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着陸

 大型ヘリコプターの機内では由堂清が口笛を吹いていた。楽しそうに、気軽そうに、命をかけた戦いの真っ只中だというのに彼はヘラヘラと笑っている。

 これでも祓魔師というのだから、聖職者のイメージがガタ落ちだ。

「はは、あのガキにも片腕持ってかれた借りを返したいからな。唯神天奈とかいう女は顔に塩酸かけて殺してやりてーわ。顔面整形っつーか顔面崩壊ショーだな、ハハ!!」

 由堂清達『エンジェル』・『特攻駆逐部隊』を乗せたヘリコプターは、既に天山市の上空へ到着している。着陸用のビルに近づいたことで、彼らは己の役割を全うするために動き出した。

「じゃあな、みやび。お前は切り札っつーカッコイー使命を遂行しろよ。俺らが時間稼ぎしてる間に、きっちりやることやっとけよ?」

「うるせェよ」

「はん。威勢のいいガキンチョだな」

 由堂清はヘリコプターのドアを開けて降りる準備をした。傍には 三浄蘭みじょうらんも伸びをして待機しているため、二人がここで出動することは明白だった。

「で、私達は瞬と同じように『足止め役』ってわけね?」

「ああ、だが予定が狂いそうではある。夜来初三に対抗するための俺らだったが、どうやら夜来の奴には上岡の化物がついてるみたいだ」

「え、ちょ、嫌よ? 『怪物人間』なんて相手にしたくないわよ」

「グダグダ言うな。人生甘くねえってことだよ」

 由堂清と三浄蘭はヘリコプターが着陸したと同時に、固い地面へ飛び降りる。よって機内に残った戦闘要員は銀髪の少年・桜神雅さくらがみみやびただ一人だ。

 彼は足を組んで、深く椅子へ腰掛けている。出動した由堂達には目もやらずに、窓の外を眺めていた。

「ったく、生意気なやつだ」

 由堂清は、そんな雅を一瞥してからヘリコプターのドアを閉める。機内には桜神雅と運転手の二人だけが余った。

 はぁ、と溜め息を吐いた雅。

 彼は運転手に声をかけた。

「なァ、『デーモン』の資料は持ってるか?」

「え、ええ。これですけど」

 運転手は分厚いファイルを足元から取り出して、雅へ手渡した。受け取った彼はパラパラとページをめくっていく。『デーモン』に在籍するやつらの顔写真、プロフィール、情報が可能な限り詰め込まれたファイルだ。

「雅さん、一体どうしたんですか? 出動前に敵の情報確認ですか?」

「ああ、まァそんなとこだ。気になるんだよ」

「? 気になる?」

 桜神雅はファイルの中からお目当ての人物を見つけ出した。パラパラと進んでいったページが止まり、桜神の視線が『そいつ』の顔写真に突き刺さる。

『そいつ』は指名手配犯の写りの悪い顔写真のような鋭い目つきが目立つ。その片目は前髪に隠れて見えないが、どうせ悪人面には変わり無いだろう。性別は男。年齢は十代だ。全身黒ずくめの格好をしていて、日傘をさしている写真だった。『デーモン』・『特攻殲滅部隊』に所属している人間。その脅威レベルはレッドランク級だと記載されている。

 つまり、

「夜来初三、ねェ……どんなカスか楽しみだ」

 写真の中にいる夜来初三に獰猛な笑顔を開花させて、雅はファイルをパタンと閉じた。

 静かに、呟く。

「夜来初三……親近感が沸く野郎だなァ」

  



 

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