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連絡がなくなった

 十一月二十九日。

 時は秋だった。桜が舞い散る暖かい春が過ぎ去り、暑苦しい夏がようやく幕を下ろし、現在は紅葉が輝く過ごしやすい秋へと変わっている。時の流れは早いものだ。特に夜来初三という少年にとっては、いろいろな意味で今年は時間を忘れる毎日だった。

「……ふん。リア充だらけで胸糞悪いな。全員ぶっ殺しちまおうか」

 吐き捨てた夜来が歩いているのは商店街。

 天山市の都市付近ということで、比較的都会側のせいか、周りには思わずカツアゲしたくなる(これは夜来初三限定の嫉妬行動)微笑ましいカップルが群がっていた。

 歩を進めながら、日傘を左手にコンビニ袋を右手にぶら下げている夜来初三はケッと吐き捨てる。

「どいつもこいつも大したムカつきぶりだ。ハッ、どうせあそこのカップルだって、女はデケー凶器ぶら下げた野郎にゃ股ァ開くクソアバズレで、男は穴がありゃ腰ィ振る犬畜生だろうがよ。くっだらねぇ、クソくだらねぇ。何でどいつもこいつも心に決めたヤツと結婚してから初めてを捨てないんだ。どんだけ性欲に駆られてんだよ、アホくさいゴミ共が」

 どうやら恋愛に関しては滅茶苦茶一途だった夜来初三。彼は結婚というものを大前提として大人の階段を登る少年だったようだ。見た目に似合わず、実は凄まじく貞操観念が固いようである(周りのカップルに対する偏見はマイナスポイントだったが)。

「……そういや」

 ふと、あの少女のことを思い出した夜来初三。

 彼は日傘を耳と肩で挟みながら空いた左手で携帯電話を取り出す。画面を開いてメールの履歴を見てみるが、やはりあの少女からの連絡はない。

「あの白女しろおんな、俺から連絡切るたぁいい度胸じゃねぇかよ。マジで何やってんだか……秋風にでもやられたか?」

 白女、とは夜来初三と深く関わりのある少女、雪白千蘭というアルビノの美少女のことである。つい最近になってから連絡が向こうから途切れてしまい、今ではメールや着信は一切こない。

 夜来はため息を落としてから携帯電話をしまい、日傘を持ち直して気を取り直す。

「ったく。無駄な気ィ遣わせやがって……」 

 彼はコンビニ袋を片手に商店街を抜けて、住宅街をとおりすぎ、ごくごく普通のマンションへ向かっていた。もちろん彼の住むマンションとは『デーモン』の管理する寮的なもの。懐かしい家族達の顔はない。

 だがしかし。

 階段を登って廊下を歩き、自室の前に立って玄関のきしむドアを開ける。そうして部屋に入り、きちんと扉を占めて施錠を確認し、視線を部屋へ上げてみると、



 なんか裸エプロンをした見た目小学生の銀髪幼女が、グラビアモデルみたいなポーズを取って出迎えていやがった。



「お帰りなさーい、こ・ぞ・う♪ サタンにする? 銀髪ロリにする? それともぉ、わ・が・は・い?」

「全部テメェじゃねぇかァァああああああああああああッッ!!」

 選択肢になっていない選択肢にキレた夜来は、未だに色気ゼロのポーズを取っているサタンにズンズンと近づいて、ガシィッ!! と片手でアホ悪魔の柔らかい頬を鷲掴みした。

 タコみたいな口になったサタンは、思わず抗議の声をあげる。

「はひぃするんらこほう?」

「本気の本気で本気の言葉を投げかけてやる。―――ブチ殺すぞゴラァ!!」

「SMプレイか!? おっしゃドンドンこい! ローション2リットルでイケルかな!?」

「何でそこは綺麗に口ィ回ってんだよ!? っつか2リットルとかどんだけヤベェことすんだよ、死ねアホが!!」

 もう呆れて何も言えなくなった夜来は、大人しくサタンの頬を解放してやった。すると自由の身になったサタンは夜来の持っているコンビニ袋を奪い取って、トコトコとリビングへ向かっていく。

「せーのぉ―――せいっ!」

 サタンは掛け声と同時に、テーブルの上で袋を逆さまにする。必然的に袋に詰まってたものは重力に従うので、滝のようにコンビニで仕入れた食品が溢れ落ちていった。

 テーブルに広がった数々の弁当、お菓子、飲料水、携帯食料の中から、サタンは銀色の目をキラキラと輝かせてお目当ての品を手にとった。

「わ~い!! ハンバーガーだハンバーガーだぁ!! 小僧大好き愛してる!!」

 サタンはゲットしたハンバーガーの包装をビリビリと剥がし、素早い動きでモグモグと咀嚼する。大好物のハンバーガー。お気に入りのファーストフード。しかしサタンは好物の味に笑顔を咲かせるのではなく、なぜか不満たっぷりのしかめっ面へなった。

 離れた場所のベッドで寝ている夜来初三の背中に、座ったまま声をぶつける。

「小ォォォ僧ォォォォォ!! 何だこりゃどういう了見だこれは!! 何でこんなまずいんだ!? 万物超越絶対食・ハンバーガーが何でこんな雑なんだ!? おいこれどういうことだ小僧!! どこのコンビニだハンバーガーを汚したクズは、ローゾンか!? ゼブンか!? ファミダか!?  どこのコンビニだぶっ殺してやるよゴラァ!!」

「うるせぇ!! 大体コンビニなんぞで売ってるハンバーガーが専門店のファーストフード店と同等の味ィ出せるわけねぇだろうが! まずいんじゃなくてテメェが食ってるビッグマックが特段旨いだけだ。文句言ってんじゃねぇ。食って、寝て、永眠してろアホが!!」

「じゃあ何でコンビニなんて行ったんだよ!! 我輩は旨いハンバーガーしか食べないのー!! マジでこんなウンコハンバーガー食ったらテンション下がって鬱になるー!!」

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