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脱出

「お前―――初三ではないな?」

「……」

「答えろ。私の初三はどこだ? 貴様は一体―――『何』だ?」

「……チッ」

 雪白は『誰だ』とは尋ねずに『何』だと聞いてきた。それはもちろん、夜来初三の体を支配している『悪』を本能的に『人間』だとは思えなかったのだろう。

『悪』はただ面倒くさそうに舌打ちを吐き捨てる。

 さらに死にかけている由堂の体を無造作に投げ捨てた『悪』は、転がった祓魔師には目もくれず雪白千蘭に気味の悪い笑みを浮かべる。

 そして。

 何の躊躇いもなく真っ白な閃光を彼女の上半身に向けて放った。

「―――!?」

 いきなり殺されそうになっている状況に雪白は仰天した。

 攻撃される理由すら想像出来なかったが、即座に『清姫の呪い』を用いて迎え撃つように豪炎を撒き散らした。防御代わりになるよう面積を大きく広げた爆炎。しかし気持ち悪いほどに真っ白で異質な閃光は炎の壁を突っ切ってターゲットへ衝突する―――寸前に。

「よけろ馬鹿!!」

「ッ!?」

 ドン!! と何者かによって押し倒された。

 転がった衝撃に呻いた雪白だったが、即座に押し倒してきた犯人を視界に収めて。

「世ノ華……!?」

「黙ってて!! 今はとにかく逃げるわよ!! ―――『あれ』は兄様じゃない!!」

 雪白の手を取った彼女は即座に走り出した。しかし逃亡方向は一般的な出入り口である扉ではなく……頑丈そうな金属製の壁だった。明らかに逃げるどころか行き止まりへ突き進む世ノ華の後ろ姿に眉をひそめた雪白だったが、

「邪魔ッッくせぁなあああああああああああああ!!!!」

 世ノ華が絶叫とともにその鉄壁を無造作に殴りつけた。バドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!! と衝撃によって廃ビル全体が揺れるほどの威力。もちろんそれだけの力で殴られた壁は爆弾の被害にでも遭ったかのように吹き飛んだ。

 正体は鬼の力だろう。

 その答えを導き出した雪白は次の瞬間。

 世ノ華のむちゃくちゃっぷりに目を丸くした。 

 なぜなら。



 破壊した壁の先にある地上へ―――雪白を抱えて八階の高さから飛び降りたのだから。



『羅刹鬼の呪い』がかかっていなければ雪白共々死んでいただろう。一瞬の無重力にも似た体験に喉を干上がらせた雪白は、派手に地上に着地した世ノ華に大声を放つ。

「おい!!」

「なによ!?」 

「一体なにがどうなっている!? 初三は!?  初三はどうした!? 初三はどこにい―――」

「てめェに関しちゃこっちも虫唾が走ってンだよ!! ちったぁその口閉じてろボケ!! 殺すぞ!!」

 まるで盲目的に、本能的に、初三初三初三初三と催眠術にでもかかったように連呼している雪白千蘭を一喝した世ノ華。本当ならば夜来初三を監禁していた雪白を一発ぶん殴ってやりたいと思っているのだろう。しかし今はそんなことをしている暇すらない。

「今はとにかく黙ってろクソボケ!! 『あれ』は兄様じゃねえンだよ!! てめェのクソッタレの悪行に関しても後できっちりヤキ辺り入れてやっからなゴラァ!!」

 初三初三初三初三と狂ったように叫び続けている雪白千蘭。やはり彼女は頭のネジが飛んだままだった。その面倒な事実に舌打ちをした世ノ華は『羅刹鬼の力』を引き出して走行速度を上げる。

 しかし。

 ボン!! と、目の前を真っ白な一撃が通過していった。それは文字通り山のように大きな白い塊。世ノ華の眼前にあった道も何もかもを後かともなく消失させた。

 ゾッとする破壊攻撃。

 間違いなく、『あれ』が近づいて生きている証拠だった。いや、近づいているのかは正確には分からないが―――狙われているのは事実だった。

 遠距離からの砲撃という可能性が一番高い。

「捕まってなさい!! 飛ばすわよ!!」

 ひたすらに逃げ回っていたのかといえばそうでもない。彼女は民家やビルの建築物全てを利用して目的地だった場所へたどり着く。

 

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