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金ピカ

「……なに、これ」

 鉈内翔縁が見上げているのは一台の大型ヘリコプターだ。ただし呆然と呟いたにしては、ヘリコプターという理由一つではいささか疑問が浮上する。ヘリコプターは確かに自衛隊員や医療機関以外の者からしてみれば希少な存在だろうが、それでも呆然とするには影響力が少ない。

 では、結局のところ鉈内はなぜ目を点にさせているのか。

 それは実に単純なことで、



「……何でここまでヘリが金ピカピンなの?」



 見上げているのは金色に輝くうざいほどに派手な大型ヘリコプター。もう子供が考えた設定盛りだくさんのようである。もしかしたらレーザーでも飛び出る仕組みかも知れない。

「どーよ、私の私物は。イカすだろ?」

「あんたの私物かよ!! 趣味悪すぎんだろうが!! イカしすぎてクレオパトラもビックリだわ!! クレオパトラを超えてるわ!!」

 フラン・シャルエルが長いストレートの金髪を揺らして鉈内の隣に立つ。場所は『夜明けの月光』の本部であるこのビルの屋上。まさかヘリコプターがそこに駐車してあるとは予想外だった。

 未だに空いた口がふさがらない鉈内にドヤ顔をフランは浮かべて、腕を組んで胸を張りながら、

「しかもレーザー機能搭載だ」

「やっぱレーザーあんのかよ!!」

「ミサイルだってぶっぱなせる。アメリカだって落としてやるぜ!」

「世界制服する気満々だね!! もう何かあんたが火蓋切って落として世界大戦始まりそうだよね!!」

 フランは自慢の黄金に輝くマイ・ヘリコプターに近づき、その手を輝く外装にそっと当てて、

「ああ、相変わらず輝いてるな『金太郎』よ。お前は私の誇りだ」

「熊を投げ飛ばす方の金太郎に失礼だろ!! 昔話に失礼だろ!!」

「はぁ? あんな全裸で熊と相撲とる変態と私の『金太郎』を一緒にすんなよ。あいつはただの猥褻物ぶら下げたクソガキだ」

「全国で金太郎を寝る前に子供に読んであげてるお母さんに土下座しろ!! ほんと土下座しろ!!」 

「ぶっちゃけ私は桃太郎派だから。金太郎とか名前、ぜーったい金〇デカかっただけが由来だから。ジジィとババァが『うわコイツ金〇デカ。じゃ金太郎でよくね?』とか言ってゲラゲラ笑いながらつけた名前だから」

「金太郎はそんな話じゃなあああああああい!!」

「っていうか、金太郎とかほぼ全裸だけど勃〇したらどうすんだろうな? 立ったらマジで隠せねーじゃん。あ、いやそうか露出プレイの話だったな金太郎って」

「金太郎は清き心を持った漢の話だボケエエエエエ!! 何で昔話が露出プレイ者のストーリー描かれて販売されんだよ!! ガキがそんなの読むわけ無いだろ!!」

「あんなチンチンブラブラなガキンチョが清い? はっ! 世も末だねぇったく」

「お前の頭が世も末だよ!! もう末っつーか腐り落ちてるよ!!」

 ぜえはあと荒い息を巻き上げて肩を上下させる鉈内。まさか朝のクソ占い師に続いて豆腐メンタルの少女……では終わらず中身おっさんの金髪ロリまでもが『ボケ』として災いと化しているのだろうか……。いや、もしやツッコミを入れさせまくって鉈内を精神的に追い詰めることで『予言』通りの結末に神様は追い込んでいるのかもしれない。

 このままでは『予言』の思うツボだ。

 ツッコミ癖を治すことで予言に抗ってみせようじゃないか。

(そ、そうだよそうそう。もともと僕が律儀にツッコミ入れる義務なんてないし。何か普段一緒にいる人達が濃いキャラばっかだからツッコミ入れる役になってるだけだし。別に僕の人生ギャグマンガじゃないし! そうだよ! もうツッコミなんてやめて、いっそのことボケに回れば―――)

「ちなみにこれでフランスにまで行ってもらうからよろしくな」

「こんなハリウッドスターも持ってねえ金色ヘリコプターで他国入れるわけねえだろ!! 撃ち落とされても仕方ないよねこれ!! だって金色だもんよ!! マジで塗装だけでもはがせって!!」

「口の聞き方がなってねえガキだな。七色の野郎は一般常識すら教育してねえのかよ」

「自分のヘリコプターまっ金金きんきんにしてるあんたが言うなあああ!! こんな金閣寺も腰抜かすくらい金ピカのヘリじゃフランスもあわあわしちゃうだろ!!」

 その返答に対して、フランは無駄に『馬鹿だな、そんなことくらい分かってるっつーのガキンチョ』とでも言いたげな顔を作り上げる。

 そして小さく笑って、

「問題ないって。向こうさんにゃ気づかれねえよう他国侵入すっから」 


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