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妖狐と最凶

 爆発音が鳴り響く。

 ロシア連邦の北東端。大自然の中でも唯一拓けた広大な円状の崖を挟んで、両者は様々な激闘を開始した。どちらかが先に先制攻撃をしたわけではない。勝手に双方がお互いを敵だと認識し、自然と戦争の火蓋が切って落とされたのだ。

 西方軍は伊吹連率いる、過去に暗躍していた不可思議な巨大組織『エンジェル』。

 東方軍はフラン・シャルエル率いる、『悪人祓い』の巨大組織『夜明けの月光』。

 どちらも崖周りから回り込むように動き出していた。すぐさま弾丸が飛び交う音や、鼓膜を引き裂く轟音が炸裂し、原因不明の衝撃が地響きとなって空間を振るわせる。

「チッ」

 小さな舌打ちが戦場で聞こえた。

 そして、小さな金色の影が御札をレイピアに変換させて戦場を支配する。

「面倒くせェ。面倒くさすぎて吐きそうだぞクソッたれ」

 フラン・シャルエル。四方八方から襲いかかってくる屈強な敵兵に剣先を最小最低限の動きで叩きつける姿は、あまりにも見た目とは不釣り合いな強者そのものだ。背後から銃口を向けられる。だが、彼女は一切動じることなく、冷静で的確な行動を取る。

 傍に落ちていた手のひらサイズの石を拾い、即座に投げた。

 まるで野球というよりはキャッチボールをする気軽さで、その硬い固形物を自分に銃口を向けていた男の顔面に投擲したのだ。結果、見事に鼻っ柱へ吸い込まれた石が直撃した鈍い快音が鳴り響く。

 同時に。

 フランは石の一撃で体勢を崩した男の首を、全力疾走しながら鷲掴みした。

「―――っっば!?!?」

 呼吸が止められた。

 だが、フランは顔を真っ赤にして酸素を取り込もうとする男の首を片手で掴んだまま、走っている先の延長線上にある大木へ背中を押し込んでやった。

 バシベキビキィッッ!! と、男の体を受け止めた大木にヒビが入る。

 それだけ、見た目に反した筋力を最凶の『悪人祓い』は宿しているということだ。

「ったく。真っ先にロリの私を狙うテメェの神経どうなってんだ? 普通可愛い子は手ェ上げねェのが常識的な判断だろうがよ」

 泡を吹いて倒れている男を軽く蹴り飛ばして、フランはクルリと振り返った。

 そこには。

「手合わせ願おう」

 伊吹連が立っていた。

 あちらこちらが戦場と化しているこの現場で、彼は余裕綽々とした戦闘宣言を始めたのだ。

 その態度には興味さえ向けず、フランは特別何の感情も抱いていない目を細めて、

「テメェらは何だ」

「答える義理はない。お前らのような『光』を浴びる人間に、『闇』の常識は理解できないだろうからな」 

「ふざけろ。私ァなァ、マジでテメェらのバカ騒ぎのせいで海外出張するハメになってんだよ。あァ? 普通よォ、名刺交換とか土下座とかサウンドバックになるとか誠意を見せるモンじゃねェーのかなァ?」

「さっさと退け。そして、俺たちの争いに関わるな。それが俺が送る助言というやつだ」

「関わるな? 争い? ますます好奇心が揺さぶれるな。マジでオマエぶっ飛ばして謎解きしたくなっちゃった」

 争い、とは『エンジェル』と『デーモン』の対立。または悪魔の神に憑かれた少年との現在の戦いのことを指しているのだろう。もちろんフランには一切理解できないことが溢れているので、関わるなと言われても引くわけはない。

 フラン・シャルエル達の目的は地球を襲う謎の異常現象の解決。

 それが怪物の力を利用した可能性が高い以上、彼女達は『悪人祓い』として仕事をするだけだ。

 問題の解決。

 すなわち、犯人の逮捕と状況回復のみ。

 故に、

「―――じゃあオマエが私のオモチャ決定だ」

 ゴバッッ!! と、瞬時に伊吹との距離を詰めたフランがレイピアの先を突き刺した。まるで弾丸だ。空気を裂く甲高い音が脳へ伝わり、その音が示す事実が伊吹の腹部を貫いたということ。

 しっかりと、その剣先は肉を蹴散らし体内に埋め込まれていた。

「そうか。オモチャときたか」

 だが。

 伊吹は『悪人』だ。九尾の狐に憑かれた、並の人間では到底届かない力を宿し、同時に悪を背負った邪悪な領域に立つ存在。

 ガシ、と腹部に突き刺さっているレイピアの刀身を片手で掴み、

「では、オモチャはオモチャらしく使用者を楽しく笑顔にさせてやろう」

「っ」

 直後に。

 ゴバッッ!! という閃光が弾けとんだ。まるで全方位に拡散したかのように、赤黒い禍々しい粒子が飛び出してきたのだ。それは伊吹連の右手から―――レイピアを掴んでいた右手から発射された。

 すなわち。

 妖狐が宿す妖力である。

「こちらも本気で行くぞ。お前の噂はいろいろと耳にしているからな」

「……面倒くせェ」

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