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計画の真相

 豹栄真介はダウンした。

 残るは夜来初三と霜上陸の二人だけである。屋上庭園の広大な敷地の中で視線を交差させている二人は、以前、どちらも大きなアクションは起こさない。

 いや、正確に言えば違う。

 霜上陸はアクションを起こさない。

 だが、夜来初三はアクションを起こせないのだ。あの豹栄真介を瞬殺した相手故に、いつものような調子で大暴れする気はさらさらない。

 まずは分析が必要だった。

(……怪物自体を操作? ふざけやがって。ンなもんマジならイカれてんだろうが!! 俺らは別に超能力者でも魔法使いでもなんでもねぇ。ただ自分テメェと似た怪物テメェの力を借りてるだけだ)

 つまり、と心で付け足して、

(あの野郎が怪物自体を操れるなら、そりゃもう俺らの力自体をあいつは操作できることになる)

「どしたー? ……あ、もしかして俺のこと知りたい感じ?」

「テメェの葬式の日取りは知りたいねぇ。きっちり友人代表で挨拶してやる」

「怖いなー。っていうかまだ死にたくないよ」

「黙れ。テメェらみてぇな世界征服企てるクソ集団に使う頭はねぇ」

「……あー、そうかそうか。お前知らないんだ」

「あ?」

「俺らの『計画』のこと、なんも分かってないんだなぁって話」

 適当に言って頭をガシガシとかく霜上。

 彼はそこで、一息吐いた。まるで話を切り替えたような行為だ。

「なぁ、夜来初三」

 霜上は少しばかり力がこもった声を鳴らし、会話の幕を切った。

「そろそろ教えるよ、お前にも。ぶっちゃけ俺は他の『エンジェル』の奴らみたいに格好いいポジション維持する気持ちもないから、『計画』なんて中二チックなセリフも嫌いだし、全部教えるよ」

「は? 俺をどうかして世界征服企んでる的なあれじゃねぇのかよ」

「違う。世界征服じゃない」

 霜上は夜来初三を指差した。たるんだ目から少しばかりの眼力が復活する。

 彼は『エンジェル』の企てている『計画』の全貌を一言で告げた。



「正確な言葉を選べば、『世界平和』が俺ら『エンジェル』の目的だよ」



 ピクリ、と夜来の眉が怪訝そうに動く。

 対して、霜上は一方的に続ける。

「夜来初三、お前とお前に憑いてる大悪魔サタンの力、『破壊』を利用して俺らは世界を破壊する。不純物だけを破壊して、綺麗な世界を作り上げることが目的だ」

「……意味わかんねぇ。とりあえずアホなのは分かった」

「ま、意味は確かにわからんよなぁ。俺も最初わかんなかったし」

 じゃあもっと詳しく解説するかぁ、と霜上は付け足して、

「お前とサタンの破壊って力。あれさぁ、何かスゲーことに活用できるらしいよ。例えば物理的破壊な? ビルだってコンクリートだって核シェルターだってお前らの『破壊』を使えば一発だ」

「で、それでどうやって世界を平和にできんだ。あぁ? 俺らの力はぶっ壊すだけだ。言っちまえば戦車や爆弾と変わらねぇよ。破壊って力で今まで人間はどれだけ世界を『壊してきた』よ。世界大戦だの全国統一だの、過去の歴史にゃ暴力って破壊を使って世の中を滅茶苦茶にしたアホ共がいんだろうが。その時点で、俺とあのクソ悪魔の力は世界平和に適用できるわけがねぇ。世界滅亡にゃ向くがな」

 その通りだった。

 人類の歴史では数多くの『破壊』がある。戦国時代では戦国大名が数々の暴力を振るって殺戮を繰り返した。世界大戦では爆弾やミサイルで国そのものを破壊し合う争いが起きた。

 これらは全て破壊の歴史。

 壊すことでは世界は平和にできない。それが事実だということは、人類の過去から表されるものになっている。

 だが、霜上は首を横に振った。

「いいや、できるさ」

 断言する。

 破壊を用いて世界を平和にできることを断言する。

「できるんだよ。確かに世の中には戦車とか爆弾とかミサイルとか拳銃とか、破壊することで悲劇を生む物騒な『破壊兵器』がある。でもな、お前らだけは違うんだよ」

「……」

「夜来初三と大悪魔サタンの『破壊』は『自由自在』だったよな?」

「だから何だ」

「それはつまり、魔力に触ったもんは何であろうと自由自在に破壊できる『破壊兵器』なんだよな?」

「だから何なんだよ」

 イラついた声で促すと、霜上は確信を持った笑みを浮かべた。

 そして、口を開き、

「だから出来るんだ。『触れた「存在」は全て破壊できる』からこそ、お前らの力は使える。ここまで言ってもまだわからないか?」

「……」

「お前は自分の力を理解してないみたいだな。今までお前は「何」を破壊できてた? よーく思い出せ。そして思考を柔軟にしてみて考えてみ?」

「……」

「分からないなら教えてやる。お前が『破壊できるもの』を教えてやる」

 薄々、気づいていたのかもしれない。夜来初三は悟ってはいたのだ。自分は何でも破壊できる。……そう、何でもだ。本当に何でも破壊できることは今までの戦いでわかりきっている。コンクリートだって破壊できるし、空気だって破壊できるし、『この世』そのものさえも桜神雅との激突で破壊できた。

 では、ここで問題。

 夜来初三が破壊できるものは、今まで破壊してきた『物理的破壊』だけだと誰が決めた?

 そう。夜来初三は全てを壊せる。

 例えそれが、



「殺人を犯そうとする『心』、争おうとする『心』、金欲を叶えるための非情な『心』、地位を欲しがる故の冷血な『心』、そういった『人間の心』が引き金となって今まで世界大戦だとか戦争は起きた。じゃあ聞くが、そういった『人間の邪悪な思考や考えさえも破壊できる破壊兵器』があれば、世の中はどうなると思う?」


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