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弱者は死者へ変えられる

『悪人祓い』のザクロは、『エンジェル』が管理する医療施設のベッドから起き上がった。傷が完治したことで調子を取り戻し、完全に仕事へ復帰できる状態へ戻ったのだ。

 彼は黒のハット帽を被って、病室から出て行く。もはや清潔感あふれるベッドで安静にする必要はなかった。彼は即座に『エンジェル』の本部へ向かって、新たに活動を開始しようとする。

 だが。

 そこで、見覚えのある顔が廊下の先から見えた。

「伊吹か。どうした、退院見舞いにでも来たのか」

「いえ。お知らせしたいことがありまして」

 伊吹連の表情はいつもと変わりない。ただ、声が小さいことからして良い知らせではないなとザクロは確信していた。静かに耳を傾けて、言ってみろと促す。

 すると伊吹はハッキリと言った。



「由堂さん率いる『特攻駆逐部隊』が全滅したとの情報です。死亡者は現時点で尊宮瞬、三浄蘭、由堂清。未だに死体を回収できていないのは桜神雅だけですが、恐らくは彼も死亡したかと予想が立ってます」



 ザクロはしばし沈黙する。

 だが、やがて、

「そうか」

 と、あっさりとした調子で返答すると歩き出した。廊下を進んでいく彼の隣に伊吹も並んで、お互いに口を開くことなく歩を進める。

 ザクロはハット帽を片手で整えて、密かに思った。

(……殺し合いに犠牲はつきものだが、まさかお前がやられるとはな、祓魔師)

 由堂清とザクロは長年死線をくぐり抜けてきた仲でもあった。故に、ザクロは彼と多少の絆とやらが出来上がっていたのかもしれないが、それが砕け散るのは仕方ないことだ。

『デーモン』と『エンジェル』の殺し合い。

 それは、必ず死者が続出するということを表す。

 だから由堂清が死んだのは由堂清が悪い。彼が弱かったから殺された。ただそれだけが、事実で真実で答えだ。

 弱者は死者へ変えられる。

 それが闇の世界のルールだ。

「ま、どこぞの祓魔師一人の顔くらいは覚えておいてやる」

 呟いて、ザクロは戦場へ向かうために足を早めた。







 こうして。

『エンジェル』と『デーモン』の起こした大規模な争いは、『デーモン』側が勝利を収める結果となった。

 



 

 

 

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