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どうすればいい

「でも鉈内さん、これからどうするんですか? また隠れるにしてもそれじゃ解決しません。今思ったら、私達は街の人間全てを敵にしているんですから街の誰かに助けを求めるのも無理です」

「あー、あのフランさんから借りた『金太郎』で脱出は? この街から一旦逃げて作戦立てるのもありだし、それが一番いい策だと思うんだけど」

「無理ですよ。だって『金太郎』、敵の大将みたいな立場にいたダルク・スピリッドさんの家の庭にあるじゃないですか」

「そ、そうだった。じゃあ一体どうすれば……」

 隠れ場所として扱っていた倉庫から離れて、森の中を歩いている鉈内達。さすがに倉庫へ戻る気にはなれるはずがない。先ほどの襲撃からして、いつ再び増援が襲って来るか不明であるからだ。だが、かといって、他に身を潜められる安全地帯があるというわけでもない故に八方塞がりといった状況だった。

 だがそこで。

 シャリィ・レインが横から一つの提案をしてきた。

「なぁ、すまいないがもう逃げ隠れするのはやめないか?」

「でもそれじゃ、シャリィちゃん達が狙われているしまずくないかな。敵の狙いは『プリデン城』の撤去。それの邪魔をしてる君たちを殺す気だし……」

「だが、かといって逃げているだけじゃ問題は解決しない。『いつか』は戦うことになるだろう。ならば早く戦おうと逃げて遅くから戦おうと、些細な時間の差があるだけだ」

「うっ、そう言われちゃ反論できないな」

 苦い顔をした鉈内は、しばし無言になる。

 だが納得できない部分があったようで、彼は自分たちの後ろをついてくる大勢の子供達を指し示しながら尋ねた(念のため黒崎が子供達の最後尾を歩いているので、子供達が突然に襲われる心配はない)。

「こんな子供を戦わせるのだけは反対だよ。それはシャリィちゃんも同意見だよね?」

「当たり前だ。それだけは絶対にありえない」

「じゃあ、必然的に誰が戦闘要員になるんだろう。僕と燐ちゃんが一緒に最前線で暴れても、子供達を守る守備係も必要だし」

「それは私がやりた―――」

「ダメダメ。僕は君を戦場に送り出す気もないよ。狙われているヒロインをわざわざ敵の群れに放り込むような真似するわけないじゃん」

 冗談を飛ばすような調子だったが、彼の『シャリィ・レインも戦わせる気はない』という意志の強さだけはハッキリと理解できた。故に返す言葉がなくなったシャリィは、渋々といった風にコクリと頷く。

 その反応に微笑んだ鉈内は、持っている夜刀を改めて握り直して、

「君……君たちは確かに『死霊の呪い』っていう、もっと正確に言えば『ロウン・シングリッドの呪い』を宿してる。多分、僕たちを初めて襲ってきた時に物が飛んできたりナイフやらフォークが突っ込んできたのは『霊力』っていう霊特有の力を使った念力でしょ?」

「ああ、私達は小規模なものだが物を浮遊させたりできる。純粋な身体能力以前に不思議な力を扱えていた」

「そうそう。だからさ、自分だけでも『死霊の呪い』を使って僕達と戦うぜウラァ! みたいな気持ちがあるかもだけど、それはなしね。僕は君を戦場に送り出す気は毛頭ないから、悪いけどそこは我慢してくれ」

「……ありがとう」

「はは、礼はいろいろと終わってからにしてって言ったでしょ」

 鉈内は話を切り替えるために、後方にいる黒崎へ声をかける。

「ところでさ、燐ちゃん。これからこっちも反撃したいんだけどさ、具体的にどうすればいい? 僕ってば馬鹿だからさっぱりだわ」

「だ、大事なところは私に任せるんですね。な、何か私ってやっぱり都合のいいお―――」

「あーちゃうちゃう!! 大事なところ任せるのは燐ちゃんを『信用』してるからだから!! オーケーオーケー!?」

 ちょっと気を抜いてしまい、捉え方によってはメンタル破壊一直線の言動を使ってしまった鉈内の全力フォロー。おかげで調子を取り戻した黒崎は、信用されている事実によって喜んでいるようで清々しい笑顔を開花させながら、

「まずはですね! やっぱり『シャリィ守備係』と『敵兵殲滅係』を決めるべきですっ!!」

「つ、つまりは攻撃ポジションと守備ポジションに分けるってわけ?」

「はい、もちろん私と鉈内さんだけしか戦えないので、もうお分かりですよね?」

 その確認するような言葉に鉈内は頷き、

「わかってるよ。で、燐ちゃんはどっちをやりたいのかな。一応レディーファーストだから聞いとくよ」

「―――鉈内さんの意見を尊重しますので、鉈内さんのやりたいようにしてください。それを全力でサポートします」

「……やっばい、マジ惚れそう」

 黒崎燐という『うわ、この子お嫁さんにしたら絶対夫婦円満でいけるじゃんオイ!!』みたいな素晴らしき女性の価値に思わず涙する鉈内。しかし、彼は即座に決断を告げた。自分がダルク・スピリッドを叩きに行くか、自分がシャリィ・レイン達の護衛を務めるか。

 二者一択。

 ならば答えは決まっている。

「僕がダルクのクソ野郎を殴りに行く。燐ちゃんはシャリィちゃん達の護衛をお願い」

 断言した鉈内の後ろ姿に、くすりと笑った黒崎は大きく頷いて、

「はい、了解しました!」

 

チャラ男とヤクザはまさに背中合わせな関係ですね。チャラ男は敵―――人を殺すことなんてできないから峰打ちでやるけども、ヤクザは仲間のためなら敵を本当に殺しますからね。ここが彼ら―――善人と悪人の決定的な違いでしょう。


しかし鉈内のように敵に情けをかけることは『後々その生かした敵が仲間を再び襲うかもしれない』リスクがある故に『悪』かもしれない。



しかしヤクザのように『敵ならば即座にぶっ殺してやって仲間の安全を確実に確保する』というのも仲間のためとはいえ『人殺し』という単純明快な『悪』ですね。



・・・・・・・実はこの作品、私作者の価値観が―――『世の中って全部悪じゃないかな。だって人殺ししたら悪なのに、中学とかの歴史の教科書じゃ織田信長とか何千人の人を殺してる奴を偉い人としてのせてるじゃん。それって人殺しして偉い、っていうことなんでしょ? だから義務教育で教わったんでしょ?じゃあなんで織田信長みたいに人殺ししたら今の時代は悪になって捕まるの? 国のために人殺ししてもダメじゃん。じゃああもうそれって―――人殺しが悪なのか偉いこと・善なのかわからないじゃん』

 みたいな歪んだ考え方から作り上げた作品です(笑) 悪と善、どちらも正しい定義な定着していない存在故に、世界じゃ何が悪で何が善なのか分からなかったので、この『悪』を求めた作品を作りました。・・・・・・・作品誕生秘話、という感じに認識してください、余計な話してすいません(笑)



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