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天使と悪魔の激突4

「あァ?」

 疑問の声を上げた雅に、夜来初三は告げる。

「悪に種類がねぇだと? バッカじゃねぇのテメェ。悪ってのはそれぞれが抱えてるモンだ、小さな悪も大きな悪も。窃盗から人殺しも。程度、強弱、質量、性質、種類が悪には詰まってんだよ」

「馬鹿馬鹿しィことをぬかしやがる。お前はただ自分に酔ってるだけだ、そうやって悪を軸に動いてることでしか悪に成りきれねェ雑魚なんだよ」

「はン。お互いの価値観が交差することはねぇみたいだな」

 夜来初三はどうでもよさげに言って、失笑する。

 対して、雅は唸るように告げる。

「ふざけんなよ。余裕ぶってるが、お前、状況は一切変わってねェんだぞボケ。お前がどれだけ破壊の性質を変えようと、俺はその性質に影響されないよう魔力の性質を創造する。勝ち目がねェってことに何を目ェ背けてんだ? 唯神天奈を目の前で殺してやるから、ちっと五分の四くらい死んで待っとけよ」

「―――ハハ!!」

 夜来初三は小さく笑った。肩を軽く震わせて、邪悪に笑った。

 そして言い放つ。

「殺してやるから噛み付いてこい、ドクソが」

「……おちょくってんのか? どっちが劣ってるか分かって―――」

「早くしろ。じゃねぇと遺言も聞かずに殺すぞコラ」

「っ」

 本格的に頭を沸騰させた雅は、血管が破裂しそうになった自分を最大限まで押さえ込み、

「っっく、っそがァ!! テメェはどこまで自惚れてんだ、悪党ォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 邪悪で。

 凶悪で。

 獰猛で。

 嗜虐的な笑顔を浮かべている悪魔のもとへ飛び出していく。背中からは再び天使の翼を生やし、怒りに我を忘れて桜神雅は襲いかかった。

 対して、夜来初三は笑みだけを浮かべて両手をゆらりと広げた。まるで雅の突進を迎え入れるように、胸で迎えてやるように、ゆるやかに両手を広げていた。

 夜来初三は『サタンの呪い』を百分の一しか引き出せない、という話があったはずだ。その具体的な理由が明かされていなかったので、今回を機に全てを理解できるはずだ。

 そもそも大悪魔サタンとは、悪魔の神だ。レベルが他とは圧倒的に違う、最強の怪物だ。その力は破壊に特化した魔力。触れたもの全てを自由自在に破壊できる力だ。

 そう。

 そこなのだ。



 大悪魔サタンの力は全力で引き出すと、宿主の夜来初三の体が破壊されてしまうのだ。



 破壊を宿す魔力を夜来初三が抑えきれない。器が足りずに、勝手に漏れてしまうのである。つまり夜来初三という人間の中では溢れかえってしまうほどの量と破壊を魔力は持っている。

 だから。

 夜来初三の中に潜むサタンが、意図的に力を百分の一しか引き出せないようストッパーをしていたのだ。夜来初三の体が壊れないよう、わざと自分の力を百分の一しか流さなかったのだ。

 だが。

 夜来初三はこの事実を知ったとき、サタンにある頼みごとをしていた。

 それは実に単純なことで、

 ―――俺が死にそうになったらストッパーから離れろ。

 つまり百分の一ではない、体が『破壊』されることを承知の上で力を引き出す約束をした。もちろんサタンは反対していたが、これからの戦場ではもっともっと魔力がいる。

 サタンに近づく必要があった。

 故に、

「クソ野郎。こりゃカッコイー言い方をすれば諸刃の剣ってやつだ」

 自分に迫ってくる雅に対して、夜来初三は薄く笑った。気づけば彼の全身に禍々しい紋様が広がっていて、目は黒い白目に赤い瞳。髪は刃物のような銀色へ変化している。

 直後に右手を軽く振るう。ただそれだけの動作で、理解なんてできない現象が発生する。

 理屈も分からない。

 原理も分からない。

 ただ理解できたことは、



 桜神雅の体が内側から弾け飛んだことだけだ。



 ボン!! という音と共に雅は耳、目、鼻、口、毛穴、穴という穴から鮮血を吹き出した。もはや意味がわからない。まるで体内で爆弾が爆発したような現象だった。

 何を壊したのだろう。

 それは崩れ落ちていった雅には、微塵も理解できないことだ

 こうして、


 悪魔と天使の激闘は幕を下ろす。

  


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