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ともだち

 元々は夜来初三が向かった廃ビルへ七色達も向かったのである。全員が全員、雪白千蘭という少女を助ける手伝いをしようと決心したのだ。決意して戦おうと思ったのだ。

 もちろん彼らは雪白に対して怒りを覚えている。

 しかし。

 だがしかし。


 いくら雪白千蘭にどれだけいかろうとも、彼女と過ごした思い出がその怒りと同時に浮き出てくるのだ。


 どれだけ憎んでも。

 どれだけ恨んでも。

 どれだけ嫌っても。

 雪白千蘭は『凶狼組織』と豹栄真介という存在で苦しんでいた世ノ華を助けるために戦ってくれた。『死神の呪い』の被害に遭った際にも七色達と共に助け合って苦難を乗り越えた。それだけではない。彼女と過ごした思い出には戦い以外にもいろいろある。単純に笑い合ったり、話し合ったり、はしゃぎあったりしたものだ。

 だから七色達は一つの決断をしたのだ。

 雪白千蘭は確かに取り返しのつかない悪行を犯した。

 しかしそれでも―――見殺しにはできない。

 家族が犯罪者になっても、親が刑務所に入っても、毎回毎回面会に向かう様な心情と似ているかもしれない。『嫌いになったが嫌いになれない』ような感覚とでも言えるだろう。

 だから七色達は決めたのだ。


 雪白を殴ってでも正常に戻して罪を背負わせて仲直りすると。



「だから私はテメェを助けたんだよコラ」

 世ノ華は雪白の胸ぐらをつかみあげた。

 ある意味。

 彼女たちが取った選択は正解かもしれない。

 たった一度の『更生』の機会も与えず、ただ夜来初三を傷つけたからという理由のみで、彼女をあっさりと見放して見捨てて縁を切るだなんて―――あまりにも『もろい絆』のようだった。

 だから彼らは廃ビルへ向かったのだ。

 しかし事態は一変した。

 その一変に気づいたのは唯神天奈のおかげと言っていいだろう。

 廃ビル前へ到着した瞬間に唯神が気づいてくれたおかげで、即座に対処できるようになった。


「唯神が兄様に―――『三個・・』の魂が宿ってるって見て異変に気づいたから、こうして私はお前を助けて、鉈内達は兄様の異変に対処しにいってンだよ」


 だってのに、と付け加えて。

 雪白の目と鼻の先で言った。

「こっちはお前を見捨てる気なんざねェのに、何でお前は一方的に唯神を見捨てるがごとく攻めてんだよ、あ? 喧嘩売ってんのか白髪くそばばァ。その馬鹿みてぇに白い髪真っ赤に染め上げてやろォか?」

「っ!! 貴様は悔しくないのか!? 貴様は、ああも簡単に夜来の傍にいられている唯神天奈を憎まないのか!? お前は微塵も嫉妬しないというのか!?」

「してるっつの」

 即答した。

 即答で嫉妬を認めた。

「ああしてるねぇ。兄様から連絡来て、同棲決まったって知ったときはマジで暴れそうになったよ。全部全部、ぶっ潰してやりたくなるくらいにな」

「そうだろうが!! アイツは反則をしたも同然なヤツだろう!! だというのに、貴様はなぜそっち側にいる!! 普通、私側に立つべき立ち位置なんじゃないのか!!」

「あー、じゃあ一つ聞くけどよクソ野郎」

 瞬間。

 ガン!! と、世ノ華は雪白の額に己の額を叩きつけた。

 後ろへふらついた雪白は痛む額を押さえながら世ノ華を睨みつけている。

 対して世ノ華は侮蔑するように見下して、



「唯神達が兄様のとこ居座るのが反則なら―――『兄様を監禁して即成事実作ろうとした』てめェはどんだけ反則したことに何だよボケが」



「―――ッ!!」

 言い返す言葉が見つからないのか、雪白は歯噛みして黙り込む。

「あれだろ? てめェ反則した唯神許さねぇんだろ? 殺したいんだろ? だったら―――一つも反則してねぇ私はちょー反則しやがったてめェ殺しても文句ねェよなァ!? ぐっちゃぐっちゃの死体に変えて爆笑しても良いんだよなァ!?」

「お前……!!」

「丁度良いじゃねェかよ。兄様のとこの異変はチャラ男達が対処してンだ。同時にもォ一本の問題になってやがるテメェをここで解決してやるよ。―――殺してでもな」

 ドガァン!! と地面を砕く勢いで飛び出した世ノ華は雪白の胸へ蹴りを叩き込んだ。胸を襲ってくる鬼の脚力から繰り出された一撃。雪白はメキゴキメキ!! という骨が上げた音を耳にしながら十五メートル以上蹴り飛ばされていった。

「が……っはぁ……!?」

「こいよ嫉妬丸出し滑稽滑稽大爆笑女ァ。何ならその整った面ァ醜く整形してやろうか?」 

 明らかに本気の蹴りだった。

 明らかに情けなどなかった。

 間違いなく―――鬼はその力を容赦なく振るうのだろう。

 

 世ノ華雪花は改めて決意した。

 殺してでも雪白千蘭ともだちを更生させる、と。


 

 

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