『エンジェル』を追い続けたベテラン『悪人祓い』
リーゼ・フロリアと名乗った女性。いきなりの同業者宣言も味方宣言も、全てが全て怪しいものであったが、敵対する意思は本当にないように見えるクールな顔をしていた。それは世ノ華が一番理解できた。人から放たれる敵意や殺意には人一倍敏感な彼女だからこそ、本当にリーゼが敵ではないということには納得できることが可能だったのだ。
「で、そちらが七色夕那の息子さん?」
チラリ、と。
そんなミステリアスな彼女は鉈内に首を向け変えて、さらに告げた。
「フランさんの直属の部下というわけではないから、あなた達は私を知らないのでしょうけど私はあなたを知っているわ。鉈内翔縁。七色夕那と戸籍上は家族にあたる子供にして私と同じ同業者。あなたの親がこちらの世界じゃ有名だったから、必然的にあなたの名前は広がっているの。だからあまり不審に思わないで頂戴」
「え……え? ちょ、ちょいと待って。あなたは僕のことを知ってて、まぁ、もうその時点からいろいろと頭パンクしそうなんだけど、何より……あなたは僕達を襲った奴らのことを知ってるの?」
確かに、リーゼは先ほどの襲撃者についてを深く知っている口ぶりだった。
鉈内の指摘も当然のことだと分かっているリーゼは、コクリと大きく頷いて、
「ええ、全部全部そいつらのことは知っているわ。きっと世界中の誰よりも奴らのことは私が熟知している」
「じゃ、じゃあさ、今北極で起きてる異常現象って」
「十中八九そいつらの仕業ね」
サラリと今回の事件の犯人を語るリーゼ。
そのトントン拍子にことが進む展開に、鉈内も世ノ華も喜べばいいのだが、やはり『強力な助っ人』なんていい認識で受け止めるには無理がある。突然現れて、突然関わってきた女。それもまた、リーゼ・フロリアの存在そのものでもあるため、どうしてもここで仲間意識を芽生えさせることは不可能だった。
そんな二人の反応も当然だと理解したのか、リーゼは小さいため息を吐いた。
「はぁ。分かったから、もうそんな目で見ないで頂戴。誤解は解きたいところだし、あなた達も私も北極で起きてる事態の解決を図っているのだから、仲良く手を繋いだほうがいいでしょう。戦力は増やすに限るわ……まぁ」
鉈内に向けていた目を、彼の隣に立つ世ノ華雪花にチラリと向け変えて、
「そっちのお嬢さんは、どうやら私達『悪人祓い』にとって本質的には『敵』なんでしょうけどね」
悪人・世ノ華雪花に対しては、どうやらあまり好意的ではないようだ。それは彼女が『悪人』であるが故なのか、はたまた敵意を隠そうともしない態度が気に入らなかったのか。リーゼは疑心暗鬼気味になっている自分に呆れて、クルリと踵を返して森を出ていく。
その後ろ姿を流れで自然に追っていく鉈内と世ノ華は、森をようやく出たところで思わず足を止めた。
「さてと。じゃあとりあえず、今世界規模で起きている奴らの行動や状況を細かく説明してあげましょう」
そのためにも、とリーゼは付け加えて、
「ひとまず『基地』へ移動しましょうか。同業者同士仲良くしましょう」
広大な雪原に戻ってきた鉈内と世ノ華を待っていたのは、一機の大型ヘリコプター。どうやらここでお別れする展開にはならないらしい事実に、世ノ華は面倒くさそうにため息を落とす。
リーゼに促されてヘリに乗り込んだ二人は、当初の予定からは大きく逸れた現在の事態に落ち着く様子は見えなかった。




