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本道詩織

 本道詩織とは生まれつき体が病弱だった。喘息などの持病も持ち合わせていて、とてもじゃないが運動なんてした記憶がない。さらには消極的な女の子で、いつもいつも家にこもるばかりの脆い子供だったのだ。

 では、家で人生の大半を過ごした彼女の相手は誰がしたか?

 それが、本道賢一という兄だった。

 彼とは年が離れていたため、よく兄妹ではなく親子と間違われることがあったものだ。詩織のことは両親もほとんど見捨てていて、もはや救いは兄ただ一人だった。詩織が十五歳になる頃には兄の本道賢一は成人していたため、本道賢一も妹を見捨てた両親に腹が立ち絶縁宣言をして詩織と共に家を出た。

 両親は、詩織に疲れてしまっていたのだ。

 学校にだってまともに行けないほど病弱で、その影響なのか精神的にも酷く弱い。よって関わること自体に嫌気がさし、ほとんど同居人としか詩織を扱ってこなかった。

 この家庭状態を見かねたのが本道賢一だった。

 彼は、ある晩に両親とリビングで言い争いをしていた。十五歳だった詩織は、そっとその光景を覗いていたのだが、どうやら話題は詩織の将来についてらしい。

 両親は、どちらも『詩織の面倒は無理だ。施設に預けよう。あいつのことは、もう無理だ』と断言していた。確かに詩織も納得せざるを得ない。自分という子供一人に、どれだけの迷惑が家族にかかっているのかは分かっていた。

 だが。

 兄の本道賢一は、こう言ったのだ。



『親が自分の子供を見捨てる時点で、そいつはもう親じゃない。だから俺があいつを引き取る。あんた達が見捨てるっていうなら、俺があいつの親になる』。



 そうして、本道賢一と本道詩織は家を出て二人暮らしを始めた。兄の賢一が成人していたおかげで、親のハンコや承諾が必要だなんて不便なことはなかった。アパートに住み、賢一に育ててもらうことになった詩織は両親のいない生活に開放感すら感じていた。

 頑張ろう、と思った。

 どれだけ弱くても、どれだけ病弱でも、兄の本道賢一だけは見捨てない。ならば、彼にいつか恩返しを出来るように努力しよう。

 兄と始めた生活は、詩織の心をも良いベクトルへ変換させたのだ。

 が、そんな日々が始まった矢先に、悪い知らせが入った。両親が死んだらしい。しばらく顔を合わせていなかった両親が、どうやら事故に遭って他界したらしい。

 このとき、本道賢一は涙を流していた。

 連絡が入った時も、葬式の際も、両親が帰らぬ人となった現実に涙を流していた。

 しかし。

 だがしかし。



 本道詩織だけは、泣けなかった。



 親が死んだのに、兄は悲しんでるのに、なぜか微塵も悲しいとは思えなかったのだ。葬式の時も親戚に挨拶をしたときも、ずっとずっと兄の服を掴んだままひっついて、『退屈だな』と感じていた。親の葬式をどうでもいいことだと思っていたのだ。

 なぜなら。

 理由は単純で、自分のことを施設にやって見捨てようとした両親には何の愛情も抱いてなかったからだ。好きなのは兄だけ。家族なのは兄だけ。自分の親は兄で、兄は兄で、家族は兄だけだったのだ。詩織の中では、兄の本道賢一だけが家族だったのだ。

 だから彼女は、親が死んで嬉しかった。

 これで家族もどきはいない。

 これで兄という家族二人になった。

 これこそが、詩織と親の間にあった絆。ただこれだけの絆とは呼べない、何か。

 が、そんな詩織に事件が起こる。

 ある日、気づいたら右腕に禍々しいタトゥーのような紋様が浮き出ていたのだ。すなわち『呪い』という怪物が憑依した現象。当然初めはわけも分からず右往左往していたのだが、ある日、本道賢一が『エンジェル』という組織に加入したのだ。

 彼が言うには、『エンジェル』は『呪い』について研究している組織でもあるため、詩織を謎の現象・呪いから救うにはモッテコイの組織だと。

 その結果。

 詩織の憑いた怪物は、小さな妖怪だったそう。

『エンジェル』の中に『悪人祓い』という怪物を祓える人間がいるため、詩織の呪いはすぐに解けた。これで既に『エンジェル』に協力する必要はないのだが、兄の賢一は詩織がまた同じ被害に遭わないために引き続き『エンジェル』としての活動を開始した。

 その最中。


 

 夜来初三という男の手で、詩織の兄・本道賢一は殺害されたのだ。


 

 そうして、詩織は『また』呪いにかかった。唯一の家族だった兄を殺されて、復讐心という悪に飲み込まれたのである。その結果、詩織に憑いた怪物とは女神・エリーニュス。

『エリーニュスの呪い』である。

 エリーニュスは、ギリシア神話に登場する復讐の女神たちである。複数形でエリーニュエス。日本語では長母音を省略してエリニュス、エリニュエスとも呼ぶ。

 古くは数が不定で、多数からなる女神であったと考えられるが、後代の神話では、アレークトー(止まない者)、ティーシポネー(殺戮の復讐者)、メガイラ(嫉妬する者)の三神に整理された。親殺しや偽誓の罪に対する「復讐の女神」として知られる。神話上の系譜ではティーターンに属し、オリュムポスの神々とは異なる祭祀を受けた。

 復讐という悪が共通し、彼女はまた呪いにかかった。

 夜来初三に復讐するまでは、永遠に解けない怪物と共に悪人へ成り果てた。

 ちなみに。

 詩織は両親が死んで泣かなかった、という過去があったはずだ。理由は両親を家族とは思ってなかったから。自分を捨てようとした奴らが死んでも、なんとも思わなかったから。

 だが。

 兄の本道賢一の無残な死体を見たとき。

 詩織はようやく、



 家族の死に、涙を流したのだ。


 

 だからこそ、兄だけは特別だったからこそ、兄だけは家族だったからこそ、彼女の復讐心は膨大だ。絶対に、家族あにを殺した夜来初三を絶望させる。そのためにも、彼には自分と同じ目にまずは遭ってもらわなければならない。

 彼の身内を皆殺しにして、絶望の果てに突き落とすのだ。


 

 


 


・・・・ゴリラ、本当に殺さなければ良かった 何か、殺してしまった自分に嫌気がすごい・・・・・・ゴリラ、いいやつだったんだ!! くそ! ゴリラ妹も可哀想すぎるだろ!! ・・という感じで、本道詩織の過去については分かりましたね。彼女は、特にあのゴリラは、すんごく良いやつだったんですね・・・こんな兄貴・姉貴は欲しいな(笑)  

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