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いいこと

「あっれれー? 皆さんどうしちゃったんですか? 何だか引きつった顔してますけど、新手のプレイですかそれ」

 拷問室から退出してきた上岡真は、自分の体をジロジロと凝視してくる三人の部下に温かい微笑みを浮かべていた。―――全身を血まみれにして、温かい鮮血を浴びたハサミを片手に笑顔を咲かせたのだ。

 夜来初三、豹栄真介、大柴亮の三人は同時にゴホンゴホンと咳払いをして我を取り戻し、

「そ、それで上岡さん。あのクソ野郎からは何か聞き取れましたか?」

「えーまぁ。そうですね、やっぱり痛すぎて我慢できなかったみたいです。拷問用の訓練をある程度受けていたみたいですが、『その程度の相手』なら僕は何百人と相手してきたので無意味ですね、はは」

 豹栄の質問に爽やかスマイル常備装備で返答してきた上岡。全身を赤く染め上げていて笑われても、ホラーにしか見えないので気味が悪い。

 が、彼は仕切り直すように口を開いた。

「まぁ、ちょっとやりすぎましたけど、いろいろ分かりましたよ。ダルクさん……じゃなくてダル子ちゃんはピクピク痙攣する肉に変わりましたが」

「……悪趣味な野郎だ」

「え、ちょ、夜来さんだって十分悪趣味じゃないですかー。ダルクさんの下半身をぐちゃぐちゃにして捕獲してきたあなたが言うんですかー?」

「いいから掴んだ情報をさらせ。殺すぞ」

 ギロリと上岡を睨みつけた夜来(サタンが肩に乗っているので威圧感はゼロだが)。

 彼の態度に肩をすくめた上岡は、

「ま、期待通りとはいきませんでした。『エンジェル』の本部を聞き出したんですが、どうもそこだけは分からないみたいです」

「おいおい、さすがに連中の親玉はビクビクしすぎじゃねーのか? ダルク・スピリッドってなぁ『エンジェル』でそこそこ上の野郎だって話だろ。だってのに、ソイツでさえ大将の寝床がさっぱりってのは気に入らねえな。『エンジェル』の頭はビビリ君みてぇらしいが、それだけじゃちっと赤字じゃねーのかよ」

「ええ、ですけど『良いこと』は吐いてくれましたよ」

「?」

 眉を潜めた夜来が、視線だけで続きを話せと要求する。

「どうやら、『エンジェル』は近々僕達『デーモン』を大規模なやり方で襲撃してくるらしいです。あはは、いやいや困った。しかもその襲撃してくる中には、対夜来さん用の『祓魔師エクソシスト』までメンバーに入ってるらしいですよ」

 祓魔師。

 そのワード一つで夜来は目つきを鋭くする。あの忌々しいクソ祓魔師を思い出したのだろう、雪白千蘭を誘拐して自分を過去最大となるほど追い詰めた相手。

 今までも何人かの強敵と夜来はぶつかったことがある。

 全てを壊すサタンの力を上回るような連中は幾つかいた。

 サタンの魔力を使って殺しても『生き返る』豹栄真介、悪魔祓いの力を持った高スペック『悪人祓い』のザクロ、夜来初三が『壊していない』存在である『空気』を操ってダメージを与えてきた本堂賢一。

 しかし、彼ら全員には追い詰められて苦戦はしたが『負けていない』のは事実だ。豹栄真介は現在は嫌々仲間で、ザクロは殴り合いで叩き潰してやって、本堂賢一の場合は彼の『空気』というトリックを暴いて撃破している。

 全て強敵だったが、夜来初三が『負けていない』相手だ。

 しかし、アイツだけは違う。



 祓魔師という相手にだけは夜来初三は敗北していた。



 由堂清とかいう長髪の祓魔師に殺される寸前まで潰されたが、突如、原因不明の『何か』が夜来の体を乗っ取って大暴れしたことで事件は幕を閉じている。

 夜来初三が勝てたことのない相手―――祓魔師。

 つまりは天敵とも言える野郎だ。

「面白ェ。あのクソ聖職者がまた面ァ見せるってんなら今度こそ殺してやる」

「んだぁ? 随分とやる気まんまんじゃねえかよガキ」

 殺気立った雰囲気を纏った夜来に、横目で告げた豹栄真介。

「ったりめぇだろうがよ」

 夜来はギョロリと目玉を動かし、豹栄真介を睨むように見て、

「あの白髪女しらがおんなをさらったクソだぞ。殺すに決まってんだろうが。あの女を傷つけた時点で殺す以外にすることはねぇ。―――ぐっちゃぐっちゃにぶっ殺してやる。殺して殺してぶっ殺す」

「……お前も病んでるじゃねえかよ」

「あ?」

「何でもねえよ。お熱いカップルができそうで何よりだって話だ、死んどけガキ」

 豹栄との会話にいちいち付き合う気はないのか、夜来は大きな舌打ちを鳴らして顔を逸らす。相変わらずな二人の空気に苦い顔をしている大柴は、上岡に視線を向け変えて、

「で、その『エンジェル』が俺らを襲撃してくるってのは具体的なことは分からないんですか、上岡さん。というかそもそも、俺ら『デーモン』のアジトだって複数に散らばってますし襲撃なんてしてこれるんですか?」

「んー、まぁ敵さんも考えているようでしてね。ダルクさんの話によると―――今僕たちが使っているこのアジト。『エンジェル』側にバレちゃってるみたいですよ」

「っ!?」

 思わず息を飲んだ夜来、豹栄、大柴。

 三人の仰天した視線に答えるべく、上岡はポケットの中からゴソゴソと妙なものを取り出した。小さなチップのようなものだ。メモリーカードにも見えるその代物を持っている上岡は、笑顔は崩すことなく告げる。



「このチップ、どうやら『発信機』のようです。ダルクさんの『奥歯』に埋め込まれてました」




雪白ちゃんを傷つけた時点で殺す以外にすることがない、とヤクザは宣言してましたね。夜来くんも一途なんじゃないですかね、というか彼こそが一番ヤンデレなんじゃないかと。豹栄が『病んでるじゃねえか』と突っ込んでくれて良かったです(笑)



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