―――『SMAW-絶対破壊replicaVersion』
「……これで全部か?」
首をかしげて周りに広がる死体を見渡したのは大柴亮だ。彼は『エンジェル』の本部二階の鎮圧を完了させた。もちろん全員の脳に鉛玉を埋め込んである故に、仕事へ支障をきたすような情けは持ち合わせていない。
長い廊下の中、彼の後ろには無残な死体がたくさん転がっていた。
「ま、なんとか生きてるな。速攻死亡とか笑えないオチにならなくてよかった」
大柴亮はただの人間。
しかし、それは『エンジェル』側だって同じようなものだ。怪物に憑依された悪人というものは、意図的に作り出せるものでもない。怪物と一心同体に誰も彼もがなれるわけではないのである。よって、『エンジェル』にも怪物の力を振るう化物共はゴロゴロとはいない。ほとんどがただの人間であり、研究員であったり、『悪人祓い』といった程度だ。
だから大柴はこの戦場で生きている。
殺されていない。
なぜなら、彼は悪人を狙ったりせずに、逃げ惑うただの人間共を冷静沈着に駆逐しているからだ。
(俺じゃ怪物の力を振るうアホの相手は無理だ。勝ち目はない。ならば戦わなければいいだけの話で、自分でも『殺せる獲物』だけを狩っていればいい。化物の相手はウチにいる三匹の化物で十分だ)
大柴は廊下を歩く。
長く広大な高級ホテルのような廊下を適当に歩き、適当な部屋や施設へ足を運び、視界に入った獲物へ引き金を引く。それだけの行動を彼はただただロボットのように実行していた。目に入ったウサギを確実に狩り、ライオンが出てきたら即座に退散する。
それが大柴なりの、この戦場の生き方。
故に彼は無情にリロードを行い、弾を補充して、ただただ歩みを止めなかった。
しかし。
ゴォッッ!! と、廊下を歩いていた大柴の目の前に漆黒の閃光が走った。
壁が粉々に砕け散って、その一撃が通った場所には瓦礫一つ残らない破壊跡が出来上がる。
「っ」
喉が干上がった彼は、思わず拳銃を構える。
あの攻撃は『ウサギ』ではない。明らかに『ライオン』だった。
故に、
(って構えてる場合か!? とっとと引き返せ!!)
つい条件反射で拳銃を構えていた大柴は、咄嗟に踵を返して駆け出そうとする。
が、そのタイミングと同時に、
(―――っな!?)
左の耳元で爆音が発生した。同時に左肩に焼けるような痛みが走る。痛いというよりは、重圧がかかったよう。鼓膜がギンギンと悲鳴を上げている中で広がる肩の激痛に、顔を歪めて地面へ倒れ込んだ。
呻きながら、ようやく肩へ目を向ける。
穴があいていた。
大きな、直径五センチメートルほどの小さい穴が肉と骨に空洞を作っていた。
(なん、だ……!! くそ、さっきので拳銃も手放しちまった!!)
離れたところで転がっている黒塗りの拳銃。もはや手が届くはずもない場所に落ちているそれは、ただの金属の塊にすぎなかった。
と、そこで足音が聞こえた。
「!?」
驚愕した。
足音がした背後へ顔を向けた大柴は、そこで目を見開いた。あれは『ライオン』ではない。あれは『ウサギ』でもない。故に予想外だった敵の正体に、脳の処理が追いつかなかった。
奇襲相手の男は、軽い調子で言う。
「すまんな。俺もこういう奇襲的なのはスゲー好きじゃないが、そっちから攻め込んできたしスゲーお互い様だぜ?」
「なんだ、そりゃ……! おいおい、さすがにふざけてるだろう」
「あ? ああ、これスゲーだろ。何でも、ウチの技術開発班が作った最新の兵器らしい。いやいやスゲーよな、応用ってこういうこというのかね。はは、ほんとちょースゲー」
男は肩にロケットランチャーのような形をした筒型の兵器を担いでいた。しかし問題はそこじゃない。大柴が目を疑ったのは、その筒型兵器に記されている『文字』だった。
おそらくは、筒型兵器の正式名称を表す言葉。
―――『SMAW-絶対破壊replicaVersion』。




