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それだけは違う


 血だまりの中に転がる敗者。

 そして、それを見下ろすのは勝者の少年だった。

 夜来初三は大きな舌打ちをする。やはりアルスは弱っていた。奴の攻撃はあっさりと夜来に破壊されて、全てを壊す魔力の一撃に吹き飛んだのだ。しかし夜来は文句など言わない。これに不満を叩きつけるのは、倒れふしたアルスに失礼だということだけではなく、自分の『本物の悪』に反するみっともない行いだ。

「勝った、か」

 鉈内が呟く。

 本当に、今度こそ立ち上がることも出来なくなったアルスを見て、その場に腰を落としてしまう。緊張の糸が切れた。ようやく激しい死闘が終わり、安堵の色に心を塗りつぶされたのだ。

 一方、夜来初三はアルスに近寄っていった。

 まだ、やることがある。その非情な目は未だに輝いていた。

「おい。聞きたいことは腐るほどある」

「……どうりで、俺をギリギリのラインで殺さなかったわけか」

 喋ることしか出来ないアルスは、負けた自分に拒否権はないと納得する。

 これが強者だった者のプライドだった。負けたなら大人しく認める。強者というのは、常に強者でいなくてはならない鉄の約束があるのだ。

 しかし負けた。

 ならばもう、アルスは夜来初三という強者の下なのである。

「まず一つ。この城と外で暴れている鳥はどうすりゃいい」

 鉈内にはアルスの返答が聞こえなかった。距離が離れているのもあるが、なにより、既に王の声は小さく弱々しかったからだろう。

 アルスの答えに、夜来初三が眉をピクリと動かす。

「……なるほど。こりゃ俺にとっても好都合だ」

 薄く笑った彼のもとへ、鉈内は足を引きずって近寄る。

 故に、次の質問と返事は綺麗に聞き取れた。

「最後だ。お前ら『エンジェル』は今までに馬鹿をやらかしてきた。そうだな?」

「……ああ。だな。主に貴様の調査に関してだが」

「だからこそ聞かせろ。俺の家族についてだ。あの二人は、過去に『プリンセススター号襲撃テロ事件』って被害にあってる。あれだけは納得できねぇんだよ。テメェらは俺を調査することをメインに事件を起こしてきたが、あのテロ事件に関しては俺につながらない。何で、あんなテロを起こした」

 それは確かにそうだ。

 唯神天奈と秋羽伊那にとって、人生最大の悲劇。家族が根こそぎ死んだテロ事件に関してだけは、夜来初三という少年との接点がない。『祓魔師』の由堂清、『悪人祓い』のザクロ、『エンジェル』・特攻駆逐部隊の四人、様々な驚異が夜来初三の周りを襲った。

 しかし。

 あの『プリンセススター号襲撃テロ事件』だけは、どうしても夜来に関係しない。

 だから聞いた。今までの騒動から、きっとアルスがテロ事件に関しても知っているものとばかり思っていた。

 が、



「何を、言っている……? あの事件だけは、俺らが引き起こしたものじゃないぞ」



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