闇の戦いは開幕したばかり
夜来初三、大柴亮、豹栄真介、上岡真の四人は『デーモン』の地下施設へ集まっていた。こうして、今日もまた彼ら四人は裏で行動を始めている。場所は施設の休憩室だ。自動販売機やベンチが並んだ、観葉植物も飾ってある部屋である。
今回はかなり重要な案件だったようだ。
上岡真を中心に、残る三人はそれぞれがバラバラになって耳を傾けていた。夜来初三はベンチにサタンを膝に乗せて座っていて、豹栄真介は壁に寄りかかっていて、大柴亮だけは上岡から少し離れた場所に立っている。
「じゃ、早速朗報をお伝えしようと思います」
「朗報ですか?」
豹栄真介が、いつにも増してニコニコ笑顔の上岡を眺めて尋ねた。
「ええ、『エンジェル』の本部が分かっちゃいましたよ。これでこちらもガンガン攻め込めます。向こうさんをアヘらせるのも夢じゃないですよ、愛撫から始まる調教ショーの開幕です! つまりジーザス!」
「へーそうですか。じゃあ早速お願いします、はは」
もはや相手にするのも億劫なようで、豹栄はさらりとスルーする。すると上岡は懐から紙とペンを取り出して、机の上でスラスラと何かを書き始めた。
文ではない。
絵……いや、図のようだった。まるでピラミッドのように並んだ組織図を、下から順に説明していく。
「これが『エンジェル』の全体像ですね。下部組織が約五百。それを束ねる四天王的な組織が十。最後に本部が『二つ』あります」
「二つ、ですか?」
「ええ、厄介なことにそうなんです。何でも、『エンジェル』の親玉は保険のために二つ、根城を作ったみたいですね。定期的に二つの本部を行き来しているので、『どちらか』に親玉はいるんですよ。つまりカケですね、攻め込むにしても、ハズレならばボスの首を取れない」
大柴の質問に答えて、上岡は続ける。
「もちろん、二つ本部があるのならば分担してどちらも一斉に潰すのもアリかと思ったんですが……それはやめましょう」
「あぁ? 何でだよ」
疑問の声を上げたのは夜来初三だ。サタンが膝の上に乗ってリラックスしているので、禍々しい紋様は顔にはない。だからなのか、彼はあの少女から貰ったヘアピンを右目が見えるように付けていた。気に入っているのかどうかは定かではないが、おかげで悪人面が一層ぎらついているようにも感じる。
「今回の戦いで分かったはずです。『エンジェル』の戦力は半端じゃないです。僕ら『デーモン』の戦力は、ハッキリ言ってここにいる四人だと思ってください。他はズバットいうと役に立ちません」
そこで、何やら自分まで戦力に含まれていることに不満そうな大柴は、ゴホンと咳払いしてから言う。
「で、これからどうするんですか。向こうの根城も、こちらの根城も知れた今、もはや隠れてコソコソするのも無意味ですよね。真っ向から殺しに行きますか? それとも殺しにかかってくるのを殺し返しますか?」
「そこは考えてますよ。これから徐々に方向性を固めていきましょう」
上岡真はそう言って『エンジェル』の組織図が書かれた紙の一番上―――『本部』と書かれた場所を人差し指でトントンと叩く。
彼の笑顔から、ドロリと殺意が溢れ漏れた。
その空気が変わったことを察知し、他の三人は上司へ視線を集中させる。
「早ければ、残り二回で『エンジェル』を叩けます。もちろん、そうトントン拍子でことが進むとは考えにくいですが、これからも僕たちの行動方針は変わりません」
静寂が流れた中で、上岡は笑顔のまま宣言した。
自分たち闇の存在と動き方を簡潔に纏めて告げた。
「『悪を持って悪を制す』。これからも悪は悪らしく悪殺しに励みましょう」
その言葉には誰もが同意する。
彼ら『デーモン』・『特攻殲滅部隊』は、闇に暗躍しながら再び殲滅活動を開始する。
悪を貫いた先の悪。
悪を貫いた先にあったのは、全てを壊して悲劇を起こす絶望ただ一つ。故に少年は悪ではなく『本物の悪』を貫く決意を固められたきっかけでもあった。
悪とは悲劇しか産まなかった。
ただ壊して敵も味方も誰も彼もを傷つけて、壊して、殺すことに特化した姿だった。もはや悪というよりは殺戮本能に従順な獣。その存在価値が一体なんなのか理解すら出来ない化物を表す言葉が―――悪だった。
だから、少年は『本物』を貫くことにした。
ただの悪にはならない。悪は悪でも自分が思う最高で最悪な本物を極めることこそが、少年の新たな主柱になったのだ。
悪を貫けば絶望が待っている―――これが極論なのだろう。
しかし。
『本物の悪』を貫いた先は、一体どういう結末が待っているかは分からない。
『悪を貫いた先の悪』―――ここまで読了してくださった方々、本当にありがとうございます! 一話から一気読みしてくださった方、更新を待って読んでくださった方、読者様全員に、まずはここまで連載させて頂いた感謝から始めたいと思いました。
後書き、ですけども―――せっかくですので今作の主人公二人について比較するように分析してみたいと思います。前回は善人主人公回で今回は悪人主人公回でしたし、いい機会ですよね(笑)
鉈内翔縁について。
彼はどこまでも『夜来初三とは正反対』を意識したキャラクターです。まず一番最初に夜来初三とは真逆だった場面は『秋羽伊那を蹂躙している夜来初三を止めた』場面でした。やりすぎだ、と言って掴みかかったシーンです。
他にも、前回やった『怨念に染まる悪』~『悪を生んだ悪』などでは『一切の死人』も生み出しませんでした。夜来初三は今回で何人も殺しているのに、鉈内だけは今までで『一度も敵を殺してない』です。
もちろん、殺人はしてはいけない所業なので当然ですけども、そういった細かい部分が悪人主人公とは真逆でした。性格面も逆ですが、何より彼を善人に見せるにはどうすればいいかな、と思った私は反転させたんです。
夜来初三という悪人主人公をまず最初に書いて、その後に『悪人』と認識されている夜来初三とは『逆』のことをさせれば鉈内翔縁は善人主人公と『強く』見られるのではないか? 残虐非道な悪人主人公を反転させたようなキャラにすれば、善人という設定が増すんじゃないか?
そう考えて作り出したのが鉈内翔縁です。『感謝している悪』で七色を殺されかけたことでブチギレても、結局、彼は相手を殺せなかった。
善人気取り、などと伊吹などからは評価されていましたが、それは悪をテーマにした今作のせいですね(笑) 私からしたら彼はきっと善人ですよ(笑)
それが。
善人主人公・鉈内翔縁を構築しているものですね。夜来初三と真逆、を常に意識させて作った思い入れのある主人公です。
夜来初三について。
彼はとにかく『悪』を求めたダークヒーローですね。善悪を意識するのではなく、もとから悪のみを視野に入れてます。性格は残虐非道。嗜虐的で狂気的。凶悪的で獰猛的。敵は必ずと言っていいほど、躊躇いなく殺します。しかし彼は日常パートでは『大人しく』なるんですよね、性格面が。今回の章のように凶悪っぷりが全開の化物のくせして、日常パートをみれば分かりますが『日常じゃ普通』なんです。ツンデレ気質なだけで、雪白達と過ごしているときは非常に『ただの少年』なんです。
そこが、彼の狂気を強く描写してるのかと思います。
雪白達とは普通に過ごして会話してはしゃぐ――――戦闘になったら爆笑しながら敵をグチャグチャに蹂躙する。その『ギャップ』が、彼が『おかしい』・『狂ってる』と思える一つの原因だと思います。
だがしかし。
最後に、雪白に抱きしめられた時には『寂しく』て泣いていた……ここが彼を主人公という立場におけるポイントです。夜来初三は『寂しく』て『泣く』ほどの思いを雪白千蘭に『特に』抱いている。
……あれだけ狂い果てながら敵をぶっ殺していた化物が、『寂しく』て泣いた。まるで『ただの子供』のような『寂しい』という理由で泣いた。
ここが彼を『悪役』ではなく『悪人主人公』に構築している重要な部分だと私は思います。彼がもしも、雪白たちに一切の涙を見せずに、馴れ合わずに、ただ敵をぶっ殺すだけでは―――あの絶対悪だとか吠えてた白い化物となんら変わりません。雪白達を大事にしていなければ夜来初三は白い『悪』と何も変わらないただの悪です。
夜来初三が主人公でいられる理由は、(特に)雪白千蘭が大切だから。
夜来初三と白い『悪』の違いは―――仲間を守っているかどうか、仲間を思っているかどうか(夜来初三は否定するだろうが)。
そこですね。
鉈内翔縁とは違った、悪人主人公。彼は典型的なダークヒーローではないですよね。典型的な『正しい道を歩もうとするダークヒーロー』ではなく、『悪に染まって悪い道を歩んで仲間を守るダークヒーロー』です。彼が更生や善に立場を変えるようなことはないですよね。
『自分を悪と肯定する』・悪人主人公―――これからもどうか、あの黒いのの『本物の悪』とやらを貫く話に付き合っていただければ幸いです!!
善人の主人公。
悪人の主人公。
真逆の立場である二人がこれからどうなっていくのか、これからもページをめくって頂ければと思います。これからも読者様がたの支えを忘れることなく、必死に連載していくのでよろしくお願いします!
付け足すならば、やっぱり天使VS悪魔の戦いです! 最強の天使を宿した桜神雅と最強の悪魔を宿した夜来初三の激闘が何よりも目を引いたかなと思いました。
雅が魔力の性質を夜来初三の『破壊』に影響されないよう創造する・・・・・これ、皆様に伝わってましたでしょうか? かなりややこしい話ですが・・・伝わっていなければ申し訳ありません! それは私の技術不足です。いくらでも不評を送ってください、本当にすいません。
大天使と大悪魔の戦い、これは以前から私が一番やってみたかった戦いです。やっぱり、主人公に最強の悪魔が憑いてるなら、最強の天使と戦わせたいと思ってました! 皆様に楽しんでいただけたら幸いです。
あと目を引いたのは・・・・やっぱり、唯神ちゃんの必死に前髪ヤクザを助けようとしたところと、雪白ちゃんが最後に締めくくってくれた部分ですよね。・・・・雪白ちゃん、いい子になってくれて本当に親的立場の私は嬉しいです(笑)
些細なことで結構ですので、どうかご感想をよろしくお願いします。悪い点、良い点、どちらも糧に頑張っていきます。
それにしても……あの前髪ヤクザ、その内、『必殺仕事人』とかになりそう(笑)




