『エンジェル』・『特攻駆逐部隊』
『エンジェル』に所属する由堂清を含んだ四人で構成されたグループ『特攻駆逐部隊』。主に『デーモン』に在籍する敵をひたすらに駆逐するためだけに結成された小規模グループである。しかし人員は少数であるが、実力ぞろいを集めたのは確か。
言ってしまえば『エンジェル』内でも最強クラスの四人を集めた部隊ということだ。
「……で、俺はお前らと組むわけね」
祓魔師・由堂清は呆れ顔で呟いた。彼は『エンジェル』が所有しているビルの屋上にいた。ちなみに由堂清の傍には大型ヘリコプターが一台止まっている。
そして三人の男女が目の前にはいた。
「不満なら上にかけあってくれ……。俺も正直面倒くさい」
そう共感したのは由堂清の同期・尊宮瞬だ。いつも面倒くさそうな顔をしている、口癖は『面倒くさい』の美少年である。身長185センチメートルの長身で細身、綺麗な輝きを放つ癖のある金髪ショートヘアー、整った顔をしている脱力系イケメンというやつだろう。
由堂はヘリコプターに背中をあずけている彼から視線を外し、チラリと残った二人に目を向けた。
「お前らはどうなの? 俺も正直面倒くさいけど。つーかお前まで配属されるほどウチらって信用ねーのか? 俺の力は信用ねーの? 祓魔師は俺一人で十分だっての」
「私はやる気まんまんよ。久しぶりに仕事が回ってきてウキウキ気分だから」
ウェーブのかかった長い茶髪を手ですいて返答してきたのは三浄蘭。由堂と同じ『祓魔師』である。明るい色の長いワンピースを着用していて、人当たりの良さそうな顔ではあった。
彼女の隣には最後の一人。
ガラの悪い顔をした、白に近い銀髪を逆立たせている少年が背を向けていた。格好は白のフード付きジャケットに、チェーンなどが飾られている白のズボンだ。
彼は眼下に広がる街の景色を眺めていて、由堂たちに気づく様子はない。
「おい、雅。そろそろ出発だぞ、『切り札』のお前にゃ途中棄権とかふざけた選択はないからよろしく」
「分かってる。いちいち指図すんな」
桜神雅は素っ気ない態度が特徴でもあった。見た目通りの暴力系な雰囲気が漂っているビジュアルな彼は、首にかけていたネックレスを揺らしながらヘリコプターへ一番に乗車していく。
「じゃあいくか、と言いたいところだがこれからどうすんだ。このヘリコプターで敵さんのアジトに突っ込むってのか? イノシシじゃねえんだし、もっと知的な案はねえのかよ」
「……リーダーはお前だろ由堂。俺はとにかく楽なポジションさえ押し付けてくれればいいから」
「瞬ちゃん、俺は嫌々リーダーやってんの。分かる? 俺は好きで責任だの支持だのを背負う気はねえのに運命が俺を苦しめてんの。運命に攻撃されてんの、デスティニーアタックされてんだよコラ」
「俺に当たるな。つーか知らん。どうでもいいし俺はインドア派。だからさっさと行って帰るぞ」
ダルそうにヘリコプターの後部座席へ乗っていく尊宮瞬。その背中を見送った由堂は、これら問題児を束ねなくてはならない自分の立場に溜め息を吐いていた。
「ま、私も最低限のサポートはするわ。ほどほどに安心していいから、頑張りましょう」
「……ほどほどじゃ安心できねえよ。ったく、俺とお前は特に激務になるぞ。あの悪魔の神なんぞに憑かれた化物のガキを相手にしなきゃならない。女だからって俺はかばったりしないから」
「分かってるわよ、お互いに踏み台にして戦うことこそがお互いにとってメリットよね」
「メリットかどうかはさておき、とりあえず出勤するか」
由堂と三浄蘭もヘリコプター内へ入り込んでいく。運転席には『エンジェル』の男が運転手として待機していて、いつでも出動可能という状況だった。
「由堂さん、出発していいですか?」
「ああ、全員揃ったし仲良く楽しく遠足気分でレッツゴーだな。あーあ、ほんと面倒くさい」
「心の声はそのへんで沈めたほうがいいかと……」
苦笑した運転手がゆっくりとヘリコプターを起動させる。プロペラを回していった機体は徐々に浮遊していき、あっという間にビルの屋上から距離を離す。
由堂はチラリと、隣に座っている桜神雅へ視線を移して、
「おい雅。きちんと『切り札』らしくしてろよ?」
「何が言いてェんだ、あんた」
「暴走して自爆して昇天するっつー三コンボ決めんなって話だ」
「しねぇよ。……眠いんだ、静かにしてろ」
『エンジェル』を乗せたヘリコプターは凄まじい勢いで空をかけていく。目的地はただ一つ。ダルク・スピリッドに備え付けられていた発信機の示す先である。




