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お見舞い

「元気かなーん。エリートロリこと七色ちゃーん」

 七色夕那の入院している病室のドアが勢いよく開かれて、そんな罵倒にも等しい声が聞こえてきた。いきなりの訪問者だったが、清潔感あふれるベッドの上で寝ていた七色は大きな溜め息を吐く。

「誰がエリートロリじゃ。そういうお主こそ洋風ロリの中身おっさんじゃろうが」

「まあまあ、お前こそ和風ロリのババァじゃん。一人称『わし』とか、もはやババァ超えてヒーばあちゃん辺りのババァじゃん。ひ孫さんお元気?」

「怪我治ったらお主を入院させてやるから感謝しろ洋風ロリ」

 腰まで伸びたサラサラストレートの金髪を揺らして入出してきたのはフラン・シャルエル。対して呆れるように返答したのはサラサラストレートの黒髪を携えた七色夕那だ。

 第三者的立場から二人の様子を眺めてみれば、幼い子供がじゃれ合っているようにしか見えない。二人共外見的な年齢が非常に幼いため、ある意味シュールな光景ともいえる。

 フラン・シャルエルは病室のドアを閉めてから、ベッドで寝ている七色のもとへ近寄っていく。近くにあったパイプ椅子に座り、足をブラブラと動かしながら口を開いた。

「あーあ、何か心配してやって損したわ。てっきりもっと無様に泣いてんのかなーって期待してたってのにさぁ。ことごとく私の夢と希望を裏切りやがって。高くつくねこりゃ」

「儂の大怪我を望むような夢や希望なんぞ裏切って必然じゃ。で、お主はなぜここにきたんじゃ。というか翔縁は無事にいったんじゃろうな」

「昔の部下が大怪我したっつーから馬鹿にしに来ただけだ。鉈内とかいうガキンチョは黒崎のアホと一緒にフランスまで行ったよ。なんせ私の『金太郎』を貸してやったんだからな、今頃はしゃいでるだろうぜ」

「ああ、あの金ピカヘリコプターか。何度も儂を吐かせた忌まわしい改造兵器じゃのう」

 七色は苦い顔をしてそう評価を下す。

 しかし当然、持ち主はその言葉がかんに触ったようで、

「おいおい和風ロリ。てめー大人しく聞いてりゃ随分なこと抜かしてくれるじゃねえか。私の『金太郎』は兵器じゃなくてエンターテインメントの塊なんだよ。童心に返ることを忘れない象徴みたいなもんなんだっつーの」

「はいはい、分かった分かった分かったから静かにせい」

 適当に手を虫を払うように振って切り上げた七色は、ゴロンと寝返りをうってフランに背を向けた。

 対し、フランは仕切り直すようにゴホンと咳払いしてから、

「で、その傷はどうしたんだ? 腹ァ刺されたっつーから、ド派手なリスカットとかじゃねーんだろ?」

「メンヘラ扱いはゴメンじゃのう。まぁ、そうじゃな、ちょいと反抗期の子供にやられただけじゃ。深く詮索するでない」

「ふーん」

 気遣っているのか、心底興味がないのかは分からないが、フランは七色の言うとおり深入りするような真似はしなかった。

「そういや、速水とか五月雨はどうしたんだ? 見舞い客が一人もいないとはまぁ、随分と可哀想な七色ちゃんだねぇ」

「速水は熱血教師じゃ。今頃は学校で残業でもしとるのではないか? それと五月雨は医者じゃ。儂一人のお守りをするほど暇ではない」

「五月雨にゃ世話になってっからな、うちも。しっかしアイツの腕はすげーよな、致命傷患者をきっちり冥土から引きずりあげてくれるから、私の部下も数え切れないほど救われたわ。今度パイナップルのチクチクしたとこだけ送ってやろーっと」

「ただの嫌がらせじゃろうが」

 はぁ、と溜め息を吐いた七色はフランにジト目を向けて、

「で、何故なにゆえお主なんぞが儂の見舞いになど来た。本心を言え」

「ちょー暇だった」

「いっぺんハッ倒すぞ貴様」

「いやでもマジ暇だったんだよ。ようやく黒崎の奴もいねーから気ぃ遣う相手いないし、仕事終わったし、あとはダラダラしてりゃいいんだけどさぁ。そのダラダラしてる間にすることすらないんだわ」

「まぁ黒崎が面倒くさいことはよう分かるな。儂もあやつと一緒にいると過労で倒れそうじゃったし」

「ミートゥーだな。でも……」

 フランは軽く失笑して。

 ここだけは事実だと言い張るように告げた。

「黒崎はクッソメンタル弱くてウザイ野郎だが―――実力だけは確かだからな」

幼女しか出てこなかった今話でした(笑) 

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