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アドバイス

「到着しました。ターゲットの唯神天奈は街中の○○ファミリーレストラン近辺にいるようですので」

「あァ。ご苦労さん」

 桜神雅を乗せていたヘリコプターは、人気のない駐車場へ降り立っていた。運転手に適当な言葉を返して、雅は組んでいた足を崩して下車しようとした。

 しかしそこで。

 ピリリリリリリリリリ!! という着信を知らせる音が鳴り響く。

 場所は雅のポケットだ。彼は面倒くさそうに電話に出る。

「なンだよザクロ。俺は今から出勤なんだが」

『私だ。いや、さすがに気になってな。お前はこれから唯神天奈を殺害しにいくんだろう?』

 電話相手は『悪人祓い』のザクロだった。聞いた話では長期入院の末に怪我を治すことへ集中しているらしいが、雅としてはザクロの容態はどうでもいい。

「だったら何だよ、ありがたい助言でもくれンのか?」

『女を殺すのに助言もくそもない。ただ私が心配なのは夜来初三のほうだ』

「俺があのカスに負けるってのか?」

『どうだろうな。お前は夜来初三と「似て異なった」やつだ。まぁ、私としてもこれ以上戦力が削れるのは見逃せない。だからアドバイスだとでも思え』

「言ってみろ」

 イラついた声で促すと、すぐに言葉は返ってきた。

『夜来初三はお前が考えている以上に黒いぞ。そこを忘れるな』

「あァ? 随分と引っ張った割にはたいしたことねェ助言だな」

『聞け。黒いというのは、もっと詳しく言うとおかしいってことだ。例えば、「大切にしている人が敵に殺されかけていたら」……お前はどうする?』

「殺せばいいだろうが、その敵ってのを」

『ああ、普通はそう考えるだろうな。だが夜来初三はそういったネジが飛んでるんだよ』

「はァ? どォいう意味だ」

『―――アイツは敵どころか「敵になるかもしれない奴」すらも殺すかもしれないってことだ。わかるか? 敵を殺すだけじゃなくて、敵になる予備軍も殺すかもしれない。怪しいってだけで殺すかもしれない。些細な危険が大事な人におよびそうなら、不安の種は全部摘むやつなんだ』

「……なるほど、そりゃ確かに黒い野郎だな」

『それだけだ。つまりは油断するなと言っている』

 そのセリフを最後に電話は一方的に切られてしまう。

 雅は面倒くさそうに溜め息を吐いてから、携帯電話をポケットにしまって、

「黒い、か」

 

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