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我慢



「ふふふ、小僧に告白された今日は記念日だな。ポイントも稼げたしお付き合いもスタートだ。あと、今日の晩御飯はバーストフードだ。ビッグドラッグを食べたいぞ」

「ファーストフードだ。あとビッグドラッグって名前からしてアウトだろ、ビッグマックな。つーか、ポイント稼ぎとか言うなバカ。それと勝手に俺の発言をラブに変換してんじゃねぇよ」

「まあ、小僧が我輩のものということは決定事項だし今はそれで納得してやろう。ああ、そうそう帰りに本屋へよれ。将来生まれる悪魔と人間のハーフの子供にふさわしい名前を調べねばな」

「……それ俺の血入ってねぇガキだよな?」

 と、そんな風に彼ららしい普段の調子で会話をしていたのだが。

 忘れてはいけない。

 ここは敵陣の中なのである。

 故に、取り囲むように十人近くの『エンジェル』の男女が武装した状態で現れた。さらにその内一人は怪物の力を扱う厄介な相手だったようで、男の手のひらからは高圧電流よりも危険な雷撃の一撃が飛び出た。どんな『呪い』による力なのかは不明だが、明らかに直撃は即死。

 何より、夜来初三は『トラウマ』になれるためにサタンと離れていた状態だった。屋内に入った時点で一心同体に戻っていれば『絶対破壊』で対処できたものの、今の彼はただの人間。

 よって、当たれば死ぬ。

 だが。

「チッ」

 吐き捨てるような恐ろしい舌打ちと共に。

 夜来初三と銀髪の悪魔を囲むように周囲一体から竜巻のような黒い魔力が飛び出してきた。壁替わりとなったその漆黒の魔力は、あらゆる存在を触れただけで破壊することができる脅威そのもの。『エンジェル』の男が放った電撃の閃光は、思わず失笑するくらいの調子で『破壊』された。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!! と、暴れまわるように黒い魔力は少年と悪魔を包んでいる。まるで、そこだけ世界から隔離されたような印象だ。

 そして。

 それほどの『膨大』な魔力を操っているのは、

「せっかく小僧と触れ合っていたというのに―――我輩の恋路を邪魔したカスはオマエらか」

 その邪悪で恐怖そのものである声には、細胞から脳みそまでもが『逃げろ!!』と指示を出してくる。しかし、その体そのものの発する危険信号を無視してゴクリと生唾を飲み込んだ『エンジェル』の下部組織達。彼らは残念なことに『馬鹿』だったようで、戦闘態勢を整えた。

「まァイイ。オマエら三流悪党の肉をもぎ取る感触は我輩の大好物だァ。そうやって自分の立場ァ理解してない哀れな豚ほど殺すときの快感が堪らない! アッハハハ!! ああ、そうだそうだ! メスは子宮だけ潰して妊娠できない体にしてからなら生かしてやってもイイ。『そういう体』で生きていくほど苦しい人生はないからなァ。オスは殺す。メスは殺すよりも屈辱を与えられる範囲が広いから楽しめるが、オスはつまらん。んあ? いや、やはりオスはオスで楽しめそうだ! 股にぶら下がってるそれをグッチャグチャにしてメスに食わせるのもイイ!! ハハ、何だ人間も案外遊びがいがありそうだなァ!! 久しぶりに肉を潰せそうで―――ああもう理性がトビそうだぞ……!!」

 ここも同じだ。

 夜来初三と大悪魔サタンは―――こういう『狂気』も含めて同じなのである。

 口を引き裂くようにして笑った悪魔の神様。

 彼女は告げた。 

「我輩と小僧のラブラブタイムを邪魔したオスとメス諸君。よーく聞け」

 そこで漆黒の竜巻が霧散するように晴れた。

 結果、見えたものは―――一人の少年をぎゅっと抱きしめたままの一匹の怪物。背中から飛び出た漆黒の黒翼は凄まじく巨大。彼女の全身には黒い禍々しい紋様が刺青いれずみのように広がっている。極めつけは真っ黒な白目と血のような赤い瞳―――怪物の目だ。

 そして悪魔の総大将様は口を開く。

 裂くようにして笑って開く。

「気持ちよく殺してやる。―――気持ちよすぎてあえぐなよォ?」

 一変して悪魔の神へと戻ったサタン。

 先ほどまでは夜来初三の味方として優しく無邪気な笑顔を浮かべていたというのに、今では彼との時間を邪魔しやがったクソ野郎どもに邪悪な笑顔を見せている。

 ギャップなんて言葉で片付けられればいいが、そんなレベルじゃない。

 サタンは夜来初三が全てなのだろう。

 よって殺す。

 彼と敵対するクソ野郎共は全部全部ぶち殺す。

「―――ハハ!!」

 そんなところも、笑い方も、夜来初三とそっくりだった。

 悪魔の神様が思わず笑ったその瞬間。

 音さえも飲み込むような轟音と共に、



 サタンを中心とした廃ホテルの広大な敷地半分が完全に消滅した。



 当然、登場して数秒の『エンジェル』の下部組織の者達は死体すらも残っていない。まるで核爆発の被害後のようになったその場所には、呆然としている少年と少年の頬に頬ずりしている幼い銀髪ゴスロリ服の幼女悪魔がいた。

 終始何があったか分からなかった夜来だったが、吐き出すようにして告げる。

「……やりすぎだ」

 大悪魔サタンが戦闘の際に出てこない理由は三つある。

 一つ、夜来初三のトラウマを発症させないため。

 二つ、彼女が夜来初三の中にいなくては夜来が魔力を使えないため。



 三つ、彼女はあまりにも莫大な力を持つ故に『加減』ができないためである。

   

 


  

サタンちゃんは可愛くて怖い。


↑これの両立を目指してます

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