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ついに解明

 鉈内翔縁は降り立った。

 つまり『天界の城』に足をつけたのだ。ヘリコプターを使ってたどり着いたが、これからどう動けばいいか分からない。世ノ華雪花はリーゼに任せておいたので問題はない。問題があるのは、これからの自分についてだ。

 右手には資料を持っている。

 リーゼから手渡されたもので、アルスや『エンジェル』を調査した結果、の詰め合わせらしい。もともとリーゼは『エンジェル』という組織を誰よりも追い、捜査してきた『悪人祓い』だったのだから、非常に信頼できる情報だろう。

(……ま、リーゼさんが言うにはあくまで答えじゃないらしいけど。この書類が全てを物語っているわけじゃない、だからあまり期待しちゃいけないって言われたし。それでも見る価値はあるから、いい収穫なんだけどさ)

 つまりは不完全なパズルということだろう。全てのピースが集まっていないため、完成させたくてもさせられないわけだ。

 だから。

 そんな情報に目を通しても、鉈内には意味のわからない文章にしか見えないわけなのだ。

  


「……あれ?」



 そう思ったが、違った。

 どうせ自分には何も分からないと予想していたが、何故だか鉈内には引っかかるものが頭の片隅にあったのだ。曖昧な記憶。思い出せそうで思い出せない、そんなモヤモヤが胸の内に広がっていく。

「これ、どこかで……」

 必死に頭を使う。

 とにかく幼い頃の日々から振り返ってみることにした。七色夕那に拾われた時から始まった思い出を、徐々に脳内で見返してみる。彼女に引き取られてから、しばらくして『悪人祓い』という仕事を知り、速水玲などの『悪人祓い』たちと少しずつ出会っていった。自分を救ってくれた七色に憧れて、だんだん呪いや怪物について興味を持ち始めたのは十歳くらいの頃だったはずだ。

 そう。

 そして興味が生まれた直後、子供だからなのか咄嗟に行動を開始した。七色寺の地下に行った覚えがある。七色夕那が仕事で使っていた、広大な図書室のような部屋が、確か地下にあったはず……。

「あ」

 そこで。

 全ての記憶が繋がった。

「思い、出した」

 手に持っている書類に目を落とす。そこには得体の知れない怪物についてや、解読不可能な文字や記号が並んでいるものもある。しかし一つだけ。その内容だけは、鉈内翔縁だからこそ理解できるものだった。

 神話だった。

 ギリシア神話について書かれている内容。

(あの日、十歳の夏だっけ……。僕は夕那さんの資料室まで行った)

 その資料室とは、かつて雪白千蘭が七色に案内されて立ち入った場所でもある。オカルト系の資料が保管された地下室だった。

(そんで、ええと……確か、一番奥のほうにあった棚から一冊の本を取った。一番目に見えない場所にこそ、何かスゲー怪物とか呪いについて書かれてそうだなって思ったんだよ。そして、それは期待通り僕が見て引き込まれるような内容だった。それがギリシア神話だ)

 鉈内翔縁は理解した。

 アルスという男が使っていた力と、手に持っている資料の情報から難問を解いた。

 すなわち。

 絶対的な力を持つアルスが使う能力とは、



「全知全能の神・ゼウスだ。あいつは天空神の力を使ってるんだ……!!」



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