャ神話の王と黒神一族頭首の、最強と言わざるを得ない二匹の怪物の中に介入できる怪物など、下ネタ好きという点も加味すれば大体の見当はつく。

 そいつはぽっと現れた。

 アルスと名無の間に、すっと幽霊のように出現した。

「男二人じゃ花がない。けれど愛の花は咲くかもしれない。雄花と雄花の愛の力、僕はありえるものだと信じていますよ」

 相変わらず、ホストのような金色のスーツに身を包んでいる。金髪の混じったオールバックも自己主張が激しい。そして、何よりも目立つのは、その子供のように屈託のない笑顔だった。



「さあ! 僕も混ざって3Pにしましょう! 受けは名無さんお一人ということでオッケーですね?」


 

 言って、パチンと指を鳴らす。すると、一拍おいてから、バンと黒神名無の右半身が内側からはじけた。ポップコーンのように血肉が飛び散り、さすがに名無もよろめいてしまう。アルスの圧倒的物理攻撃とは違う、理解しがたい謎の一撃。これは効いたらしい。びちゃびちゃと出血しながら、名無は意外そうに呟いた。

「上岡真。千の怪物、だったかな」

「……はあ」

 上岡はため息を漏らす。呆れるように腰に手を当てて、

「分かってないなあ。これはあなた一人のご奉仕プレイなんですよー? 僕のことはご主人様って言わなくちゃね」

「妙だね。君はそこの王様のせいで怪物へ至った恨みがあるはずだ。なぜ『デーモン』が『エンジェル』と共闘するのかな」

 上岡はアルスに目をやる。王は訝しそうに見返してきた。  

「あなた方の兵器として作られた僕が、アルスさん、あなたに力を貸すのは気分がいいものじゃない」

「だろうな。俺は上岡真という人間を殺し、お前という名前なき怪物を作った。お前が上岡の意志を引き継いでいる以上、お前と俺は仲間にはなれん。そこには絶対的な憎悪の壁がある」

「ですが、状況が状況です」

 上岡は黒神一族頭首を見る。

 いつの間にか体が元に戻っていた。既に余裕綽々な雰囲気を纏っている。

「黒神一族により、夜来さんもまた僕と変わらない痛みを知った。彼は人の死をあまた背負い、上岡真は怪物をあまた背負った。共に自分というものが消えていく運命にある。けれど、夜来さんはまだ助かるかもしれない。悪に飲まれ切っていない以上、まだ救える見込みはある」

「夜来を助けるのが貴様の目的か」

「可愛い部下のため、という思いもありますが……」

 上岡は笑っていた。

 ただし、それは顔だけの笑顔だった。

「あまたの人間を材料に悪を創る所業。いやいやー、上岡真がもっとも忌み嫌う悲劇も同然。上岡真からすれば、これは鏡の自分をみる行為だ。いい感情など持てるはずもない」

「嫌悪、か」

「ご名答。個人的な理由で僕はここにいる」

「そして、俺と渋々肩を並べている、と」

「ですねー。とりあえず、名無さんを調教してMに改造しましょう。それまではあなたを戦力として認識します」

「……いいだろう。『デーモン』と『エンジェル』の因縁はしばし放る。黒神一族滅亡までは協力することを誓おう」

 並んだ神々の王と千の怪物は、黒神一族頭首と向かい合う。これで戦力差に大きな変化が生じた。ギリシャ神話最強と怪物人間、これに相対する名無も余裕はないはずだ。事実、後ろに組んでいた両手は解かれている。警戒の証拠だ。

 上岡真は相変わらずの笑顔で、

「さあさあ。ちょっと激しいボーイズラブを奏でましょうか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ