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殲滅後に訪れるのは一つの出会い

 迫り来る謎の武装集団。雪に溢れる森の中では、逃亡さえも難しい環境だった。あたりは大自然故に、整備された道なんてものは微塵もない故に、それも考慮した結果、やはりここで蹴散らすほうが得策だと世ノ華は判断したのだ。

「……ま、あれだ」

 ボソリと呟いた彼女は。

 全長三メートルは超える巨大な黒い金棒をゆらりと片手で持ち上げて、

「きびだんご一つさえ携帯してねぇテメェらが、わたしに勝てる道理なんざねェんだよ。イヌ、キジ、サルの三匹にリード繋げてもっかいチャレンジしに来いよ」

 ゴッッッ!! と、世ノ華雪花は真横にそびえ立っていた大木の一つに金棒を叩きつけた。雪をかぶっていたその大木は、『鬼の筋力』を用いた少女の片腕の腕力のみで根本から外れる。片手で、無造作に、金棒を振るって叩きつけただけで、ビシベキビシッッ!! と勢いよく大木は地上から外れて吹っ飛んでいった。

 根本から剥がれた故に、その側根付近には土や大地がこびりついている。

 その巨大な破壊の一撃は、容赦なく迫って来ていた武装集団に激突した。

 ゴバァアアアアアアアアアッッ!! と、鼓膜を突き破り、脳みそを真っ二つにするレベルの轟音が炸裂する。ビリビリとした感触がこめかみや耳の中でしばし蠢くほどの大破壊。さすがは鬼といったところだが、ただの人間代表・鉈内翔縁からしてみれば災害と認識できる事態だった。

 再び辺りが静寂に包まれたタイミングで、鉈内は恐る恐る鬼の背中に声をかけてみる。

「よ、世ノ華さぁーん? も、もう全部害虫駆除は終わりましたかぁー? 何かとばっちり来そうで怖いんですけど、もういつもの可愛い可愛いJK口調に戻ってますかー?」

「ええ。皆のアイドル世ノ華ちゃんよ」

「そ、そう。ああよかった、マジで君が切れると怖いわぁ」

 心底ほっとした鉈内は、ザクザクと雪を踏み歩きながら世ノ華と肩を並べる。

 そして大木が激突したことで出来上がっているクレーターに引きつった笑みを浮かべて、人差し指の先を向けながら、

「あ、あのさ、もしかして殺しちゃったわけ?」

「ふん。殺したら殺したでアンタがうるさそうだから、加減はしたわ。運が悪ければ死んでるでしょうけど……多分おそらくまぁ意外と大丈夫でしょ」

「後半のアバウトさにドン引きだよ。ま、まぁ加減したなら……ってあれで加減!? 何か周りの木とか雪とかめちゃくちゃに薙ぎ払って隕石落下地点的な現場のあれが加減した結果なわけ!?」

「なによ。かっこよすぎて惚れた?」

れたよ! ある意味掘れたよ!! もうれすぎちゃって抜け出せないレベルだよ!!」

「上手いこと言ってないで、さっさとあいつらの脈でも測ってきたら? お人好しなアンタのことだから、生死に関しちゃすごい意識してるんでしょ?」

「ま、まぁ……うん」

 スタスタと、思いのほか怖がることなく鉈内は早歩きでクレーターへ近づいた。自分たちを襲撃してきた奴らが散らばって転がっているが、全員の手首に指を添えると、世ノ華の言っていた加減が適切だということが理解できた。

 全員に脈はある。

 適度な威力が直撃したことによって、意識を沈めているだけだった。

「大丈夫そうだね、ちゃんと皆生きてるよ。慈愛の神様世ノ華ちゃんここに見参ってね」

「私は殺しても構わないけどね、まぁ、そこが私っていう『悪人』とただの人間のあんたとの価値観の違いでしょう」

 振り向いた鉈内に、世ノ華は自嘲するような笑みを浮かべる。

 己自身に対して呆れるように肩をすくめながら、

「私は悪よ。所詮は悪。だからこそ、結局のところ本質的には私は『殺人』っていう大罪さえも笑顔で背負える『悪人』なの。だから……案外、そいつらを殺さなかったことは良いベクトルに進んだかもしれないわね、私の人格形成的な問題で」

「……そうだね」

 確かに世ノ華雪花とは悪人だ。怪物に憑依された時点で、その者は絶対的に悪として完結している。だからこそ怪物が憑依し、呪いにかかってしまうので、やはり悪人として根は全員がドス黒いのである。

 それは世ノ華以外の悪人も同じ。

 故に、悪人ではない鉈内と世ノ華の価値観が交差することは永遠にないのである。

「ま、それよりもこいつらどうしよっか。目的は北極に行って異常現象の調査だけど、何か流れで怪しい奴らと遭遇しちゃったし」

「そうね。確かにそいつらについては悩む部分が多いわ。っていうか、一体、そいつら何のためにここで活動してたのかしらね。というか身分も素性も分からないし、正直面倒事オンパレードだわ」

 はぁ、とため息を吐いた世ノ華。

 同じく、今後はどのような方向性で行動するかを思案する鉈内。

 そんな二人の背後から、



「あら。まさか先を越されるとは予想外だったわね」



 聞き覚えのない声が響き、咄嗟に二人は振り向いた。

 そこには、雪を優しく踏み歩いてくる一人の背の高い女性の姿があった。長い金髪をポニーテールにしている、モデルのような体をしたヨーロッパ系の血が流れているだろう女。歳は二十代だろう。機能性に優れていそうな灰色のベンチコートで肌を守っている女性だった。

 彼女に対して怪訝そうな顔をする鉈内だったが、一方の世ノ華といえばジロリと敵対心まるだしの眼光を持って睨みつけ、

「あんた、誰よ」

 離れた場所で転がっている、先ほどの武装集団。奴らの仲間か何かだと予想を立てているのか、彼女は金棒を軽く握り直していた。

 だが。

 威圧されている女は微塵も気にすることなく、

「面倒くさい誤解が生まれているようね。まぁそれも仕方ないのだけれど、私としては一刻も早く危機的状況の突破を望んでいるの。だから落ち着いて話を聞きなさい」

「はぁ? ついさっき銃口向けてきた奴らをぶっ飛ばしたばかりなのよ。どう考えても、あんたは敵と認識するほうが自然だと思うわ」

「そこを考え直せと言っているのよ。敵ではないわ。どちらかと言えば、味方よ」

「……味方?」

「ええ。味方よ」

 眉を潜めた世ノ華と呆然としている鉈内に、表情を変えないまま綺麗な瞳を女は注ぎ、

「カナダに派遣されている、独立した『悪人祓い』のリーゼ・フロリアよ。あなた達を襲った武装集団が所属する巨大組織、『エンジェル』を長年追い続けてきた酔狂な女とでも思ってちょうだい」

 

新キャラ登場。黒崎燐ちゃんに続き『悪人祓い』の新キャラです。なにやらキーパーソンな感じのキャラですね

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