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世の中は悪ばかり

「……伊吹か」

「はい。ご無事でなによりです」

 気づけば、ザクロはヘリコプターの内部で簡易的なベッドの上へ寝かされていた。傍らには、腹部に包帯を巻いている伊吹連がいる。小さく頭を下げてきた彼に対して、全身傷だらけのザクロは小さく失笑し、

「情けない姿を見せてすまない」

「情けなくありません」

「いいや、情けない。まさか、狂犬一匹に噛み殺されるとは思いもしなかった。私は結局、昔と同じで弱いままだ」

「……そんなことありません」

 伊吹の気遣いにザクロは小さく息を吐き、

「このヘリは……新しく呼んだのか?」

「はい」

 短い返答を返した伊吹は包帯を巻かれた自分の腹をさすりながら、

「自分は、相手が『甘かった』ので、なんとか助かりました。敗北して、命を拾ったようなものです。本当に、申し訳ありません……」

「謝る必要がどこにある。私なんかこの有様だぞ」

「いえ、違うんです。俺はザクロさんの役に立てなかった。それだけで、謝罪するには十分すぎる理由です。―――すいませんでした……!!」

 深く深く頭を下げた伊吹。

 彼はもう一度、ザクロに対して頭の位置を下げてから、



「呪いに苦しんでいた俺を助けてくれたあなたに、俺は何も返せなかった。申し訳ありません……!!」



 ザクロはしばし沈黙する。

 そして軽い調子で笑った。

「なんだ。それがお前の―――『恩返し』の意思ということか? 私の手足となって動くことこそが、お前の感謝している故の悪というやつなのか?」

「はい」

「おいおい、即答するな。私はお前を手駒として見たことはない。自由に生きろ。それを私は望んでいる。それでも我を通すようならば―――それこそ、お前も私や夜来初三と同じで、『感謝故に敵対する』ようなものだぞ。大体、私は呪いの『制御方法』を伝授しただけだ。『九尾の呪い』を解いてやってはいないぞ」

「……それでも、俺はそうしたいんです。敵対してでも、それが恩返しになると思っています」

 ザクロは今日一日の出来事を思い出し、

 伊吹の言葉で改めて理解した。

「どうやら―――『感謝』するということは場合によっては敵対することになるらしいな。……いい経験だった。私もお前も誰も彼もが、感謝しているからこそ、感謝している相手とは敵対することがあるみたいだ。本当、誰も彼もが『悪』な世の中だな……」

 ぼやくように、ザクロは呟いていた。





 感謝している悪。

 この『悪』を背負っている悪人たちは、おそらく世の中にうじゃうじゃ存在しているだろう。感謝している相手に恩返しをしたい。しかしその『方法』や『やり方』や『結果』が悪と認識できるようになってしまう場合がある。

 しかしその事実に気づかないのが大半だ。

 これが恩返しになる。これがあの人の為になる。そんな風に『思い込み』をして、結局は相手を傷つけている可能性を考慮さえしない。

 つまりこれは。



 ただの自己満足クソ野郎である。



 故に悪だ。

 無意識に己の悪行を『恩返し』と勘違いして行動する時点で、それはもう立派な悪だ。

 さて。

 感謝している悪を背負う悪人たちは、この世にどれだけ存在していることだろう?

 

感謝している悪は終了です。 喧嘩喧嘩ばかりの、戦闘シーン盛りだくさんの回でした


今回の『感謝している悪』を背負う悪人は―――世の中にうじゃうじゃいるという結果になりました。スケールでかい悪ですね、自分も、感謝してる人にとって間違った行為をしているのではと自覚しました


なんていうか、『恩返し』=『悪』と変換してしまうこの物語は・・・やっぱり『悪』をテーマにできているかな? できてるといいなぁ と思います。皆さんに『悪』が伝わっているでしょうか? 


ダーク満載のこの作品。これからも続けていくつもりですので、よろしくお願いします 



鉈内くん覚醒 が目を引いたかな? 鉈内くん目立っててかっこよかったですね。やっぱり、彼は『最終的に悪にはなれない』ヒーローでした。一方、夜来くんは『最終的に悪の世界へ己から堕ちる』というダークヒーローでした。


二人の違いはそこですね。


夜来初三は、自分から悪に走って精神を保ってきた悪を好むタイプ。

鉈内翔縁は、自分から悪に走っても最終的には善に戻る方のタイプ。



つまり、


鉈内翔縁は善。

夜来初三は悪。


↑狐も同じこと言ってましたが、やっぱりその通りでしたね。鉈内くん、マジイケメンかっこいいと、夜来ダークヒーローばかり書いてる自分は思ってます



ザクロちゃんも、良い人なんだか悪い人なんだか・・・・・・よく分かりませんね(笑) 七色ラブが行き過ぎただけのようにも見えますが・・・


 そしていよいよ、スマイル野郎とシスコン野郎も動き出しました。後ほど、しっかりとその辺も進めていきますので。

 

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