最強最悪のハイブリッド
絶対破壊、という文字が目に入っただけで息が止まる。先ほどの『瓦礫一つ残さずに全てを破壊した、黒い閃光』という現象から取っても、答えは明らかに浮上する。
「今まで夜来初三と戦った奴らいたろ? 祓魔師・由堂清、『悪人祓い』・ザクロ、天使の悪人・桜神雅、いろんな奴らがいた。んで、そいつら『夜来初三と戦闘を行った』やつには、全員にスゲー機械を取り付けてあったんだよ」
大柴はフラフラと立ち上がる。
そんな彼を嘲笑しながら、男は言った。
「衣服やら髪の毛の中やら、目にはコンタク型の夜来初三の魔力を分析したり質量を調べたりできる、サーモグラフィみたいな機械を取り付けてあった。ようは隠し取りみたいなもんだ。そこからゲットした情報は、全部ウチの技術開発班のPCにフルタイムで送信される。ようは、その機械が見てるモンをリアルタイムで観れるだけだ。そして夜来初三の魔力を詳しく分析。他にも夜来にぶっ殺された死体をかき集めて、『サタンの魔力で付けられた傷』を詳しく研究した」
男は息を吐いて、さらに続ける。
コツコツと肩に担いでいる筒状の兵器を拳で叩きながら、
「その結果、桜神雅っていうモノづくりの達人の力とか科学的な機材を埋め込み、ようやく完成させたのがコレってわけ。雅ちゃんも、さすがに『創造』でサタンの魔力の完全再現はできなかったらしい。あいつの能力はあくまで『想像力の具現化』だから、『全てを破壊する魔力』なんて完全には『想像』できなかった。だから『創造』できなかったんだろうよ。ま、結局スゲーことにゃ変わらんが」
「……」
「で、あとは分かるよな?」
嫌でも分かる。
あの絶対的な破壊攻撃を見れば察せる。
あの男が担いでいる物騒な武器は。
筒型のロケットランチャーのような形状をした兵器は、『絶対破壊』の元になっている『サタンの魔力』をほぼ完全再現した『サタンの魔力を撃ち出す大砲』だったのだ。
『SMAW-絶対破壊replicaVersion』。サタンの魔力をレーザーのように発射するランチャー。『SMAW』、というのは実際に存在する携帯型ロケットランチャーだ。肩撃ち式多目的強襲兵器で、肩撃ち式の多目的ロケット擲弾発射器である。軽便な支援兵器としてアメリカ海兵隊や中華民国海軍陸戦隊で使用されている。
(実際のロケットランチャーに、夜来の魔力をロケットの代わりとして詰め込んだようなモンか)
アメリカ海兵隊は、上陸・外征部隊という性格上から歩兵が十分な火力支援を得られない事が多い。そのため、歩兵部隊自身が携帯できる火力支援兵器を要求した結果、SMAW ロケットランチャーが支給されたのである。
そんな実際の科学的な発射機に非科学的な魔力を詰め合わせるとは……よほどの技術があったのだろう。桜神雅の『創造』も混合して完成したらしいのだから、科学と非科学のハイブリッド兵器といったところか。
「……まぁ」
どちらにせよ。
「結局、とにかく逃げるがな!!」
大柴のピンチに、変わりはない。
穴があいた左肩を押さえながら、全力の逃亡を開始した。




