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誰にだって相性はある

「なんっ……!?」

 天空に浮遊する城に気づいた鉈内翔縁は、唖然とした顔で上を見上げていた。雲が見えない。日光が完全に遮断されていて、脳が即座に状況を飲み込んではくれなかった。

 だが。

 そこで、背後から明るい声がかかる。

「はは、お久しぶりです鉈内さーん。どうです? お元気してましたか?」

「っ。あんた……!!」

 見覚えのある敵の顔が、振り返った先にはあった。ようやく冷静さを取り戻したことで気づくが、周りの一般人達は全員気を失って倒れている。

 誰がそんな真似をしたのかは、すぐに想像がついた。

「君たちさ、何で関係ない人の意識を刈り取ってるわけ?」

「今回の戦争は、本来あなた達のような光の住人が関わってはいけない争いです。あなた達も拘束して無力化しても良かったんですよ。でも見逃してあげちゃった。ね? 僕の優しさにホモ化したでしょ?」

「ふざけてる状況じゃないよね。あんたらが何者かは知らない。けど、ハッキリさせて欲しいことは一つある」

「なんでしょうか」

「あんたらは僕らの敵なわけ?」

 上岡真。

 彼はニコニコとした笑顔を貼り付けたまま、大きく首を横に振った。

「いいえ。僕達は上に浮かんでる城の主を殺すために活動しています。ですから鉈内さん達に危害を加えるつもりは毛頭ない」

「第三勢力ってとこ?」

「はてさて、どーでしょうかね」

 肩をすくめて笑った上岡は、ふとそこで視線を逸らす。視界に捉えたのは、鉈内翔縁の隣に立っている綺麗な女性だった。すなわち『悪人祓い』のリーゼ・フロリア。彼女は睨むわけでも敵対心を丸出しにするわけでもなく、ただただ上岡真の笑みを見つめ続けていた。

 探られている。

 彼女は上岡の表情や言葉の一つ一つから、少しでも情報収集を開始していた。

(……こういう女性は苦手なんですよね。下ネタ言っても無反応されて空気が凍る展開になりそうですから。おー嫌だ嫌だ、クールビューティーは僕と相性が悪い)

「どうしましたか、お嬢さん?」

 上岡は柔和な声でリーゼに微笑む。

 対して、彼女は周りに散在している銃火器を所持した謎の部隊を見渡し、

「彼らはなに? あなたは彼らのリーダーなの?」

「僕は上司ですね。詳しくはお伝えできません」

「じゃあ質問を変えるわ」

 リーゼの目の色が変わった。

 警戒心が研ぎ澄まされた碧眼を細めて、今度こそはっきりと睨む。

「なぜ、先ほどの津波から街を守ったのかしら?」

「カッコイー登場が出来るからです」

「だとしたら相当の馬鹿ね。もう一度聞くわ、なぜ街を守ったの?」

「……『エンジェル』の全てを無力化することが仕事なんです。だから間接的に守っただけです」

「本当に? あなたは信用できないわね」

 上岡は音もなく後ろへ後退する。

 さらに大柴の背中に隠れて、ボソリと呟いた。

「大柴さん、やっぱり僕はこの手の人が苦手です。代わってくださいよ、エロ本十八年分差し上げますから」

「十八年分!? っていうかエロ本って何年分とかあるんですか!?」

「一回使うのに一冊使用するでしょう」

「……俺は生まれて初めてエロ本が使い捨て道具だということを知りました」

 大きな溜め息を吐いた大柴は、面倒くさそうに告げた。

 鉈内とリーゼを一瞥して、クルリと踵を返しながら、

「とりあえず来い。さっき通信が入ったが、どうやら世ノ華雪花の滞在している場所に襲撃が入ったらしいぞ」

「っ!? よ、世ノ華のところに!? ちょ、何でそんなこ―――」

 顔を青くした鉈内の言葉を遮って、彼は言った。

「豹栄さんがそっちに向かってくれたが、安心はできない。連れてって欲しいなら、ちっとは静かにしてくれよ」


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