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女の子を生産

 夜来初三は小さくアクビをして壁に寄りかかっていた。彼の腰には銀髪幼女の大悪魔サタンが抱きついているお馴染みのスタイルだが、もう慣れてしまっているようで夜来は何も反応を見せない。

 彼は退屈そうな顔をしてチラリと横へ目を向ける。

 そこには、

「おい変態上司。いい加減頭のネジ詰め込み直した方がいいんじゃねーのか? あ?」

「え、何でいきなり言葉責めでくるんですか夜来さん。まずは優しくソフトにタッチでしょう」

「殺すぞ。つーかお前さ―――『それ』は何なわけ?」

 夜来初三、豹栄真介、大柴亮の三人が一点に視線を集中させていた。代表して夜来初三が『それ』を持っている上岡へ尋ねたのだ。仮にも上司なのだから、疑問を投げかけるのには最適な相手。

 しかし上司はニコニコと笑いながら―――。

「いやね、サタンさんを数に含まなければ僕と夜来さんと豹栄さんと大柴さんの男四人が『デーモン』の『特攻殲滅部隊』に配属されてる超戦闘隊員じゃないですか。で、僕は思ったんですよ―――女がいないとやる気出ないじゃんと」

「テメェそろそろクビにされんぞオイ」

「いやいやだってそうでしょ? 夜来さんだって、普段は女子の人口密度が高い日常送ってるじゃないですか。が、今じゃこれですよ? 犯罪組織トップのシスコンと影の薄い大柴くんとイケメンスマイルの僕ですよ? どうですか? 女ゼロでやる気出ますか?」

「さりげなくテメェだけ良いように扱うなコラ」

「ですから、上にかけあって『女の子を作る道具』を借りてきました」

「……」

 沈黙した夜来。

 彼は唖然としている豹栄や大柴の代わりに口を開いて、



「で、その結果が『ハサミ』で『切り落とす』ってか……?」


 

 上岡はデカいハサミを片手に、ダルク・スピリッドの前に微笑みながら立っていた。明らかに何を切り落とすかは想像がつく。しかしそれを実践するには肝が相当すわってなければなるまい。

「はい、ゆっくり、じわじわ、先っちょの方から『刻んで』いきます。いや、やっぱりダメなんですよね普通の拷問じゃあ。女性ならば乳房、子宮、顔、などを狙えば一番苦しむので楽なんですけど、男は体の傷くらいじゃ名誉の負傷とかで気持ちよく納得しちゃう傾向があるんで。―――ですから男性のシンボルをチョキチョキしていこうかと。おちんちんをちょーっとずつ、ハサミで、切って、切り落とそうかと」

「っ! ……は、吐き気がするほど……嫌なやり方だな。モザイクかけらんねぇのかよ」

「AVじゃないんですから無理ですって。―――じゃ、さっさと始めますね」

 笑顔をさらに開花させた上岡は顔面蒼白でいるダルク・スピリッドに向き直った。

 これ以上ないくらいのやり方だ。さすがに夜来も豹栄も『本能的に自分がやられたら怖いから』思いつかなかった拷問方法。男性器をハサミで切られていくなんて恐ろしすぎて何も言えない。

 しかし上岡はニコニコ笑顔を崩すことなく始めようとする。

「じゃあダルクさん、Mに目覚めてくださいね? じゃないとホントにショックで死んじゃうと思うんで」

「っ……!?」

「ああ、今更何を言っても遅いですからね? あなたが生きてくれていれば情報の収集なんていくらでも出来る。だから男性器をチョッキンするのは―――『今までの時間を無駄にした罰』です」

 夜来初三は腰に抱きついたままのサタンをお姫様抱っこの要領で抱えた。幸せそうにニヤけた顔をするサタンだったが、現在の夜来は構わない。とにかく一刻も早くこの部屋から脱出しないと吐きそうだった。

「こ、小僧、なに? 我輩と愛の逃避行をするのか!?」

「うるさい黙ってろ!!」

 上岡は本気だ。

 故にサタンを連れ出して自分も同時に外へ急いで飛び出ていったのだ。扉を通って外へ出ると、見慣れた白い廊下へ到着する。

 あの空間にはいられなかった。

 あの上司、やはり中には化物が住み着いている。

(あ、あの野郎、俺より人格狂ってんじゃねぇのか!? なにニコニコ笑顔でヤベェことやってんだよオイ)

 と、若干息を荒げていた夜来の背後から二つの足音が聞こえた。同時に扉が開け放たれて予想通りの展開が訪れる。

「お前ら……」

 振り返った夜来の視界には気持ち悪そうな顔をした豹栄と大柴だ。おそらく彼らも耐えられなかったのだろう。まるでサウナに限界まで入って急いで飛び出たような有様だ。

「お、おい、あのクソ上司はどう―――」

「あ、あの人、ホントにやりそうだったんだよ!! み、見てらんなくて逃げてきたんだ!!」

 即答してきた大柴は、床に座り込んで汗を拭っていた。

 と、その瞬間、

 


 金属をすり合わせたような絶叫が拷問部屋から響いてきた。



 何かは想像するまでもない。

 夜来初三も豹栄真介も大柴亮も、血の気が引いたような青い顔をして己の上司がいかに恐ろしい相手なのかを理解していた。

 今まで馬鹿にした発言が多かったあの上司は、やはり本質は一番危ない。

 今更になって気づいたが。

 相手の顔を容赦なく削ったり肉や皮膚をもぎ取って笑う夜来初三や、女であろうと対戦車ミサイルをぶっ放すような豹栄真介の『上に立っている』のがあの上岡真だった。

 彼ら狂犬揃いを飼い慣らしているのが、あの上司だ。

「小僧小僧、我輩と逃避行するんじゃないのか?」

 サタンの無邪気な声だけが響く廊下で、三人の部下達は顔を青ざめながら己の上司を『本質』も含めて再認識していた―――上岡真は自分たち程度より一番やばい、と。


 拷問部屋では喉を裂くような悲鳴が上がっているだけで、何が起こっているかは見れなかった。 

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