事件収束後
事件収束後三日後。
場所はとあるファーストフード店。
現在時刻は夜八時三十五分。
そしてテーブルに乗せられた大量のビッグサイズポテトと、手元に握られたビッグマックというハンバーガーに目を光らせているのは、床にまで届きそうな長い銀髪と同様の銀目を光らせている、黒いゴスロリ服を着用した幼い神秘的な少女である。
「び、ビッグマックすげー!!!! 小僧小僧、ビッグマックすげー!!!! デカくておっきくてちょースゲー!!」
「キャラ固定しろよコラ」
約束通りファーストフード店に連れてきたはいいのだが……。
バクバクとその小さな口で巨大なハンバーガーを咀嚼していくサタンはすっかり子供同然だ。さらにはその容姿が明らかに目立つため、店員からも他の客からも視線を集めている。
「だっておっきいぞ!! このサイズとボリュームで値段は格安だろう!! 我輩は将来小僧とファーストフード店で結婚生活していく!!」
「栄養失調であの世行き決定の新婚生活じゃねェか」
「もぐもぐはぐはぐ……!! うふぁい!! うふぁいふぉこほう!! わらはいまいにひこれたへたい!! (うまい!! うまいぞ小僧!! 我輩毎日これ食べたい!!)」
「胃袋に押し込んでから喋れアホ。……ったく」
ティッシュでサタンの口元についたケチャップなどの汚れを拭き取ってやってから、夜来は面倒くさそうに溜め息を吐く。しかし結局はサタンの無我夢中な食べ方は変わらないので、再びティッシュで同じ世話をしてやるの繰り返しだ。
もちろん。
非常に長い銀髪の黒ゴスロリ少女と、同じく黒一色の服を着用している前髪の長い少年のコンビは非常に目立つ。少年でさえ髪型や服装が特徴的で目立つというのに、プラス銀髪幼女が付いていれば視線だって勝手に集まってしまうだろう。
故に客や店員からの視線がきつい。
サタンと夜来のコンビには、女子高生などがチラチラと視線を向けながら『写真撮らせてもらえるかな!? っていうかなにあの二人!? どっちもコスプレじゃないよね!?』『男の人がちょっと怖いけど、さっきからあの子の口吹いてて優しい~!! 兄妹!? カップル!?』だのと何やら騒いでいる。もちろん二人の本性がどれだけ危ないかは気づいていない。
と、そんな落ち着けなくなってきた周りの空気に夜来が大きな舌打ちをした。
そのとき。
「何だ小僧。我輩と口移ししたいのか?」
「開口一番にセクハラすンな」
「甘いな。セクハラというのは中途半端な行為同然。すなわちセクハラと認識させないレベルの行為ならばそれは愛の結晶と言えるだろう」
「口元ケチャップだらけのドヤ顔で言うことじゃねーな」
再びサタンの汚れた口元をゴシゴシとティッシュで拭き取って冷静な対応を返す。しかしサタンはハムスターのようにガジガジとものすごい勢いでハンバーガーを咀嚼し続ける。
そして、またもや汚れた顔で満面の笑みを咲かせる。
「小僧!! 我輩これ気に入ったぞ!!」
「そりゃ何よりだ」
「おお!! 何やらあそこでお持ち帰りというやつができるらしいではないか!! 我輩もお持ち帰りしたいぞ!!」
「ったく、何をだよ?」
「え、いや、その、ナニをって……小僧ってば大胆だな」
「イントネーション狂ってんだろうが……!!」
ぎりり!! と、店内でいつものように大声を上げるわけにはいかない故に、サタンの下ネタに歯切りしでこらえる夜来。
だが、
「それでは小僧のナニをお持ち帰りしよう」
「させねぇよ」
「それでは小僧のゾーさんをお持ち帰りしよう」
「させねぇよ」
「それでは小僧のちん―――」
「テメェ続き言ったらマジぶっ殺すぞ」
サタンの口にポテトの山を突っ込むことでそれ以上のどストレートな下ネタを阻止する。モグモグとそのポテトを意外にも味わっているサタンに何度目か分からない溜め息を吐いた。
そのとき。
「やーらいさん。お隣いいですか?」
サタンちゃんがやっぱり自分はお気に入です(笑)