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戻った

 激突の瞬間。

 夜来初三の背中から生えていた黒翼は消失し、全身に広がっていた紋様は元のサイズへと縮まり、サタンの魔眼へと化していた両目も黒の瞳に白い白目へと変化する。 

 元に戻る。

 つまり夜来は『サタンの呪い』を使用していない。呪いの一時的な侵食も収まった。故に彼は『サタンの呪い』を使用しない限りただの人間。現在は日も沈んでいるため、『絶対破壊』も解いて問題はない。

 つまり。

 どんな一撃を受けようとも、体はきちんと悲鳴を上げるということ。

 わざわざその状態で突っ込んできた夜来を見て、

(殺す……!! ここでぶっ飛ばす!! その鼻っ柱ァ折り曲げてやるぞ!!)

 もはやザクロも興奮状態なようだ。

 ザクロも夜来に負けず劣らずの嗜虐的な笑顔を浮かべて、狂ったように、楽しそうに言う。

「いいなぁ、いいないいな最高にいいなぁ、本気で最高だなぁ!! そうやって同じ土俵にご丁寧に上がってェ死体に変えられるお前の神経が最ッ高に面白いなァ!! 上等だぞ、泥犬野郎……!! こっちは貴様にイラつきっぱなしで頭の血管破裂しそうだったんだ。安心しろ、ゆっくりじわじわと死体に変えてやるから、アヘアヘ笑ってェあの世に旅立ってこい。このクソガキがァああああああああああああああああああッッ!!!!」

 彼は向かってくる夜来に獰猛な笑みを見せる。いや、その凶暴な笑顔を裂くように濃くする。いつもの知的な口調とは一変し、ザクロは獣のような雄叫びを上げて突っ込んだ。それはおそらく、七色に関する恩返しの仕方を夜来初三に否定されたことに対する怒りが原因かも知れない。

 そして。

 夜来と同様に『悪魔祓い』を使用する力も残っていないザクロは、拳でこの戦いに幕を下ろしにいく。

「おおおおおオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」

 絶叫を上げて拳を握り締めたザクロ。

 爪が肉に突き刺さる勢いで握り締められた右拳を使って、夜来初三を迎え撃つ。

 喉が血まみれになるほどに咆哮を上げて。

 ゴガン!! と、夜来の顔面にその凶器同然の拳を叩きつけた。

 ビリビリとした衝撃が拳を伝って全身に広がっていく。それほどまでに強烈な威力を秘めていたのだろう。 

 しかし、それでも夜来は倒れない。あれだけズタボロだったというのに、彼はそれでも倒れない。

「ドックソがァァあああああああああああああああああああああッッ!!」

 体重のかかった素早いアッパーがザクロの顎をぶち壊した。舌を噛まなかっただけでもマシだったろうが、爆発するような激痛は下顎から広がっていく。当たり所が悪かったならば、脳挫傷で気絶してかもしれない。

(な、めるな……!!)

「この、悪党がァァあああああああああああああああああああああああッ!!」

 再びザクロの大声が空間を震わせる。

 全力で固めた拳を、今度は夜来の線が細い顔の上―――脳天あたりに振り下ろした。ハンマーのように叩き落とされた拳。ガゴン!! と轟音を上げて夜来初三は前のめりになって崩れそうになる。

 その顔の位置が低くなったことに笑顔を見せたザクロは、夜来の顔面を手加減なしで蹴り上げた。鼻先からベキバキベキという音が聞こえた夜来だったが、あまりの威力に後ろへゴロゴロと転がっていく。

「どうしたどうしたぁ!? 散々偉そうなことを吠えてた割には全ッ然楽しくならないなぁ夜来初三ィィいいいいいいいいいいい!! そんなものか!? 期待ハズレでこっちはショック受けたぞ!! そういうわけで慰謝料代わりに死んどいてもらおうかああああああああああああッ!!!!」

 必死になって起き上がろうとしている夜来の脇腹を―――何度も何度も蹴り飛ばす。もはやザクロは頭の中のパーツがいくつか外れていた。とにかく、夜来初三を粉々に粉砕することを息を荒くしながら続行し続ける。

「くっはははははははははははははははッ!! 立て!! 立て悪党!! 私だって嗜虐心はあるんだ!! こっちの頭ァ飛ばしたのは貴様の責任だぞ!!  長い長ーい時間をかけて、今じゃ『ただの人間』になったというのに、貴様のせいで私も『昔』の感覚に浸ってゲラゲラ笑っちまってるぞ!! どう責任取るんだ!? もう我慢が効かないだろうが!! いや、いやいやいやいやそれも良いかもしれんなぁ!! もう今はとにかくひたすら貴様の肉ゥ潰してれば、こっちとしても大満足だしハイになれるからなァァああああああッ!! ほら!! 泣けよ!! 泣いて命乞いしろ!! なーんのために貴様の口はついてるんだ? 命乞いして結果的にぶっ殺されて哀れな最後を迎えるためだろうがああああああああああっ!!」

 昔に戻った。

 それはつまり―――悪人だった頃の『性格』に戻ってしまったということなのだろう。ザクロはもともと怪物に憑依された悪人だ。故に、ここまで残虐な変貌を遂げた……と言ったら説明がつくかもしれない。

 口調も雰囲気も全てが豹変したザクロ。

 いや、戻ったザクロ。

 

ザクロも怖い人でした。やっぱりこの物語には『悪人』ばっかだなぁ、と作者の自分が苦笑してます。


ザクロちゃん、ホントに怖いわ。彼もやっぱり元悪人らしいです。

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