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不可視の攻撃

 悪魔へと染まった悪魔が上げた咆哮。

 その思わず失禁しそうになるくらい恐ろしい顔と声には誰もが腰を抜かすこと間違いないだろう。だがこの場に立つ大男、本道賢一だけは例外なようだ。無表情顔を維持しながら、ジリジリと黒い魔力を溢れさせている夜来の姿を捉えている。

 と、そこで一つの現象が起きた。

 夜来初三が右手を地面へ叩きつけたのだ。バン!! とビンタでも行った際に発生するような乾いた音が鳴り響く。

 そして。

 少しの静寂の後。



 ドガガガガガガガガガガガガガガガガ!! という破壊音と共に。

 漆黒の魔力が地面から噴火するようにして溢れ飛び出していった。



「気合だけはあるようだな」

 迫ってきた魔力から瞬時に飛び下がって回避した本道の呟き。

 だがそれでは終わらない。

 今度は漆黒の魔力を纏った夜来初三本人が突っ込んできた。まるで水蒸気のようにジワジワと体から溢れている魔力は触れれば死を表す最強の悪魔の力。

 その殺人兵器そのものである体を使い、夜来は腕を無造作に本道の顔へ向けて振るう。

 ブン!! と迫ってきた悪魔の腕はかすっただけでも即昇天だ。誰だってその事実に怯えてまともな判断能力を失うだろう。しかし本道賢一は『当たらなければ問題ないだろう』と書かれた顔をヒョイと逸らすだけで、その一撃をかわす。

「期待ハズレだ。お前はもう少し聡明な奴だと思っていたぞ」

「っつが!?」

 またもや『見えない攻撃』が顔の中心に発生した。

 本道はなにもしていない。パンチを放ってきたわけでも、蹴りを叩き込んできたわけでもない。そもそもそんな肉体的接触をすれば『絶対破壊』で即座に殺される。

 ただ軽く笑って立っているだけだった。

 だというのに。

 鼻っ柱へ伝わった謎の衝撃に夜来は吹っ飛んでいく。

「遅いぞ、立て」

 しかも仰向けで倒れ込んでいた夜来にまたがる形で本道は見下ろしてくる。曇り空を見上げていた夜来の視界に入った余裕綽々な顔。それを認識したことで夜来の怒りは沸点を超えた。

 このクソ野郎の体に触れて粉々に体のパーツを分けてやろうという殺意から、ほとんど無意識に手をターゲットの足へ伸ばす。

 だが、

「言ったろう、遅い」

「っ!?」

 ズン!! と、伸ばそうとしていた腕に重りが乗っかったように重力のようなものがかかる。それは全身へ広がり、気づけば曇り空を見上げる形から完全に動けなくなっていた。

 まるで体が石像になったようだ。

 指先一つ満足に動かせない。

「ふざけやがって、テメェ……!!」

「先ほども、お前と同じような格好で哀れな最後を遂げた奴がいた」

 ふっ、と口の端を上げた本道。

 彼は続けて、

「豹栄真介だ。お前の因縁深い相手であり仲間でもあるあいつだよ」

「……ハッ! 仲間だぁ? あんなシスコンの安否なんぞ興味はねぇ。テメェらぶっ殺すっつー目的が同じだから嫌々手ぇ組んだだけだ。死んでようと殺されてようと知ったことか。なんならここにアイツの首でも並べてみろよ、一緒に仲良く観賞しようぜぇ?」

「ほう。随分と反応が予想外だな。……聞いた限りでは、お前は丸くなったと聞いている。雪白千蘭との出会いが強く影響して、その牙を徐々に抜かれていったというが……その邪悪な顔からしてデマなようだな」

 夜来初三の顔に笑顔が浮かび上がった。

 ただし、その笑みの構成材料は邪悪性と凶悪性だけである。

「随分なことぬかしやがる。あの白髪女しらがおんなとの出会い一つでこの俺が変わるわけねぇだろ。そっちの情報収集能力ってのは余程使モンにならねぇみてぇだな。情けねぇなぁ本道ちゃん、テメェはどこの悪徳商法に引っかかった被害者Aさんなんだよ。俺が丸くなっただのと吠えた会社なんぞとはつるまねぇほうが身のためだぜ?」

「自分の立場を理解して挑発しているのか? 俺はお前を痛ぶって遊ぶことができるんだぞ」

「哀れだねぇ、本道ちゃーん。俺を殺せねぇからって痛ぶることしかできねぇビビリ君がなにほざいてんだ。ビビっちゃってSMプレイにしか持ってけねぇお前は何なんなのよ、興奮しちゃって我慢が効かねぇってかぁ? 発情期の猿かよテメェは」

「……くたばれ」

 瞬間。

 ドガァン!! という轟音と共に。

 本道賢一が放った『絶対破壊』をすりぬける不可視の一撃が解き放たれた。

  

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