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チャラ男・ヨーロッパへいざ行かん

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?」

 目が点になった鉈内に、容赦ない現実を七色は突きつける。

「ヨーロッパに行け。以上じゃ」

「……は?」

「ヨーロッパに行けと行っている」

「……さて、冗談もいいところだし、そろそろ本題ってのを聞かせてよ優しい優しいマイマザー」

「じゃからヨーロッパに行って右往左往して苦しんでこいと言っておろう。今すぐ支度して、いそいで空港にまで向かえ」

 本当にわけが分からなくなっている鉈内は、助けを求めるように五月雨乙音へ視線を移す。

 今にも泣きそうな目で、非常に混乱しているようだ。

 五月雨は彼の反応も当然だと納得し、

「すまないね。七色の説明不足だ。では簡単に説明するが――第一に、七色の職業とは何かな?」

「な、七色寺の管理と、オカルトの類だけど……『怪物』に憑依された『悪人』たちにかかってる『呪い』を解く・解決する『悪人祓い』です、が?」

「ふむ。その通りだ」

 親指と人差し指をつけて小さな輪っかを作った五月雨は、クマがひどい顔を鉈内にずいっと近づけてきた。突然の急接近に体を逸らす鉈内。そのままの状態で、五月雨は強調するようにこう言った。

「七色は『悪人祓い』をしている。今では引退したようなほど活動も頻繁ではないが、一応現役といっていい。では、だ。話は実に単純で―――『ヨーロッパのとある街』から『悪人祓い』である七色に依頼が来たんだよ」

「い、依頼?」

「そう。何でも、『化物が街の者を定期的に襲う』という内容さ。つまりどういうことかと言えば―――」

「怪物に憑依された悪人が、悪さを働いてるってこと……?」

「その通り」

 頷いた五月雨はようやく鉈内から離れる。

 しかし、彼女はベッドの上で腕を組んでいる七色に目をやって、

「だがね、見て通り七色はこの有様だ。とてもじゃないが、ヨーロッパに向かうだなんて不可能なんだよ。だから七色は君に頼んだのさ」

「……つまり、怪我をして動けない夕那さんの代わりに僕が『悪人祓い』として怪物退治してこい、ってこと?」

 その確認に対して仰々しいほどに頷いた七色は言った。

「そうじゃ。少し前からスケジュールに入っていた依頼なのじゃが……儂は絶賛入院中。とてもじゃないが、怪物退治なんぞ無理じゃ。できていれば入院なんてしておらんしのう。つまり翔縁、お主に今回の怪物退治を任せると言っている。―――さぁ行け!! 旅立ってこいロリコンが!!』

「まだロリコン引きずってんのかよ!! ってか、はあ!? 僕一人でヨーロッパに行けだぁ!? なんだよそれ絶対無理!!」

「一人ではない。儂の頼もしい仲間も送る。問題ないじゃろう」

「嫌だ!! 外国とか無理!! 怖くて死ぬ!!」

「なんじゃ、弱気になりおって。軽い放置プレイだとでも思えばいいだろう」

「軽くねーよ!! 外国に放置とか軽くねーよ!! めっちゃ重いよ!!」

 鉈内のツッコミを耳に入れた七色夕那。

 彼女は落胆するように大きな溜め息を吐いて、

「あ~あ。せっかく儂が期待したというのに、なんじゃなんじゃそうですかー。お主は儂の期待をことごとく裏切ってくれるわけなんじゃのう。あー、儂ってばショックで禿げちゃいそうじゃ」

「は、はあ? 期待? なにを言って―――」

「お主を『一流』の『悪人祓い』として『認めていた』というのに、仕事を放り投げられてしまったわい。悲しいのうー、悲しくて悲しくて悲しいのうー」

 一流の『悪人祓い』と認めていた。その言葉に眉を潜めた鉈内の反応に口の端を釣り上げた七色は、追い打ちをかけるように言い放つ。

「お主は儂の知らんところで結果を残していたのにのう。―――秋羽伊奈にかかっていた『死神の呪い』を解き、呪いを宿した悪人と互角にやりあってたらしい的なことも世ノ華から聞いとったのにのう。……これだけ、『悪人祓い』として活躍できたのじゃから、そろそろ『一人前』になってもらうためにも、こうして儂が依頼を代行して欲しいと言ったのに……残念じゃ」

 その瞬間。

 七色夕那の背中を追いかけ続けていた鉈内翔縁の下した判断は予想通りのものだった。

「夕那さん……」

「なんじゃ、バカ息子」

「ヨーロッパって、どう行くの?」

 その質問に対して、七色はニヤリと笑い、

 簡潔に告げた。

「儂の知り合いの『悪人祓い』をお主と共に向かわせよう。もともとそやつと行くつもりだったし、問題ないじゃろう。―――ひとまずは駅に向かえ。そこがその『悪人祓い』との集合場所じゃ」

スケールでかくなってきた((笑))

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