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「上岡さん、来てたのなら声くらいかけてくださいよ。振り返った矢先にその笑顔があると、正直言って鳥肌ものです」

「いやいや、大柴さんが何やら熱中していらしたようなので、水を差すような真似は僕の性癖に反するかと思い」

「『性癖』に反する!?」

「ええ、性癖に反します。放置プレイに会話は無用です」

「俺って放置プレイしてたの!? 結構シリアスな感じで拳銃使いこなしてましたよね!! 勝手に俺をあなたの妄想ワールドに引きずり込まないでください!」

「じゃあ僕はこれからどうやって生きろと!?」

「アンタ性癖しか生きがいねえのかよ!」

 緊張感が台無しになった大柴は、もう上岡に捕まった時点で逃げれるものではないと納得し、射撃場を後にする。並んで上岡も歩き、すぐに大きな白い廊下へたどりついた。まるで大きな研究所のような廊下であるため、二人で歩くには少々殺風景だった。

「それで、上岡さん。『エンジェル』の本部は具体的に見つかったんですか?」

 大柴が視線を真横にいる上司に向けて、直球に尋ねる。

 すると上岡は顎に指先を当てて唸るように首をひねり、

「ええまあ、一つは絞り込めました。部隊を幾つかを由堂さんの証言に従った場所へ送り込ませましたが、それらしき大型洋風建築物が人里離れた場所にあったそうです。いやいや手間がかかりましたよ、おかげでムラムラしてます。男でもいけそうですよホント」

「俺はノーマルですから他をどうぞ」

「んー、じゃあ夜来さんとか狙いたいなぁ」

「……殺されますよ? 夜来のケツを掘る前にあなたの墓を掘るハメになりそうでは」

「はは、甘い甘い甘いですよ大柴シュガー」

「勝手に人を砂糖にしないでください」

「夜来さんみたいなツンデレこそ、ホモ奈落に突き落とす快感はたまらないんです。きっとホモに覚醒した夜来さんなら、『さ、さっさと抱けよ……殺すぞ』とか顔を赤くしてモジモジしながら誘ってくるんですよ、ここまで可愛い殺すぞはなかなか無いで―――」

「キモイキモイキモイキモイキモイ夜来がホモとかキモイからキモくてキモイだけだからぁぁあああああ!!」

 思わず両腕で自分を抱きながら悲鳴を上げる大柴。確かに想像したら吐き気を催すような話ではあった。顔を青ざめている大柴の姿に、上岡は腹を抱えてイタズラが成功したような笑い声を上げる。

「はははははは! お、大柴さん本気にしすぎですよぉ。凄いリアクションですね、っていうか僕は『まだ』そこまでの調教術は持ってません。健全なるホモは健全なる精神と健全なる肉体にこそ眠ってるんですよ」

「ホモに健全もくそもないでしょ!! っていう『まだ』って言った!? まだってことは可能性はあるってことですか!?」

「ええ、『バイセクシャル育成教育プログラム』までは完成してますよ。あ、貸しましょうか?」

「絶対いらないです!」


 

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