スタート地点へ逆戻り
「っ!?」
身をすくめた時には既に遅い。
フラン・シャルエルは懐から御札を取り出す。直後にそれはフェンシングのような細い長剣へ変わり、獲物を喰らいたがるような輝きを見せる。
ただそれだけの武器を片手に。
フラン・シャルエルは猛烈な速度で駆け出してきた。
「く、くそ!! 来るな、来るなァァああああああああああああ!!」
半狂乱気味になって、白咲黒乃は御札をばらまき『対怪物用戦闘術』で迎え撃つ。輝いた無数の御札は円筒状の形を空中で作っていき、中心の穴から膨大な閃光が発射された。
まるでSF映画に出てきそうな破壊光線。
それは空気そのものを消し潰していきながら、地面を削り砕いて、無慈悲にもフラン・シャルエルの小さな体へ直撃した。
だが、
「っ……!? は、は……!?」
現実が受け止めきれないという調子で、白咲は声を上げていた。彼女が凝視しているのは、光線が激突したというのに、その光線自体を剣先で押し返しているフラン・シャルエルだった。
おかしい。
ありえない。
ただ怪物に対応する剣一つで、あれだけの威力を秘めた一撃を笑顔のまま受け止めている。所詮はただの人間に過ぎないというのに、あれでは怪物に憑依されている悪人と大差ないではないか。
そんなことを思っていた束の間。
膨大な規模を誇る光線が、徐々に左右へ分裂していく。いや、フラン・シャルエルが剣先で突き刺し、そのまま全速力で駆け抜けていることで、必然的に光線は彼女の手によって『斬り捨てられている』のだ。
「前もって謝罪申し上げるが、こっからは蹂躙ショーの時間だぜェ。クッソ野郎がァァああああああああああああッッ!!!!!」
ズバァッッ!! と轟音が炸裂する。
正体は、『対怪物用戦闘術』の破壊光線をレイピアのような剣一つで『切断』したフラン・シャルエルが、完全完璧に光線自体を突破してしまったのだ。真っ二つに切断してしまったからだ。
驚愕の現象。
気づけば白咲黒乃の目の前に、洋風の幼い顔があった。
「薄汚ェ化粧だな。剥がしてやるよメス豚がァ!!」
「―――が!?」
バゴン!! とレイピアのような長剣の腹が白咲の顔面に直撃した。横振りの一撃だった。外見の幼さからは想像もつかない威力を宿した衝撃によって、白咲は鼻や口をぶち壊された感触を聞きながら意識を落とす。
そして、凄まじい速度でスクランブル交差点まで転がっていき、結局はスタート地点へ戻されてしまった。
「ふん」
フラン・シャルエルは鼻を鳴らす。
「くだらねえな。アサヒちゃんの仇討ちに足を運んだ結果がこの程度の雑兵かよ。チッ。あーあ、何か呆気ない。帰って黒崎を鬱にして暇ァ潰すか」
そして踵を返し、イライラも多少は収まったので用はない故に立ち去っていく。彼女は握っていたレイピア式の愛刀を御札へ戻して、ラフな格好に戻り、静かにスクランブル交差点から姿を消した。
またまた最強キャラが増えてしまった・・・・・何か最強のレベルが分らなくなってくる(笑)




