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「アッヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! 馬鹿だ、馬鹿だァァああアアアアああアアあ!! ギャっハハハハハハはハハハハハハはハハハハハハはははははは!! 馬鹿だ馬鹿ァ、チョー馬鹿だ!! 結局はテめェが後悔して泣き喚イてンじゃねェかよォ!! アぁ? まっタく哀レな野郎だナぁ!! 相変わラず三下だっタみてェだナぁ初三ィィィィィ!! ひゃっははははははははははははははははははははははははははははは!! 馬鹿すギて笑い止まンネェよォォォォ!! ぎゃっははははははははははははははははは!!」

 爆笑している夜来初三。

 彼の豹変っぷりに目を丸くしている雅は、思わず生唾を飲みこんだ。

 まず第一に夜来初三は目がおかしい。白目は黒く変色し、瞳は白く染め上がっている。……いや、そういった色とかの問題ではない。純粋に瞳がグラグラと揺れ動いて狂っていた。パックリと裂けたこの世のものとは思えない笑顔。左顔の皮膚がバリバリと剥がれ落ちていき、新たに見せた顔の半分は血管が見えそうなほど真っ白な肌だった。

「人がせっカくカラダのかじを譲っテやったッツーのによォ、アぁ? 結果的にゃア俺様がいなキャ何も突破でキネェのがテメぇじゃネぇかよ初三ィ!! 雑魚だ雑魚ォ!! 三下どコロの騒ぎじゃネェよ、てメェは結局俺の真似ごトで暴れテる贋作に過ギねェんダよォ!!」

 意味もなく手を振り回したり、意味もなく笑ったり、意味もなく狂っている夜来初三を前にした桜神雅は知った。

 あれは夜来初三じゃないと。

 もっと別のなにかだと。

「……雑魚が調子のんじゃねェよ。これが唯神天奈を潰した研究の結果だってのか? ただ目ェイかれてヤクやったみてぇにアへってるだけじゃねェか」

「アぁ? 雑魚? ソりゃ初三のコトだろォ?」

 夜来初三の形をした何かは、ギョロリと視線を雅にロックオンする。その形相に思わず一歩後退した雅は、自分の情けなさを振り払うように獰猛に笑った。

「は、はは!! そォだろうがよ!! 雑魚がどんだけ足掻こうと俺とてめぇの絶対的な立ち位置は変わらねェ!! げんに俺ァお前を叩き潰しただろうが!! 何があってンな気色悪い顔になったかは知らねェが、結局は雑魚に代わりねェんだよ!!」

 すると。

 夜来初三は口をさらに引き裂いて、笑顔を濃くし、狂気を倍増させて、

「アっひゃハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! ダ・カ・ラァ、そリャ初三のことだろォ? 俺は違ェンだヨ、アんなヘタレと一緒にするナァ!! 俺は『悪』だ!! 『絶対悪』だ!! さっキから雑魚雑魚泣いテるオマエ、うぜェヨ。どッチが雑魚かどォか試しテやろうカァ?」

「さっきから意味わかんねェこと吠えてんじゃねェええええええええええええ!!」

 夜来初三は、まるで夜来初三ではないような口ぶりだった。自分のことを他人にしているような、意味が分からない態度へ変貌したのだ。その反応に疑問はあるものの、雅は構わず突っ込んでいく。

 今の夜来初三は危険だ。

 とにかく、手足の一本は折ったほうがいいと判断したのだ。

 だが、飛び出した雅より先に夜来初三が動いていた。消えて、出現した。そんな言い方が適切すぎる速度で、夜来初三は雅の目と鼻の先に接近したのだ。

 化物の目に意識を奪われた雅は、気付けなかった。

 脇腹に熱い感触が走り。

「アヒャ」

 夜来初三が笑った直後に、



 ズリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュ!! と擦れるような音と共に、自分の脇腹から大腸が引き抜かれていくことに気づくのが遅れた。



 まるで縄を引っ張るような調子で、夜来初三は雅の体から内蔵を引きずり出していた。もはや信じられない出血が飛び出していき、雅はあっけなく力尽きる。

(ご―――っつあ!? な、何が―――!?!?)

 ドサリと倒れて、雅は意識を失いかけていた。

 もはや瞬殺。

 天使だの創造する魔力だの関係させない、別次元の一撃。さらに終わらず、気づけば雅は地面へ押しつぶされていた。もはや過程が分からない。ただ分かったのは、夜来初三が倒れた雅の右足を掴んで―――

「っぐあああああああああああああああああああああああ!?」

 ―――ブチブチブチブチ!! と、無造作に引きちぎっただけだ。右足の太ももから先が完全に消えた雅は、絶叫と共に戦意を喪失する。

 夜来初三はゆらりと立って、雅を見下ろした。

 そして笑う。

 ただただ笑う。

「ヒャッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

 雅の腕を蹴り潰した。アリを潰すように靴底を叩き込み、ゴキィッ!! と骨を砕いてしまう。もはや悲鳴すらも上げられない雅。悶絶した表情を浮かべて、苦痛の吐息を漏らしていた。

 意味がわからない。

 純粋に夜来初三を理解できない。

 サタンの力? 破壊の魔力? その程度のものじゃない。何かが絶対的に違う。雅は夜来初三の関係者である唯神天奈の殺害をこなすことしか知らない。その研究が『どういう』結果を予想してるのかもしらない。ようは、ただ唯神を殺すことしか考えてないし、知らなかったのだ。 

 でも分かった。

 夜来初三の豹変っぷりを見て、分かった。

「そ、うか……!! てめぇ、夜来初三じゃない―――」

 夜来初三じゃないと確信した雅。今まで行ってきた夜来初三に対する研究が、この化物を引きずり出すものだと理解したときには既に遅い。 

 夜来初三の姿を纏った『悪』の笑顔が、本当に狂い始めた。

 夜来初三は右手の五本の指を開き、爪を立てて、関節をコキリと鳴らす。その腕をゆっくりと雅のもとへ伸ばしていき、ガシィッッ!! と雅の顔面を鷲掴みにした。

「は、はは、すごいな。今のお前は『悪』だよ。認める、お前は悪だ、はははははは!! 誰だって認める、誰がみても今のお前は悪だ!! すげえよ、先輩。ああ俺の負けだ、お前は最ッ高の悪だよ!! はははははははは!!」

 雅は笑った。

 自暴自棄になったのか、こちらも笑っていた。

 そして、自分の顔を鷲掴んでいる『悪』の狂気に染まった笑顔に向けて言う。

「は、はは……。その顔、鏡で見てみろよ化物が」

「アッヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! ギャっハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」 

 返答はしないで、夜来初三は笑っていた。ずっとずっとずっとずっと、とにかく、常に、ひたすら、壊れたように狂い果てながら爆笑していた。

 耳まで口を裂いて、笑っていた。

 同時に。




 

 殺意で固められた『悪』の拳が、無慈悲にも雅に降り注ぐ。

 絶対的な蹂躙が開幕した。


 

久しぶりの登場ですね、『悪』ちゃん(笑) 相変わらず桁違いの強さで化物ですが(笑)




それと『三百話突破』しました!! ここまで連載できたのも、本当に読者様のおかげです。活動報告に同じようなことを書いたので、長々と語るのは迷惑ですよね(笑) なのでお礼の言葉だけ―――本当にありがとうございます!! こんなマニアックで読者様方の期待に答えられているかどうか分からない作品を読んでくださって、感謝してもしたりないです。




三百話記念回が、『悪』の虐殺劇で締まるとは思いもしませんでした(笑) ああ、せっかくの三百話記念回が・・・・と、ちょっとガックリきてます(笑) どうせならもっと感動的なシーンを書きたかったなぁ、としみじみ思う作者です


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