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それだけのメールで

 大切な存在を奪われた悪人がいた。その悪人は自分を救ってくれた、守ってくれた、助けてくれた、そんな悪人が大好きだった。これからも助け合って、一緒に道を歩んでいこうと本気で思っていた。

 片方が折れたら、もう片方が支えればいい。

 そういう覚悟さえも、決めていたということである。 

 だからこそ悪が生まれた。

 お互いが好きあっているからこそ、グチャグチャの禍々しい悪が芽生えた。大切だったらこそ、奪われることで悪は芽生えた。怒りは黒く染めあがり、全ての思考が切り替わる。

 これは、悪人に大切な存在を奪われて壊れ果てる悪人のお話。

 その壊れ方、狂い方、暴れ方。

 悪人を失った悪人の全てを描いた悪人話だ。

 

   




 


「……ねぇ」

「ん? 何だ、どうしたパツキン女。もしかして金髪の影響でハゲたか? はは、気にするな。今の時代なら男女問わずハゲになる場合が多い。気にしないで植毛でもしたらどうだ?」

「アンタの白髪ァぶっこ抜いて『おおきなかぶ』の実演は後回しね。さっきから気になってたけど―――今のアンタってキモイわ」

「はは、血の気が多いんだなぁ元ヤンは。ダメだぞ、仲良くしようじゃないか」

「そこがキモイっつってんのよ。さっきからニヤニヤしながら携帯いじってて、前とは一変しすぎてキモいわ。元気すぎてキモいわ、あと私と仲良くしたいのか喧嘩したいのか分からない態度は直せ」

 世ノ華雪花は雪白千蘭の自宅へ訪れていた。場所はリビング。テーブルをはさんで対面に座っている雪白の顔が、先程から緩みすぎていてドン引きしていたのだ。というのも、世ノ華が知らない場所で雪白が活気を取り戻す出来事が発生したのだから仕方ない。雪白のニヤニヤ顔は持っている携帯画面に向けられていて―――正確には先程届いたメール文に向けられている。

 世ノ華は眉を潜めて、テーブルに置いてあったお茶が入っているコップを口に運びながら尋ねる。

「で、なにがあってそんなキモイ顔になるのよ。前みたいに『人生詰んだオワタ』みたいな顔してたアンタのほうが、よっぽど見てて滑稽だったんだけど」

「ふふ、何だそうか。お前のところには何も連絡がないのか」

「は? 何よ一体、用事でもあ―――そのニヤニヤ顔やめろよコラ。マジでぶっ殺すぞ」

 もはや見ていてイライラするほど笑顔になっている雪白に、思わず『素』が漏れてしまった世ノ華。ドスの効いた声には男ですら身を竦めるレベルだが、彼女の素に慣れている雪白にはまったく通じない。

 雪白は携帯を軽く振りながら、

「今度、夜来が暇になったら私に顔を見せてくれるらしいんだ。ようやく、こうして連絡を取り合えるようになった」

「ぶふっ!? あ、ああああああああアンタ、にに兄様とメールしてたっていうの!?」

「ああ、『あの時』からきちんと連絡をくれるようになった。これでもう安心だ。あいつが『何をしている』かは聞いてないから、こちらから会うのも無理がある。しばらくは会えないらしいが、メールという手段を用いれば、これで一緒にいるも同然。はは、見たか? 私はおかげで肌もスベスベになったぞ」

「アンタが上機嫌なのはそれが原因かよ!! っつか、私をほったらかしにして何堂々と余裕ぶっこいてメール眺めてんだよ、あぁ!? そんなに嬉し恥ずかしの内容だってかァ!? 見せやがれコラァ!!」

 テーブルを叩き壊す勢いで身を乗り出した世ノ華は、雪白の持っていた携帯電話を容赦なくブン取る。すぐにゲットした兄様からのメール文(雪白がずっと読み返すほどの大宝石級の内容だろう)を読み上げた。

 しかし、その内容が、

「『暇になったら顔を見せる』……これだけ?」

「ふふ、そうだ。ツンデレで可愛いやつだろう?」

「アンタは約10文字の文をひたすらに読み返してニヤけてたのか!? 出来立て彼氏から送られたイチャイチャメール文的なものじゃない、質素で兄様らしい淡白なメール文にそこまでニヤニヤできんのか?!」

「? 悪いか?」

「れ、レベル高すぎだろうが……!! 根本的に病的な愛は変わってない証拠じゃんかよ、くそ! 私じゃ絶対『ああん、そんな言葉じゃあ寂しいです。兄様のエッチな画像を送ってください』とか何とか我慢できずに返しちまうぞォおい! うああああああああああああああ!! 何か自分が恥ずかしいぃぃいいいいいいいい!!」

 たった十文字程度のメール文に満足してしまう雪白とは真逆で、世ノ華は一度スイッチが入ると天を貫くクセがあるようだ。この場合、世ノ華のほうが面倒くさい女になりえる候補なのだろう。積極的を超えている故に、彼氏から引かれるような女なのかもしれない。

「っていうか、兄様と会ったなら私に言えよゴラァ!! ああん!? オマエだけイイ思いしてイイおかずにしてんだろ!? ふざけんなババァ!!」

「そういう下品さが全て台無しだな。まあ、これでもアイツの自称妹だし仕方ない。許してやるから感謝しろ」

「オマエまじでなめてんだろ!! 兄様を出せ!! 早く兄様と喋らせろ兄様の声を聞かせろ!! そうして私のおかずを出せくそがァ!!」

「あ、ちょ、そんな強く握るな携帯壊れるだろうが!!」

 世ノ華に奪われた携帯を取り返そうと、突っかかっていった雪白。おかでギャーギャーと騒ぎ始めた二人だったが、どうやら、以前のように暗い雰囲気は一切皆無のようで何よりだった。




新章スタートです、これからもお付き合いよろしくお願いします。ない頭を使って考えた結果、ようやくストーリーの大まかな全体像が見えました。お待たせしてしまい、申し訳ありません!



出だしは雪白ちゃんと世ノ華ちゃんですね。おそらく、誰もが雪白のことを読んで『ヤクザと大人しく離れたのはそういうことか』と納得してくださったかと思います! いや、ヤクザは質素ですがメールを贈るようになってくれて、雪白ちゃん的には大満足みたいですね(笑) 世ノ華は兄様成分が枯渇していて、もう、何かぶっ飛んでます(笑)



次回から、徐々にストーリーを展開させていく予定です。どうか、これからもお目を通していただける幸いです!





今回はあんまり血みどろにはしたくないですね(前回がアレだったんで)書いてるうちに誰か死んでなければいいが……(笑)

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