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破壊

 本道賢一の扱う『呪い』の力とは謎が深すぎた。

 夜来初三の猛烈な移動速度よりも早いスピードを容易く扱うそれは、もはや移動だなんて言葉では済ませられないレベル。さらには『絶対破壊』の影響を一切受けることのない謎の『見えない』力を使用して一方的に夜来初三を叩き伏せるほど。

 さらには身動きの取れなくなった夜来初三へまたがるように立って見下ろし、勝利を確信した笑みを浮かべられる自信。

 明らかに謎ばかりだ。

 そんな相手が放ってきた『見えない』一撃に、夜来初三は対抗なんてできるはずがない。『絶対破壊』も効かないのであれば、辿るべき道は敗北一つである。

 故に。

 勝敗なんて火を見るより明らかだった。

「ガッ、は……!?」

 ビチャビチャと音を立てて口からこぼれ落ちた血。

 苦痛に顔面を歪めながら、それでも敵の気に食わない顔を見て、



「夜来初三……!! お前、何をした……!?」



 いつの間にか『見えない』拘束を解いていた夜来初三の右手が腹部に突き刺さっていた本道賢一は、呆然と血を吐きながら呟いていた。

 真下で仰向けに転がっていた夜来は、その問いに対して思わず笑った。ニィ、と口の端を耳まで溶かすようにして笑った。

「何をしたぁ? ハッ! ただ気に入らねぇ犬畜生をぶっ壊してやっただけだろうがよ」

 ドガン!! と真上にあった本道賢一の邪魔な体を蹴り飛ばす。バキゴキベキ!! と胸の骨が砕けた快音を鳴らして蹴り飛ばされていった本道は地面へゴロゴロと転がっていく。

 その様を見下ろして、立ち上がった夜来は歩き出した。

「ったく、こっちはテメェみてぇなホモサピエンスといつまでも遊んでる時間はねぇんだよ。無駄に俺の人生減らしやがって、高くつくぞコラ」

「な、ぜ……!? お前は、さっきの一撃が効いてない……!?」

「―――風だろ?」

「っ!!」

 夜来の一言に本道はビクリと顔を歪めた。

「視覚じゃ確認できねぇ移動速度と不可視の攻撃。さらにゃ俺の魔力でカバー貼っといた体、『絶対破壊』すら反応しねぇ代物。となると答えは風しかねぇ」

 近づいてくる悪魔の足音。

 それを耳にしながら、本道賢一は観念したように呟く。 

「『風神の呪い』だ……。制御できるのは言葉通り『風』。よく、分かったな」

「風っつーのは、空気の流れのことを指す。あるいは流れる空気自体のことだろうが。ようは風を操れるっつーことは空気そのものを好きなように振り回せる。なら全部説明つくだろ」

 ザッ、と足音が響く。先ほどの立場とは真逆で、夜来初三は仰向けで転がっている本道賢一の体を見下ろして立った。

 その邪悪な笑みからは見た目に似合わず正論が飛び出す。

「お前のクソみてぇに笑える移動速度は風を利用したモン。見えねぇ力は空気自体を使って攻撃しただけだ。俺の体を拘束したのも空気を重点的に被せてきたからだろ」

「……『絶対破壊』に影響されない理由も理解しているのか?」

「俺の『絶対破壊オモチャ』だぞ。遊び方ぐらい熟知してらぁ。一口に『触れたもの全てを破壊する』っつっても実質的にゃ『全部』じゃねぇ。もしも俺がマジで全部全部破壊してるってんなら、呼吸活動に必要不可欠な『酸素』も、この熱くなってきた季節にゃオアシスの冷たい『風』も、クソ素ッ晴らしい自然から生まれる美味い『空気』も壊しちまうだろうが。それじゃ俺死んでっから、壊す必要のねぇもんは『壊してない』んだよ、意図的にな。だからテメェが振り回す『空気』は『俺が壊してなかった』だけだ、無意識にな」

「先ほどの拘束と攻撃は、どうやって……」

「空気も含めて『本当』に『触れたもの「全て」を壊した』からだ。ま、息できねぇから一時的にだが」

 答え合わせは終了だ。

「つーわけでこっから先は―――」

 その事実を示すがごとく、夜来の恐ろしい顔は鮮血を求める快楽殺人鬼のように狂気と凶悪さを倍増させた。

「―――俺の一方的な虐殺タイムだ、ハハ!!」


  

 

  

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