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痛い


 そこは。

「七色寺、だと……」 

 呆然と呟いた雪白千蘭。

 ようやく境内にたどり着いた世ノ華は疲れきった顔を浮かべて抱えていた雪白を下ろす。 一方、状況を何もかも理解できていない雪白の方は見慣れている広大な寺の敷地を見渡していた。

 そこで視界に入った数人の人影。

「世ノ華!!」

 真っ先に近づいてきたのは雪白にとって因縁のある相手だ。

「貴様……」

 唯神天奈。

 長い黒髪を揺らして近づいてきた彼女は雪白をじっと見つめて、


「私は君を絶対に許さない……」


 唸るようにそう言った。

 殴りかかると錯覚するほどに恐ろしい声音でそう言った。

「ほざけ」

 迎え撃つように雪白はギロリと睨みつける。まるでこちらが許さないと言うように。あんなにもあっさりと夜来初三との距離を縮められたお前だけは殺すと言うように。

「貴様だけはこっちが許さん」

「なぜ」

「あんなにも簡単にあっさりと初三のそばにいたからだ!! ポットでの女が、あんなにも簡単に、初三の隣にいられて、反則同然の真似をしたからだ!! ふざけるな!! ふざけるなあああああああああああ!! なぜ貴様はさも当然の如く初三と暮らしている? なぜ貴様は当たり前のように絶好のポジションに立っている? ―――許さんで当然だろうが!! ふざけるな!! 貴様がどれだけ私に―――」

 瞬間。



 パン!! と妙に響きがいい音が鳴り響いた。



 その正体は。

 その原因は。

「……ふざけてンのはお前だろうがクソばばァ」

 雪白千蘭の頬を手のひらで叩いた世ノ華雪花だ。

 その平手打ちは。

 鬼の拳よりも重く。

 鬼の金棒よりも痛く。 

 

 一人の少女としての―――重みが乗せられた一撃だった。


 雪白は呆然としていた。

 痛い。

 グーで殴られるよりも、棒で叩かれるよりも、ナイフで切りつけられるよりも、

 何よりも『痛い』と感じるビンタだった。



 一方そのころ。

 廃ビルに残された『悪』の前には三人の『悪人祓い』が姿を現していた。茶色に髪を染めている少年は怪我をしているようで体に包帯を巻いている。浴衣を着用した幼い子供のような女は冷たい視線をぶつけていた。背が高い女教師は警戒するように目を向けてくる。

 鉈内翔縁、七色夕那、速水玲の三人ということだ。

「まったく。せっかく僕がかっこよく後押しした結果がこれって―――喧嘩売ってんのかよ前髪やくざ」

「油断するな。唯神の話によれば相当まずい状況じゃ」

「まったくもって手間をかけさせる問題児だな」

 なぜ三人や世ノ華達が夜来初三に起こった謎の現象に冷静に対処できるのかと言えば単純なことだ。

 話は少しばかり。

 過去へもどる。


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