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生命体

 上岡真は指を鳴らした。

 弾きあった中指と親指の甲高い音が鼓膜を震わせる。

 直後に。

 ゴガッッッ!! という爆音が炸裂して、赤い人型の液体を粉々に吹き飛ばした。触れてなどいない。拳を握るわけでもない。ただただ、見て、笑って、指を鳴らしただけの結果。 

 内側から膨らみ、辺り一帯にビチャビチャと液体が飛び散る。

 まるでスライムのような化物だ。

 が、しかし、

「っ」

 大柴は息を飲んだ。

 再び、爆散したはずの赤い液体が一点に集まっていくからである。遠隔操作でも出来るスライムのような、不思議で気持ち悪い生き物だった。

 いや、そもそも生きている前提さえ崩れかけているような存在だ。

「上岡さん、全然効いてないですよ! マジで何かほらいろいろできるんでしょうあなた!? こうズガーンとデカイの一発やって終わしてくださいよ面倒くさい!!」

「いや、そうしたいのは山々なんですがね。僕としてもここは一般人が使う一般的な路上です。人里離れた場所とは言え、やっぱり破壊しすぎると『光の世界』に住むいろんな方々にご迷惑がかかるかと」

「ああもう!! じゃああれマジでどうすんですか!?」

「んー、っていうかあのスライム的な化物ですけど……どーっかで見たことあるような感じなんですよねー」

「知り合い!? 知り合いか、怪物フレンドかおい!!」

「いえいえそうじゃなくて。……どこかで見たことがあるような、ないような……」

 上岡はじっとスライム状の赤い液体化物を見つめてみる。先ほどの攻撃で粉々にしてやったはずの傷口は、既にどこにも存在していなかった。出血なんて一切ない。そして自由自在に体を変形させられるあの自由性の高い液状物体は、どこかで見た覚えがあるような……。

 しかしそこで。

「あ」

 大柴がハッとした声を鳴らした。

 上岡は軽く振り向き、

「どうしました?」

「……分かっちゃいました。あのキモイ液体の正体」

「え、聡明キャラもここまで来るともう何かうざいですね」

「知るか!! 分かって何が悪い!!」

 怒鳴り飛ばした大柴は、ビチャビチャと音を立てて再び人の形を作っていく赤い液状物体を睨むように見て、



「あれ。おそらくは豹栄さんの『超速再生』を切り取った化物ですよ」



 その答えにたどり着いた大柴の根拠とは、『エンジェル』の本部内で戦った『SMAW-絶対破壊replicaVersion』を担ぐ男の存在が大きい。あいつが使っていた肩撃ち式ロケットランチャー型兵器は、夜来初三が扱うサタンの魔力のレプリカを打ち出す代物。

 ならば。

 それの別バージョンとして―――豹栄真介の超速再生を同じような工程から創りだすことも、別に難しい話ではないはずだ。桜神雅という男の存在は『デーモン』内でもよく知られている危険な男だった。だから分かるが、あの男が『創造』する力を使って豹栄の超速再生を具現化し、それを生命体型兵器に改良することは……何ら難易度の高いことじゃない。

 故に。

 上岡の攻撃を何度受けようと傷一つ付くことなく『再生』するあの液状物体の正体は。

「豹栄さんの回復力だけを具現化した存在、ですね。おそらく」

「なるほど。確かにそれならばいろいろと納得できますね。さっきから粘土みたいに竜から液体へ、液体から人型へと姿を変えているあの現象も、おそらくは『再生』の応用でしょう」

「? 再生の応用で形を変えられるんですか?」

「ええ。だって再生というのは『作る』ことと同じです。塞いだ穴を塞ぐ行為。ならばもっと『深い』再生能力さえあれば、穴がない場所さえも自由自在に塞ぐことができる。つまりは、体全体を何度も何度も再生することで形を毎度毎度『作って』るんですよ」

「なるほど。……本当に粘土みたいなやつですね」

「ええ、粘土という存在に近いでしょうね。粘土だって、ちぎれた部分は粘土で塞げば再生します。ちぎれることがなくとも、好きなように形態変化できます。まさしく粘土という例えが適切ですね」

「いや、ちょっと待ってください」

 大柴の声が少々困惑気味になる。

 彼は額に手を当てて、考え込みながら、

「形を変えられていたことについては納得できましたけど……あの粘土モンスター、竜の形で俺らを襲撃してきたときに、『炎』を吐いてきましたよね? 豹栄さんの回復力を具現化したような粘土野郎なら、炎なんて出せないはずじゃ」

 確かに豹栄真介の能力とは翼と回復力だけだ。形を変化させることならば、回復力の応用という説明で納得できる。しかし炎は謎だ。豹栄の回復力のレプリカならば、形を変えるだけの本当に粘土のような存在で終わるはず……。

「大柴さん」

 そこで。

 上岡の笑顔が少々苦笑めいたものに変わる。まるで謝罪する子供のような顔。

「炎はきっと僕ですね」

「? なぜ?」

「『アモンの呪い』を、前回の一戦で使いました。獅子堂海谷さんと対峙したときです。敵さんが僕らの力を見て盗む泥棒ならば、間違いなく『火』を盗まれたのは僕ですね」

「……何か、スゲー納得できたのはいいんですけど」

「はい?」

 首を傾げた上岡。

 直後に。



 ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッ!! という風の刃が路上を派手に切り刻んだ。まるで上岡真の一部である『鎌鼬の呪い』のような殺傷能力が高い暴風が炸裂したのだ。



 幸いにも離れた場所にいた大柴は顔を両腕でかばっていた。そして、その大規模な破壊攻撃に飲み込まれた上岡の無事を祈りながら、

「今まであなたが使った『千の呪い』の内、敵に見られた『呪い』は全部襲いかかってくるんじゃないですか?」

 自分の刃が襲いかかってくる現実。

 その面倒くさい状況をようやく理解した『怪物人間』は、切れている頬から血を流して笑顔を咲かせた。

 

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