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軍勢と軍勢、交じ合うことがないはずの激突

 場所はロシア連邦の北東端。

 一面を雪に覆われた美しいロシアの山脈付近を、多種多様な人間が固まって歩いていた。文字通りの多種多様。東洋人から欧米人、ヨーロッパ系の血を受け継いでいるだろう者まで、性別年齢問わず百単位の規模の集まりだった。

 彼ら以外は人なんて誰もいない、白い自然の遥か奥深くは幻想的な風景を作っている。純白の山々、流れ落ちる氷も混じった滝、雪を被った木々の道。

 そんな険しくもあり美そのものを追求したような場所を歩く彼らだったが、ふと、ソプラノの声がダルそうに響いた。

「面倒くせぇ。これだから海外出張は御免なんだよ」

 つぶやきの発生源は。

 大軍勢の一番前を歩く小さな女の子だった。腰まで伸びたサラサラのブロンドヘアーに、推定身長140あるかどうか怪しい小学生のような見た目幼女。

 と。

「いくらじゃ?」

 もう一人、彼女と共に先頭を歩き軍勢を取り仕切っている冬用の和服に身を包んだ、こちらも推定身長140あるか不安の綺麗な黒髪を腰まで伸ばした見た目幼女。

 七色夕那とフラン・シャルエル。

 共に『悪人祓い』としての実力は右に出る者はいない伝説的存在の二人だった。

「あぁん? いくらって何が? 主語つけて喋れ和風ロリ」

「引退したも同然の儂をこうして今回の異常現象の解決に連れ出したお主が言うか洋風ロリ。もう『悪人祓い』なんてブラックな仕事やってない儂を、な・ん・で、連れ出したんじゃ。つまり『喧嘩売ってんだろテメェ上等だいくらだよ』、って意味の質問じゃ」

「ああ、ようは現状に不満ってわけか和風ロリ。これだから和風ロリはダメなんだよなぁー」

「そうじゃ不満なんじゃ。あともういっかい和風ロリって言ったら殺すぞ洋ロリ」

 フランは心底面倒くさそうにため息を吐く。七色の気持ちも分からないではない。彼女が過去に数々の依頼を遂行してきて、明らかに引退しても誰もが笑顔で拍手を送ってくれるような実績、人望、資格があることは分かっている。

 だからこそ。

 今回の大規模な呪いの現象に巻き込むことは、純粋にフランだって良しとしない。既に七色は己の部下でもないのだから、特別な強制力なんてものもない。だというのに七色はこうして付き合ってくれているのだから、彼女なりの人間性に救われたと言える。

 ただし。

 今回ばかりは、どうしても七色を巻き込まずにはいられない。

 なぜならば、

「北極の異常現象。ありゃやっぱ人為的なものだってことが判明した」

「……」

 静かに、それでいて黙々と二人は歩を進めながら現状を改めて確認する。

「しかも妙な話だよ。北極だけじゃなく、今じゃ世界各地で呪いの発動ポイントが散らばってる」

「『怪物探知機ジーウルスll』を使ってるのか」

「ああ、衛生をパクったやつだな。高度三千メートルまで浮かして、そっから半径五キロまでの地上で起こった『異常な力』を探知できるやつ。世界各地に分布されてるから、繋げ合わせれば世界そのものをある程度覗けるってわけだ」

「それで、その探知機の反応が『世界各地』に無数に発生してると?」

「ああ。マジで意思を持ってやらなきゃ無理な規模だ。だからどっかのクソ野郎が、愉快犯なのか革命家なのかは知らねえが、とにかく『何かをしてる』ことは間違いない」

「……で、それだけで儂を駆り出す理由にはならんと思うが?」

 尋ねた七色に対して、ようやく立ち止まったフランは失笑する。

 ジロリと、睨みつけるように前方にある『それ』を見て、

「んで、そこの下にあるのが、その世界中で発生してる呪い現象の中でも反応が『一番強かった』一つってわけだ」

 七色も思わず目を向けてみた。フランの視線の先を辿ると、そこは崖の真下だった。水力発電所のように円を描いた深い深い巨大な落とし穴のような場所。

 歩きよっていき、七色もフランも穴の下にある『それ』を覗いてみた。

「……なんじゃ、あれは」

 中にあったのは―――全長五十メートルほどの『砲』だった。いや、正確に言えば筒という形状をしているのだが、そのサイズが大きすぎるため一種の破壊兵器にも見えてしまう。まるでミサイルや破壊光線でも打ち出しそうな、円筒状のそれは黒光りする凶器らしさを漂わせている。

「さぁな。それを調べるためにも、鉈内は北極に直接向かわせて私達はこっちで調査作業ってわけ」

「じゃが、これだけじゃ儂なんぞ駆り出さんでも……」

 その通りだった。別に調査ということならば、七色を無理やり連れてくる必要はない。一人や二人の人員が増えたところで、所詮は一人か二人である。特に七色は調査作業どころか歩くだけでも疲労する運動不足気味なため、正直、彼女はいるだけでお荷物になるだろう。

 だが。

「いや」

 フラン・シャルエルは首を横に振った。

「そうでもないんだなぁーこれが。お前はいわゆる『戦力』だ。お前強いじゃん? だからさ、今回は戦闘隊員が必要だったんだよ」

「……? 戦力? なぜに?」

 首を傾げる七色に対して、フランはニタリと笑みを作り、



「戦争のためだよ。ほれ、あいつらが今回の事件の犯人って感じじゃん?」 



 再びフラン・シャルエルの認識している方向へ顔を動かす。

 大きな落とし穴を作るように、その外周に存在する崖淵。その、自分が立っている場所と巨大な穴を挟むようにある地には。

「七色夕那を加えた『夜明けの月光』か」

 スーツ姿で黒髪ショートヘアーの男がいた。七色もフラン・シャルエルも面識はないだろうが、男のほうは熟知しているらしい。彼は一人ではなく、フラン達とも渡り合えるほどに背中には百単位の仲間がいた。ゴツゴツとした特殊な防具服を着用した部下をまとめているように見える、リーダー的立場だろう。

 名は、知る者ならば知っている男。

 妖狐に憑かれた、悪を背負った、七色夕那の子供と殺し合ったことのある悪人。

「ふむ。これは予想外だ。まさか『デーモン』でもない、ただの無関係者共とこうして視線を交えるとはな」

 伊吹連。

 彼は『無関係者共』を見て、予想外の事態に眉根を寄せる。 

 

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