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変わらない

 宣言した彼は、さらに釈放を求める囚人のような必死さで、

「そのためには貴様の中にいる『膨大な力』が必要なんだ!! だから私は、『七色さんを殺してでも七色さんの理想を叶えてみせる』んだよ!! 七色さんが何よりも望んでいるのは『平和』だ!! ならばそれを実現するために―――私はあらゆる障害を打ち砕く!! それが七色さんの望むことだからだ!!」

 ぶっ飛んだ内容のようで、実はそうでもない。

 七色夕那は、ザクロに突き刺される寸前にも『息子の意思』の味方を最後までやり通すことを望んでいた。故に、もしかしたら今の話を七色が聞いていたのなら、本人は笑って殺されるかもしれない。

 尚更、自分のために息子ザクロが行動しているのだから笑顔で死んでいくかもしれない。

 しかし。

「……」

 眉を潜めた夜来は静寂の後に小さく息を吐いた。

 そして。

 無慈悲に。

 ザクロに対して無情にも、こう言い放った。

「くっだらねぇな。くっだらねぇ悪だな、テメェ」

「……!! き、さま……!!!」

「そうカリカリすんなよクソ野郎。つーか、くだらねぇ以外に俺ァなんて反応すりゃいいんだ? 今の話からして、あのガキがテメェの面倒も過去に見てたってのは分かる。んで、テメェがあのガキに感謝してるからこそ―――『七色夕那と敵対してでも七色夕那の理想を叶える』ってのは理解できた。だがよう、それって結局、あのガキと敵対してるだけじゃね? って話なんだわ」

「……敵対は貴様も同じはずだ……!! 貴様が呪いの力を使うたびに、七色さんは悲しんでいる!! それはつまり―――私と同じで七色さんと敵対していることに変わりないのではないのか!?」

「かもな。いや、だろうな。俺とテメェは七色夕那と敵対してる。これは事実だ。認めてやるよ。だが―――」

 言葉を区切った彼は。

 ギロリとザクロを睨みつけて、

「俺は七色と敵対してるが―――七色夕那を死なせねぇ。七色を生かしたことを前提で、俺はあの人に恩を返す」

「……そのために、七色さんを生かすために、『呪いの力を使って七色さんと敵対してでも』か? そうやって、呪いに染まって、それを見る七色さんを傷つけながら七色さんを生かすというのか!?」

「そうだよ」

「ふざけるな!! それこそ私と貴様のしていることは何ら変わらん!! 七色さんはそれを望んでいないんだ!! それだけは絶対に望まないことだ!! だからこそ、七色さんを殺してでも七色さんが望む世界に変えて―――」

「バーカ。まだ気づかねぇのか?」

 遮るように告げられた言葉。

 眉根を寄せて睨んでくるザクロに対し、夜来はあざ笑うように言い放つ。

「俺とテメェの違い、教えてやろうか? 俺とテメェが共に感謝してるあの人に対して行ってる行為の違い、教えてやろうか? あ?」

「……ご教授願おうか」

 その返答を耳にした夜来は鼻で笑って、

 自分のこめかみを右手でトントンと人差し指でつついて、

「俺の思考はテメェと違うんだよ。俺は七色と敵対して七色を生かすが、七色の理想は叶えない。テメェは七色と敵対して七色を殺すが、七色の理想を叶えようとする。―――つまり、テメェは七色の理想を取って、俺は七色の命を取ってるだけだ。そこしか違いはねぇよ」

 つまり、と付け足して。

 告げる。



「俺もテメェも『感謝』してるアイツと『敵対』することで―――アイツに恩を返そうとしてるだけだ」



 七色夕那の命を取るか、七色夕那の理想を取るか、そこしか違いは無い。故に、夜来初三とザクロがしていることは―――ほぼ同じなのだ。

 だから。

「俺もテメェも悪なんだよ。結局は七色と敵対してる。結局はアイツを傷つけてる。お前は七色を殺すことで肉体的に傷つけてる。俺は呪いを使うことで七色を精神的に傷つけてる。どっちもクズだ。どっちも汚物なんだよ。これは―――『本物の悪』じゃねぇな……。本当、なにやってんだろうな俺は。結局、今回もくそったれな悪人に成り下がっただけじゃねぇかよ……!!」

 ギリリ!! と奥歯を噛み締めた夜来。

 その反応には目も向けず、ザクロは放心するように呟く。

「……私と貴様が、変わらない……?」

「そうだ。何も変わらねぇよ。俺もテメェも、ただのクソったれだ。―――感謝してるこその悪。感謝しているからこその悪行を背負っているだけだ。結局、どっちもクソなんだよ、ボケ」


 


 


そしてヤクザと果実が本音を話し合いましたね・・結局、どっちも『悪』という今作らしい結果だと思って頂ければ・・・幸いです


敵対することで恩を返す・・・・・本当に、この物語には悪人ばかりですね。ヤクザ以外にもたくさんの悪人ばかりです


 久しぶりに夜来くんが『悪』を語ってくれましたが、いかがでしたでしょうか? 気に入ってもらえていたら幸いです

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